眼ヂカラ | モダンと暮らす、カカと生きる

モダンと暮らす、カカと生きる

脳出血で右半身マヒ&失語症になっちゃった〝カカ〝。
甘えん坊の個性派ビーグル〝モダン〟。

この大切なふたつの宝物を守るべく、介護&家事&稼ぎにいそしむ、お気楽のんびり屋な〝トト〟。そんな仲良し家族の日々をつづります。

ようやく熱も落ち着いた…と思ったら

2日休んでまた昨日の夕方から高熱が出た。

でも眠っている表情は、いたっておだやか。

何もないかのようにスヤスヤと眠っているのだが

熱をはかると40℃近くある…。


一昨日から〝音〟に反応し始めたので

CDプレーヤーで静かな静かなインストルメンタルを聴かせたところ

気に入ったらしく、静かに目を閉じていた。


今日病院に行くと、昨日とは違って眉間にしわを寄せ、難しい顔で眠っている。

腕を触ると、ほてるように熱い。

「あ~、また熱が出たな…」

今日もやはり40℃近い。

腕とすねに両手をあて、

カカの熱をトトが吸いとって、天に向かって放出するイメージを、脳裏に浮かべる。

こんなことぐらいしかできないけれど

こんなことでもせずにはいられない。


まもなく猛烈に汗をかき始めた。

額に、眉間に、鼻の下に、顎に、首筋に、胸元に、

そして腕にも脚にも玉のような汗が浮かび、滝のように流れ

心拍、血圧、呼吸をはかる機器につながったコードを固定するテープや

鼻のチューブを固定するテープが次々にはがれていく。

むずがゆいのか、手袋をされた左手で、はがれかけたテープを外そうとする。

「ほらほら、とっちゃダメだよ…かゆいねぇ、がんばろうねぇ」

と声をかけながら、次々に浮かんでくる汗をティッシュで拭きとり続ける。

そうして1時間半もした頃には、寝巻もカラダの下に敷いたバスタオルも

その下のシーツまでぐっしょりと汗で濡れてしまった。

と同時に〝登りきったな…〟と直感した。


やがて呼吸や心拍が安定し、血圧も下がっていく。

おそらく熱も少し下がっただろう…とホッとしていたら

ポケットの中で携帯のバイブが響いた。

トトとカカの大切な友達Cちゃんからだ。

彼女はトトの同級生。14年前、働き者のお父さんが脳疾患で倒れられた。

お父さんは半身麻痺からやがて寝たきりになられ

お母さんはその介護にすべての時間をかけられた。

そんな両親を、経済的に、精神的に、

もちろん介護面でもトータルに支えてきた彼女は、私にとって大先生。

同じくトトと彼女の同級生だった旦那氏もまた、

Cちゃんを大きく包み、支えてきた。

2人は今回の我が家の大事件に関しても、

脳疾患に関する知識や、介護に関するいろんな情報と知恵を教えてくれ

さらにプライベートな面でも、ずいぶん骨を折ってくれている。


そんなCちゃんに、やっとカカと会ってもらえた。

「おかーさん、Cちゃんが来てくれたよ…」と声をかけると

さっきまで熱にうなされ固く閉じていた両瞼がパチッと開いた。

「なんねー、ちゃんとわかっとるやない!あー安心した!

 大丈夫、大丈夫!ただカラダが思うように動かんだけ。

 ちゃーんと全部わかっとるね」

と言って、テキパキとカカの世話を焼いてくれる。

「あたしがこの14年間、どれだけの脳疾患の人、見てきたと思うと?

 眼ヂカラが違うもん。カラダはよぉと動かんでも、眼はいつもの眼よ!

 動けるようになるには時間がかかるやろうけど

 あとはあきらめんで、あせらんで、やるだけよ!」

と力強く言ってくれた。


ICUにいた頃から

(眼は開かなくても、わかってるはず)と思っていたし

瞼が開いて瞳が動かなくても

(うまく動かないだけ、ちゃんと全部わかっとる)と直感していただけに

脳疾患介護の大先生Cちゃんからそう言われると、とても嬉しい。

 ※これはドクターの判断とはまた別の話ですので、ご了解下さい。


Cちゃんはカカが倒れた数日後、トトに会いに来て

極めて現実的に、いろんな話をしてくれた。

と同時に、トトの思いや覚悟をしっかり確かめていった。

「ん、顔見るまで心配しとったけど、

 ちゃんと冷静にこれからの事を考えとるのを聴いて安心した。

 あたしにできる事は何でもするけん、遠慮なく言いね。

 一番そばにいるモンが一番しっかりせないかんとよ!

 大黒柱なんやけんねっ!」


トトを最も叱咤(もちろん激励も…笑)してくれるのが、弟とCちゃんだ。

彼らのおかげで、冷静になれる。

そしてカカの、あの眼ヂカラのおかげで、勇気がわいてくるのだ。



モダンとトトの、おるすばん日記

モダンの眼ヂカラも、なかなかのもんでしょ

カカに良く似てるって、言われるもんね