【韓国映画】友の告白③ネタバレ妄想劇場と感想 | ROUTE8787 サンサクキロク

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インチョル

全てが終わった。

ヒョンスの念書を奪い取り、彼の家のドアを見つめたけれど、

いつもようには入れなかった。

 代わりに、小さな娘が、自分を抱擁してくれた。

天使に許されたような気がした。

 自分は、もう、ヒョンスには会えないけれど。

この家族の幸せを、いつまでも願うと誓った。

 

空港で待っていたのは、ヒョンスだった。

あれほどの近い距離だった自分たちの関係が、

数日間で、これほどに遠のいていたとは。

その現実に、愕然とした。

 

ヒョンスは、すべてと悟ってしまったかも知れない。

そこはかとなく感じる、ヒョンスの冷たくて厳しい眼差しを、

見つめ返す事が出来ないでいた。

 

彼は、聞きたかった事があると言った。

17年前、何故、自分がインチョルを待たずに、

ミンスを連れて下山しようとしたかと?

 

急に17年前の話に、少し驚く。

「心細かったんだろ?」

そう答えたが、ヒョンスは、少し笑った。

 

俺が戻って来ないと思ったと。

ミンスの電池切れの音楽プレーヤーがなくなっていたから、

そう確信したのだと。

  意味を理解するのに、時間を要した。

20年近くも、そんな疑念を抱えながら、自分と付き合ってきたヒョンテ。

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俺がそんな事をするワケがないだろう!という言葉よりも、

ヒョンテの葛藤の日々が辛かった。

 彼との日々の中での、自分への想いは本物だったと思うから。

彼の中で渦巻いていた、疑念と愛情の波が、

今、まさに、俺を飲み込もうとしているのを感じた。

 

そうでありながらも、ヒョンスは、こう自分に問いかけた。

「何か言う事は?」

 

何も言えない・・・・

何も言えなかった。

 

言い訳に値する言葉はあったし、

それを説明する能力も自分にはあるはずなのに。

 

この無気力感はなんだろう。

この空虚感はなんだろう。

 

ヒョンスへの愛情と、彼の長年の葛藤を想う気持ちと、

同じ分だけ、自分を襲う、この喪失感はなんだろう。

 

自分という人間を根底で信じていなかったヒョンテ。

そんな風に自分を評価していた彼に、どんな言い訳が通じるというのだろうか。

そして、そうまでして、彼にすがるには、

自分のプライドが許さなかったのかも知れない。

 

遠くでヒョンスが見えた。

彼の前で倒れるワケにはいかない。

目があった。

「自分もミンスを置いていこうと思った」と言って、

少し笑ったヒョンスが、頭をよぎる。

 自分の見えなかったヒョンスに、初めて接しているのかも知れない。

 

ああ、ヒョンス。

父親と母親を殺され、ミンスが自殺した。

すまない。

これが、その罰だというならば、受けるしかない。

 俺の死にざまを観て、ヒョンスがその選択を後悔しないように。

けれど。自分のこの気持ちがヒョンスに伝わればいいのに。

 全てはこうなってしまったけれど、スタートは、

お前を思いやる気持ちだったんだ。

 その思いやりも、自分の保身が壊してしまったのかも知れないけれど。

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ミンスの手紙を読んで、彼を巻き込んでしまった事を悔やまずには

いられない。

 どこで何を間違ったのか。

3人で過ごした日々を反芻する。

 運命を恨みたいけれど。

運命に踊らされた自分が、一番、憎くて、悲しい。

 

 

 ヒョンス

すべてを知ったのは、リュ代表の言葉からだった。

代表の元を訪れて、念書を持ち帰ったと聞いた。

そして、その時に、母親の帳簿をインチョルが持っていた事も・・・・。

リュ代表は、この落とし前をつけなくていいのか・・・?と、

そんな風に話したのだろうか・・・・記憶が曖昧だ。

 

とにかく、インチョルの話を聞きたかった。

彼を、あの雪山の日から信用していなかったと話せば、

彼は、傷ついて逆上して、本当の事を話してくれるだろうか。

 インチョルの本性を知りたいと、思った。

昔に抱いた印象のままの彼が、本性なら、

僕の選択は、間違いなかったといえるから。

 長年、彼が見せた愛情や優しさを覆すほどの言葉が、

彼から出てきたなら・・・・。

 僕は、怒りのまま、彼に報復出来るのに。

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インチョルは、「つらかったな・・」と答えただけだった。

少し、顔をゆがめた。

 そして、それ以上、何も言わなかった。

怒りで逆上もせず、

言い訳を並べて、赦しも請わなかった。

 

ただ、娘を大切に育てろと・・・・

そう言ったのだ。

 

