<ネタバレ>2016⑧  リリーのすべて  ☆☆☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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1926年デンマーク。風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、同じく画家の妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)に女性モデルの代役を依頼される。その際に、自身の内面にある女性の存在を感じ取る。それ以来リリーという女性として生活していく比率が増していくアイナーは、心と体の不一致に悩むことに。当初はそんな夫の様子に困惑するゲルダだったが、次第に理解を深め……。

 

ずっと、観たかった映画。

 

始めから終わりまで、切なくて切なくて。

 

そもそも、この2人の人生を、2時間ほどで描くには、困難なのである。

女性になりたいと願うアイナーの人生と、

それを支えるゲルダの人生。

 どちらも、苦難に満ち、愛と切なさに彩られている。

 

 どちらか一方だけを描けば、どちらか一方が、悪者になる。

そんな微妙なラインを、この作品は、見事に捉えていると思うのだ。

 

 妻として愛しながらも、自分の本当の願いに気づいたアイナー。

ゲルダへの贖罪と、甘えの中で、自分の願いを叶えていく。

 その過程は、まるで、姉を慕うかのような母を慕うかのような、

親友を慕うかのような、そんな愛へと変貌を遂げていく。

 

 ゲルダもまた、自分を裏切り続けるアイナーを、

嫌悪し、彼の本当の願いに気付かせてしまった自分を呪い、

このカオスから、解き放たれたい・・と、願う。

けれど、アイナーへの愛が、結局はそうさせてはくれない。

 彼女の母性本能が働くかのように、ゲルダはアイナーを最期まで支えていく。

 

 お互いの愛が、苦悩と葛藤の中で、形を少しづつ変えていく様が、

本当に、ただただ、切ない。

 

  その苦悩と葛藤の中から、お互いを捨て、飛び出すことも出来た。

 けれど、そうする事は出来ず、最期のその瞬間まで、

アイナーとゲルダは、身を寄せ合う。

 そこには、男と女だけの愛ではない、確かな愛が存在したと、

感じさせてくれる作品だ。

 

 エディ・レッドメインは、素晴らしい。

自分の中に眠る女性の部分を、見事に演じていた。

 特に、初めてストッキングを身にする場面は、官能的であり、

非常に魅力的な場面だった。

 

リリーは、1度目の手術後、女性としてデパートで働いたりと、

その人生を謳歌する。

 自分の新たな人生を手に入れ、ゲルダのことなど、眼中になくなっていく。

ゲルダに受け入れられているという安心感と甘え。

 けれど、リリーがその人生を謳歌するほど、ゲルダは、複雑で、取り残されていく。

 

このまま2人の人生が進んでいけば・・・・

リリーへの愛は、憎しみに変わっていったのかも知れない。

 ゲルダの愛は、あくまでも、孤独と戦うアイナーに寄り添ってこそ、成立したのだと思うからだ。アイナーを支えるのは私しかいないという使命感。

 

 それが、必要でなくなった時。

 それこそが、この2人にとって、大きな大きな試練になったのかも知れない。

 

 けれど、そうなる前に、リリーは逝ってしまう。

 

アイナーが逝くその時まで、そばにいたのは、

ゲルダだった。

 リリーの人生を一瞬でも謳歌したアイナー。

そして、アイナーを彼女の幸せの絶頂まで支え続けたゲルダ。

 2人の愛が、見事に昇華されたからこそ、

2人の人生は、愛に彩られたハッピーエンドであったと信じたい。

 

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