株式ちゃんは口から心臓が飛び出るかと思いました。あの債券が目の前にいるのです。債券の切れ長の紫の瞳がじっと株式ちゃんを覗きこんでいます。


債券:「なんでお前・・・!!ここに・・!!」


債券はあわてて手を離しました。


株式ちゃん:「さ・・債券・・!!!会いたかったよぉ!!!」


うわぁんと泣き出して、株式ちゃんは債券に抱きつきます。

抱きついてきた株式ちゃんからふわりとお日様のにおいがして、債権は思わず赤面しました。ここでギュッと抱きしめ返すことができたら、どんなに幸せなことでしょう。

しかし、債権にはそれができませんでした。

その代りに、債券は優しく泣きじゃくる株式ちゃんの頭をなでました。


債券:「久しぶりだな、株式。どうして、お前ここに?」


株式ちゃん:「FMさんに連れられて来たんだ。FMさんがやっているシェアハウスって聞いて・・」


債券:「あいつめ・・。そうか、お前ここがどういうところか分かっているのか?」


株式ちゃん:「へ?シェアハウスって・・・」


債券:「馬鹿。ちょっと、こい」


株式ちゃん:「へ?ちょっと債券、痛いって・・・!」


株式ちゃんは、そのまま債券に引っ張られて表に出ました。

そのまま近くの広場に行くと、人だかりができていました。その人だかりをかき分けると、そこには債権と同じ種族の人たちがたくさんいました。


債券:「見てみろ」


株式ちゃん:「・・・・!!!」



それは恐ろしい光景でした。


屈強な男たちが、債権たちを取り押さえ、焼印を押しているのです。

焼けた鉄のにおいと、焦げるにおいがあたりに充満していました。

債券の中には、それはそれは悲痛な声を上げる者もいました。


株式ちゃん:「あれ・・は何をしているの・・?」


債券:「格付けだ」


株式ちゃん:「格付け?」


債券:「あぁ、俺たちの信用性をあいつらが測ってるのさ。本当に利払いができるかとかな。それで、その格付けの結果をああやって焼印をしているんだ」


株式ちゃん:「酷い・・」


債券たちで逃げ出すものは1人もいません。

みなおとなしく、男たちの宣告を聞き焼印を受けているのです。そこで株式ちゃんははっとしました。


株式ちゃん:「債券、もしかして・・!!」


債券:「あぁ・・」


債券は服の袖をあげました。

褐色の債券の腕には、さらに黒く、文字が刻まれていました。


債券:「俺のランクはBB、あの家は、ランクBB以下の奴が住む家なんだよ・・・」



つづく。






<前回までのあらすじ>

いまいちグローバリゼーションに乗り切れてない国、ニポン。そこでけなげに生きる株式ちゃん。1人暮らしを始めたいと考えた彼が、シェアハウスで暮らすことに・・!?


株式ちゃん:「え・・こ・・ここが・・FMさんのシェアハウスですか・・!?」


FM:「イエース!!!!ここがミーのニポン・エマージング・ハウスね!!!君以外にもいろんな人が住んでるから!あとの詳しい話はその人たちに聞いてネ!ミーはまだシゴトね!」


とだけ、言うとまたFMはタクシーに飛び乗って去っていきました。


株式ちゃん:「せ・・せっかちな人だな・・・。まぁいいや・・ここがきょうから僕の新しい住みかだ!!」


株式ちゃんは目の前にあるシェアハウスを見上げました。故郷の村を後にして、東京に出て、はじめて人さまのご厄介にならずに生きていけるのです。その誇りを感じながらそのシェアハウスを・・・いや、シェアハウスというと恰好よすぎです。築50年はありそうなおんぼろ一軒家を見上げました。もう、中に入っただけで今にもつぶれそうな、そんな雰囲気をかもしだしていました。

しかし、背に腹は代えられません。株式ちゃんは、意を決して、その一軒家の呼び鈴を鳴らしました。


ブブー


株式ちゃん:「すいませーん、きょうからここに新しく住むことになった株式ですー・・・あれ・・?」


返事はありません。しかも玄関は開いています。株式ちゃんはおそるおそる玄関の中に入りました。

築50年はありそうなだけはあって、中は薄暗くどこかカビ臭いです。


株式ちゃん:「誰もいないのかな・・・?」


ギシッ・・・


株式ちゃんは、さらに足を進めました。薄暗い廊下が、株式ちゃんの歩くたびにきしみます。

今らしき部屋への扉に手をかけようとしたその瞬間、



株式ちゃん:「わぁ!?」


ドシン!!!


