基本情報
2021年(23)
2019年配給
監督 行定勲
原作水城せとな(漫画)
キャスト
大伴恭一→大倉忠義
今ヶ瀬渉→成田凌
感想
R15とは、つゆ知らず。
ジャニーズだし、ゲイカップルといえど、チュッチュッってする程度だろーと思って観たら、度肝抜かれました。
大倉くん、やりましたね!
そして、成田凌さん。
もともと、大袈裟なサイコを演じる事が多いように感じていて。
サイコの演技は、演技がうまく見えるだけなのよねーと思っていて(←何様?)あまり評価していなかったのですが、
今回のこの作品は、本当に素晴らしかった!
大伴は結婚しながら浮気をするような人間。そんな彼が、今ケ瀬と出逢い、大胆で繊細な変化を遂げて行く。
演技を見た事がなかった大倉さんが、その辺りをしっかりと演じていて、ビックリした。
はじめの、愛を小馬鹿にしたような雰囲気から、今ケ瀬の愛に、戸惑い反発する姿。
そんな中でも、今ケ瀬との空間に癒しを感じながら彼を受け入れ、本当の愛へと昇華させていく。
灰皿をゴシゴシと洗う背中に、しっかりとした成長を表現し、それは、本当の愛を知った大伴の揺るがない決意だった。
そして、長年の愛を抱き続ける今ケ瀬。
純粋さ、健気さ、可愛さを兼ね備え、抑えた演技が素晴らしい。
大伴の一言一言に、一喜一憂する姿が、犬コロみたい。愛と独占欲にまみれながら、
相反するように生まれるのは、
陽の下を歩ける恋愛を奪ってしまい、大伴をこの狭くて暗い空間から解放させてあげなくてはと思う気持ち。
大伴の気持ちが、まっすぐに今ケ瀬に向かう途端に、自信をなくしてしまう繊細さよ。
「来年の誕生日にもワインを贈る」と言われればその瞳を喜びで濡らし、
「お前を選ぶわけにはいかないよ」と言われれば悲しみで瞳を濡らす。
濡れ場シーンは確かに度肝を抜かれたし、下手したら、アダルトだろうと思う所だけど、
思い起こすと、そのようなシーンよりも、二人のその繊細な演技だけが、心に残る。
そのピュアさ・真っ直ぐさは、
大胆な濡れ場シーンさえも凌駕し、
キワモノ作品ではなく、
美しくて切ない恋愛ものとして刻まれることに成功しているのだ。
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ラストシーン。
大伴は灰皿をゴシゴシと洗い、
いつも、今ケ瀬が座っていた椅子に腰掛ける。
窓から風が入り込む。
きっと、今ケ瀬は、舞い戻ってくる。つまりは、完璧なハッピーエンドだと、私は思うのだ。
思った以上に、この世界観が気に入ってしまい、原作を読んでみた。
レビューでは、原作ファンの方々は、映画は残念な出来栄えと評価される方もいて、
どうかなぁ?と思ったけど。
映画→原作の順序が幸いしたのか。
わたしの中では、原作読んでなお、この映画の評価が上がってしまった。
何が凄いって、
漫画原作の、あれほどの文字数を、
あれだけの台詞で表現し切ったという点。
映画を観て、わたしが感じた事は、
基本、間違ってはいなかった。
つまりは、漫画において、
文字として表現された感情や、過程の変化が、見事に映画でも感じ取れたという事に他ならない。
大伴の気持ちの変化や、成長。
今ケ瀬の嫉妬や、戸惑い、混沌とした感情。
それらを、主人公二人は、
見事に演じ切っていたかと思うと、
ほんと、正直泣ける。
そして、最後のシーンも、
これは別れて終わりじゃないと。
これは、ハッピーエンドだ!と、
わたし、言いましたよね!(←だれ?に問いかけてる?)
ラスト、原作とは違う描き方だったけど、伝わる演出。憎いよね!
素敵️でした。
個人的には、
大伴の【3度目はないぞ】って台詞欲しかったけど、【あなたのタバコになりたかった】のくだりは、映画の【馬鹿だね】が良かったので、相殺やな(←何がやねん)
もちろん、漫画もすごく良かったし、
より大伴や今ケ瀬の気持ちが深堀されてて、読み応えあり。
でも、限られた時間、セリフの中で、
この二人の世界を構築出来たって事は、
素晴らしい事だと思った。
大倉くんが、軽い愛から、
本当の愛に変化していく様。
成田くんが、手に入れられないと思っていたものが、手に入りそうになり、戸惑う様。
特に、ラストシーンの大倉くんの、
背中で見せた決意は、名演技だと思う。
そして、二人の関係のステップを、
うまく表現したのも、良かった。
濡れ場シーンで、何気に、立場が入れ替わっていたりね。
漫画原作では、その辺りの心情が事細かく、文字で表現されていて。それらのほぼ一切を省き、場面場面で凝縮した監督の心意気に乾杯!
という事を踏まえて、
映画2周目!と思ったんだけど、
この作品、ほんと場所・時間選ぶから、
なかなか観れそうにない(笑)
あ!1つ難をいえば、
今ヶ瀬、スーツでも良かったんじゃなかろうか。
どうしても成田くんが、幼く見えてしまうんだよね。
(ま、わたしがスーツフェチっていうのもあるけど)