遠くで、インチョルの姿が見えた。

少し、足がおぼつかない。

けれど、飛行場へ姿を消した。

ホッとした自分もいた。

彼は死んだと思おう。

このまま、彼が生き延びたとしても、僕の中で、

彼は死んだものとするのだ。

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エスカレーターから、リュ代表の側近の者が見えた。

僕は、息を飲む。

足取りのおぼつかなかった顔色の悪いインチョルが、思い返された。

引き返さない・・・・。

 そう、彼は死んだのだ。

その選択に、後悔はない。

 

インチョルの車でみたものは、血だらけになった僕の書いた念書だった。

部屋の中に残されたのは、自分あての、

通帳・書類そして3人の写真だった。

 椅子に腰かけて、彼がこれらを残した気持ちを考える。

すべての答えは、あの雪山にあった。

 

自分は、大きな大きな1点を、忘れていたのかも知れない。

あの日、インチョルは、戻ってきたのだ。

大勢の大人たちを連れて。

彼は、見捨てたワケでもなく、現実として自分たちを助けに戻り、

事実、僕たちは助けられたのだ。

 

なくなった音楽プレーヤー、いなくなったインチョル。

その思い込みは、自分自身が考えた筋書きだからこそ、

20年間も僕を束縛し続けたのかも知れない。

 インチョルの頭に、自分たちを見捨てるという発想が、

果たしてあったのだろうか。

 

「20年間も、俺をそんな男だと・・・」

そう、悔しそうに悲しそうに言った。

 

あの日、ミンスを置いて、小屋を飛び出した。

ミンスの命と、自分の命を葛藤しながら。

頭の中で、自分勝手で猜疑心の塊の自分と、

人を見捨てる事を許せない偽善心が、

交差していた。

 

あの日、僕は、2人を見捨てた。

そして、

時が経って、再び2人を捨てたのだ。

 

両親が殺され、ミンスが死んだ。

真実はもう分からない。

真実は、僕が消し去ってしまった。

僕が、消し去ってしまったのだ。

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感想

・・・という事で、私の捉え方はこうでした。

なかなか、最後は、唸らせられました。

 ヒョンスが一体、どういう気持ちだったのか・・・。

インチョルがどういう気持ちだったのか、

グルングルンと頭の中を回ってました。

 

見方によっては、両親が殺され、ミンスも自殺して、

自分だけ逃げようとしたインチョルを恨む・・・っていうのは、

すっごく気持ちが分かるんですよね。

 でも、ヒョンスが、空港でインチョルと相対する意味は、

彼を信じたいって気持ちもあったんじゃないかな?と思うんです。

 

彼を疑いながらも、ずっと信じていたから、

こういう展開で本当に苦しんでいたのは、ヒョンスだったんじゃないかな?

・・・と思うんですよね。

真実を知らないっていうのは、こんなにも、苦しい事なんだと、

ヒョンスを観ていて、改めて思ったんですね。

 

インチョルがすべてを打ち明けていたら・・・とも

思うんだけど、彼の保身が、そうする事を許さなかったし、

インチョルが1番悔やんでるのは、そこじゃないかな?と

思うワケです。

 

だから、インチョルもヒョンスも、ともに後悔を抱えていたんだろうな~って。

インチョルは、死んでしまったけど、

ヒョンスはこれからも生きていかないといけないワケで・・・・

真実の分からない、けれど、輪郭のない後悔を抱えていくって、

ちょっと、地獄だな・・・と感じています。

 

 というか、すべては、ヒョンス母が悪いねん!!!!

 

インチョルも、悪徳保険セールスマンではあるけれど、

人の頼みや、人を助けてあげたいって気持ちから、

保険詐欺に加担していたのかも知れないという見方も出来ちゃうし、

そうなると、ヒョンスママを本当に助けてあげたい気持ちだったんだろうしね・・・

 

憐れだし、運命ってヤツは・・・・

 

チェ・ジフン様の演技が、

もの凄く良かったです。

 堕ちていく様がリアルで、その必死さや追い詰められてる感が、

観ていて辛かった・・・。

 

そして、チソン様も、静かな演技でありながらも、

最後の台詞のないシーンで、これほどまでに、

視聴者を作品の世界に巻き込んだ感が、本当に素晴らしかったです。

 ヒョンスの心情を、言葉なく、

見事に演じたチソン様は、

やっぱり、素晴らしい。

 

 完全な友情なんてありえない。

互いに嫌だと思った記憶や、嫌いな所があって当然。

人間だもの。

 そういうマイナスを抱えながら、それ以上に、

一緒にいる楽しさや癒しが、友情を持続させているのだから。

 そういうプラスもマイナスも含めてが、友情だけれど・・・・。

 こういった運命が時に、

悲劇的なドラマを生み出すのかも知れない。

 

序盤の3人が信頼し合い、笑顔で溢れているからこそ、

こういう展開は、悲劇しかない。

 

脚本にしても、その演技にしても、

隙のない秀逸な作品でした。

 

 

チソン様劇場

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また、載せちゃう(笑)

 

もう、このヒョンスが、

リアル・チソン様みていで、

娘になりたい・・・と切に願った・・・・。