本日の懐かしのホラー映画は、「吸血ゾンビ」(1966)。
ハマー・フィルムが製作した貴重なゾンビ映画になります。

コーンウォールの村で原因不明の恐ろしい病気が流行し、村人が次々と亡くなっていると言うのです。娘シルヴィアの説得もあり、教授はシルヴィアと共に、かつての教え子の居るコーンウォールへ向かう事にします。
道中、狐狩りに興じる一団に遭遇した教授親子。町中では、とある男性の葬儀が行われている最中でした。そこに紛れ込んで来た狐狩りの一団。
彼らと ひと悶着ありながらも、教授達はピーターの診療所へ到着します。
具合悪そうにしている妻アリスが2人を迎えます。
アリスの右手首には包帯が巻かれ、とてもやつれている様子です。
教授は手当を申し出ますが、アリスは頑なに拒むのでした。
教授は、酒場で亡くなった男性の弟 マーティナスに責め立てられているピーターと再会します。この小さな町では、判事を地主が務めていて、地主の名前は クライブ・ハミルトンであるとピーターは説明します。アリスは、シルヴィアにハミルトンを結婚相手にと勧めますが、ハミルトンを夫のピーターは酷く嫌っているのでした。
その夜、1人フラフラと外出するアリスを見掛けたシルヴィアは、アリスの後を追います。後をつけていると、昼間の狐狩りの一団に遭遇し、シルヴィアは屋敷へ拉致されてしまいます。彼らから集団暴行を受ける寸前、シルヴィアは屋敷の主であるハミルトンに助けられます。狐狩り一団が連れ込んだ屋敷は、地主クライブ・ハミルトンの屋敷だったのです。アリスに勧められたハミルトンと気まずい初対面をしてしまったシルヴィアは、激怒し歩いて帰ります。
採掘場辺りを歩いていると、シルヴィアは女性を抱えてそびえ立つ異様な形相の男に遭遇します。男は、女性を放り投げます。シルヴィアが確認すると、首から血を流しているアリスでした。アリスは既に息絶えていました。
男は立ち去っていましたが、シルヴィアは先程の恐ろしい出来事を思い出し、家の前で倒れてしまいます。
アリスの遺体が発見された時刻、外を出歩いていたマーティナスが殺人容疑で逮捕されます。彼は、昼間葬儀をあげた兄が甦ったと証言をします。
ベッドで気を取り戻したシルヴィアも目撃した男は、亡くなったマーティナスの兄である事を認めます。教授とピーターがマーティナスの兄の墓を確認すると、棺に収まっている筈の遺体がありません。この村で一体何が起こっているのか。?
教授は、様々な資料を基に、恐るべき"結論"に辿り着きます。
少しづつ元気を取り戻しつつあるシルヴィアの元にも一連の事件を起こす"黒幕"の魔の手が忍び寄り始めるのでした。
本作のVHSが発売されたか定かではありませんが、ハマー・フィルムのDVD-BOXシリーズの第1巻「吸血モンスター編」に収録されていた作品です。
(後に単品DVDが発売。)
DVDは入手困難になりつつありますが、ホラーマニアックスシリーズでもBlu-ray化されているので、比較的鑑賞しやすい作品です。
以前紹介した「蛇女の脅怖」と同じコーンウォールが舞台となる作品で、製作は蛇女と同じタイミングで行われました。同じセットを利用したと悟られない様に、蛇女と切り離し、「凶人ドラキュラ」とセットで公開する形を取った様です。
体裁としては、「凶人ドラキュラ」の"添え物"の様に扱われていた様ですが、添え物と呼ぶのは失礼な位、作品単体として素晴らしいと思います。
ジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)で、ゾンビが人間の臓物を喰らう構図が完成しましたが、それ以前に製作された本作のゾンビは人間を喰らったりはせず、術者の意に従い動く奴隷の様な行動を取ります。
ブードゥー教のゾンビを題材にした「ホワイトゾンビ」と同じ流れを組んでいる作品と言えます。
(以降はネタバレを含んでいますので、本編を御覧になった方、ネタバレOKな方のみ御覧下さい。)
本作のゾンビ事件の黒幕は、地主のハミルトンでした。
ハミルトンが採掘場の労働者を確保する為に、村人を呪術で殺害し、ブードゥーの儀式でゾンビとして甦らせると言う方法を取っていたのです。
何も殺してゾンビにするなんて手の込んだ事をしなくても、「金払って働いて貰えば済むじゃないか!」と思ってしまいましたが、それを言ったら身も蓋も無くなりますね。(;'∀')
コストをかけず、タダ働きしてくれる労働者が欲しかったのでしょう。
蛇女と同じく、ゾンビのメイクが独特で非常に手間がかかっていると思いました。
一番インパクトがあったのは、ジャクリーン・ピアース演じるアリスを抱えて登場した最初のゾンビでしょうか。シルヴィアの目の前に突如として現れるので、大スクリーンで観たら、さぞビックリした事でしょう。
ホラマニBlu-rayの映像特典では、ジャクリーン・ピアースのインタビューも収められています。だいぶ、おばあちゃんになっていますが、若い頃の美しい面影が残っていたのは嬉しかったです。
邦題タイトルの様にゾンビが血を吸う場面はありませんが、ブードゥー教を題材にした面白い作品です。ホラマニシリーズのBlu-rayが好評発売中なので、ご興味のある方は是非手に取ってみて下さい。