株式ちゃんの体がふわりと浮いて、廊下にたたきつけられました。


そのままがっしりと後ろから組みしかれ、身動きができません。


株式ちゃん:「うわぁぁ!!!!!ぼ・・ぼく怪しいものじゃありません・・・!!!!!」


??:「・・・・・・株式・・・?」


株式ちゃん:「・・・・・!!!!!!その声は・・・・!!!債券!!!!!?」



株式ちゃんをがっしりと組みしいたその男は、なんと、そう・・!!!

あの幼馴染の債券だったでした。






15分ぐらいすると、レンガ造りの野村さんのお家の側に一台のタクシーが止まりました。あんまりの早さにまだ株式ちゃんは心の準備ができていません。タクシーからは褐色の男性が出てきました。一瞬、株式ちゃんは債券君の事を思い出し、ドキっとしました。

野村さん:「やあ、FM(エフエム)、久しぶりだね」

FM:「ハーイ!ノムラ!!久しぶりネ!!!ゲンキゲンキー!?」

野村さん:「元気だよ。株式ちゃん、こちらがニポンエマージングなんたらハウスの大家さんのFMさんだ。ほんとは、ファンド・マネージャーっていうのが本名なんだけど、長いから僕たちはFMって呼んでいるだよ。FMさんは海外からいらしたんだけど、ニポン語は堪能だから安心して」

株式ちゃん:「は・・はい!!株式と申します!よろしくお願いします!」

FM:「オー!!とってもカワイー株式ちゃんね!!ミーのシェアハウスの一員になりたいって?!もちろんよー!!!」

株式ちゃん:「ほ、本当ですか!よろしくお願いします!」

FM:「Nomura,I have some questions about the analysis sheet for this equity you sent to us. Can I have a minute?」

野村さん:「sure.ちょっと待っててね。僕とFMはちょっとお茶してくるから」

株式ちゃん:「は・・はい!」

そうして、野村さんとFMは奥へと入って行きました。去り際に、FMが株式ちゃんにウィンクをしたので、株式ちゃんは何だか顔が赤くなってしまいました。外国の人って大胆だなーと株式ちゃんは思いました。でも顔が赤くなったのはFMの背恰好がちょっとだけ債券に似ていたせいかもしれません。株式ちゃんは思わず首にかけていたネックレスを握りしめました。幼馴染の債券は今どこで何をしているのでしょうか・・。季節は代わり暖かくなってきたというのに、債権から便りの一つもありません。


株式ちゃん:「・・・債券の馬鹿・・・」

野村さん:「ん?株式ちゃん、なにか言ったかい?」

株式ちゃん:「わぁ!の・・野村さん!もうお話は終わったの!?」

野村さん:「あぁ、FMは、仕事が早いからね・・ハハ・・」

心なしか野村さんは、げっそりしてるようでした。

FM:「OK!,株式チャン!ユーは今日からミーのニポンエマージングなんたらハウスのメンバーよ!!ミーのファンドにようこそ!!!さぁ!シェアハウスを案内するよ!!ヘイ!タクシー!」

株式ちゃん:「えぇえぇ!!!!!?」

FMは株式ちゃんの手を取ると、外に止めてあったタクシーに押し込められました。

株式ちゃん:「ええええ!?ちょ・・野村さん・・・!!!!」

タクシーは勢いよく走りだし、株式ちゃんは野村さんに別れの言葉を言う暇もありません。
そのタクシーを見送って、野村さんは1人つぶやきました。

野村さん:「株式ちゃん・・・君ならどこでも・・・やっていけるはずだ・・頑張るんだよ・・」