<前回までのあらすじ>
同人誌の転売で学費を貯める転売ヤーの転売君が、金融君にデリバティブを教えることになったぞ!!

転売:「たとえば、この『つるべたにゃんにゃん』って同人誌があるよね」
金融:「お、おう。お前ロリコンなんだな・・」
転売:「ちっ、違うよ!!こういう本が高く売れるから、買ってるだけで・・・!!!この本が今1000円でオークションで売ってるとするよ?」
金融:「ふんふん。つるぺたにゃんにゃんがヤフオクに1000円で出てるってわけだな」
転売:「そう、それでぼくはこの『つるぺたにゃんにゃん』を、『3カ月後』に『今と同じ1000円で買う権利』を100円で買うんだ。これを先物取引っていうんだ」
金融:「はっ?」
転売:「それで実際三ヶ月後にこの『つるぺたにゃんにゃん』がオークションで1万円の値がついてたら?」
金融:「1万円の値段がついてても千円で買えるってことか?」
転売:「そう1000円で買えるの!」
金融:「すげぇ!9000円も得じゃねぇか!」
転売:「しかも僕は、100円で1000円で買うって予約してるだろ?実際に『つるぺたにゃんにゃん』は買わないで、この予約した権利を誰かに転売したら?」
金融「もしかして・・100円しか払ってないのに9000円もらえるのか?」
転売:「そう!そうなんだよ!!!100円しか払ってないのに9000円もらえるの!!」
金融:「すげぇ!!」
転売:「こういう先に売ったり買ったりできりる権利をやり取りするのが、先物取引っていうんだ。分かった?」
金融:「ふーん、この現物を売らないで、その現物から派生する値段の変動だけをやり取りするからデリバティブ(金融派生商品)っていうんだな」
転売:「え、あ・・うんそうだよ・・」

金融君の飲みこみの早さに転売君はぞっとしました。
なんだか瞬間的に、与えられたものと与えられないものの差を見せつけられたような気がしました。
そんな暗い気持ちを振り切るように転売君は明るくつづけました。


転売:「この先物取引はデリバティブの基本的な取引の一つなんだよ。他にもあるから見ていこうね!」
金融:「おう!」
ちょっと先の未来、偉い人たちが「やっぱ金融リテラシーっすよね!金融リテラシー!」と言い始め、英語の如く学校の授業に金融が追加されるようになった。

ここは私立BL学園、その新しい授業に四苦八苦する少年がいた。
彼の名前は金雄一郎、あだ名は金融である。

金融:「ちっくしょー。居残りって言っても俺だけじゃねぇか。くっそーめんどくせぇなぁ」
少年:「あれ?金融君、どうしたの?」

放課後の教室に1人残る金融君の元に、転売君と呼ばれる1人の少年が入ってきました。転売君は色が白く、健康的な小麦色の肌をもった金融君とは正反対なルックスをしています。

金融:「おぉ、転売じゃねぇか。お前も居残りか?」
転売:「違うよ。忘れ物しちゃって戻ってきたんだ。なに?金融君、金融の授業の居残りをしてるの?」
金融:「そうだよ。このプリントやって、先生に提出しないと帰れないだと。ったく、金融ってのは全くわけわかんねぇぜ」
転売:「そうかなぁ・・・。まぁがんばってね」
金融:「なんだ、もうかえるのか?つめてぇなぁ」
転売:「うん・・あっ!!」

自分の机からごそごそと何かを取り出そうとしていた転売君でしたが、その時うっかり手が滑りとりだそうとしたものを盛大に床にぶちまけてしまいました。

そこにあったのは・・

金融:「おま・・なんだこれ!?エロマンガか!?」
転売:「あっ!違うよ!違うよ!」

A4の茶封筒からは、ロリロリの女の子が表紙のつるつるした表紙の本が出てきました。
うっわっと思わず声を出す金融君です。

金融:「お前、オタクだったんだ・・・」
転売:「ちっ!違うよ!これは転売しようと思って!」
金融:「転売?」
転売:「うん・・オークションにかけて、高く売ろうと思って・・。ほら・・僕、お父さんが完璧な負け組でしょ・・。だから、こうやってエロ同人誌を転売して、大学への資金を貯めようと思って・・・」
金融:「えっ・・・あっ、そりゃあ大変だな。悪かったよ。今みたマンガのことは誰にもいわねぇよ」
転売:「えっ・・・!ありがとう!」

ぱあっと転売君の顔が明るくなりました。
その笑顔に、金融君はいつも暗い顔の転売君しか知らなかったので、少し意外な気持ちがしました。

転売:「金融君のお父さんは何をしているの?」
金融:「えー俺の親父か?なんか横文字の会社で英語使って仕事してるみたいだぜ、俺よくしらねぇけど」
転売:「そ・・そう・・そういえば、金融君ってタワーマンションに住んでるんだよね・・」
金融:「そうそう。朝さぁエレベーターのラッシュが起きるんだよなぁ。なかなか乗れなくて困るぜ」
転売:「そう・・・」

転売君の目が暗く光りました。そんなことも気づかず金融君が続けます。

金融:「あっ。そういえば、転売、お前頭いいよなぁ。俺に金融について教えてくれよ」
転売:「え・・・いいけど・・・このプリントのテーマは何なの?」
金融:「デリバティブだよ」
転売:「デリバティブ?あぁ、原資産の取引から派生的生まれた取引だよ」
金融:「・・・はっ?お前舐めてるの?」
転売:「えっ!えぇ!?」
金融:「お前、そんな分かりにくい説明で分かると思ってるのかよ!!まったく!頭のいいやつってのはこれだから!自分だけが分かってるからって小難しい言い方で説明しやがる!!もっと分かりやすく説明してくれよ!」
転売:「えっ。えぇ!?じゃ、じゃあそうだな・・・ようし!じゃあこの同人誌の転売を例にして、僕がデリバティブを説明してあげるよ!!」


こうして転売君のデリバティブ講座が始まったのでした。

債券に手をひかれながら、株式ちゃんはずっと泣いていました。

夕日がやけに紅くって、債権は株式ちゃんにかける言葉が見つかりません。債券は、ずっと前から分かっていたのです。債券と株式ちゃんとでは、住む世界が違うってことを。

押された焼印は、今でも時折疼くように痛みます。


債券は、自分の知っていることだけをぽつりぽつりと話し始めました。


債券は、同じようにFMにあの家に連れらて来たということ。

あの家は、「投資信託」ということ。

あの家に住む住人は全部FMが決めるということ。

FMが気に入らなかったら、すぐに家を追い出されるということ。


特に、債権が住んでいるあの家は「ハイ・イールド債」、あからさまに言えば「ジャンク債」と言われる「くず」「がらくた」と呼ばれる債券たちが住んでるということ。


俺たちは信用がないからな・・・



と、さびしそうにいました。

その代り、稼ぎ(利回り)は良いんだぜ、と債券は言いました。


株式ちゃんにとって、債権は「くず」でも「がらくた」でもありませんでした。

今は、景気の行き先が暗くても、そのうちに底入れすれば、株式ちゃんなんかより、高い値上がりを期待できるのです。


きっと、FMはお前を下すところを間違えたんだな。っと、債権は言いました。

俺たちの家には、公社債投資信託といって、債権しか住めないんだとも、いいました。


いやだよ・・・・。


株式ちゃんは言いました。


俺はずっと、株式と一緒にいたいよ・・・。



しかしそのつぶやきは、あまりにも小さすぎて債権には伝わりません。



つづく。