The Deviants 『Disposable』 (1968)
→イギリス、サイケデリックロック

Dispoable
 
 UKアングラロックの重要バンド、The Deviantsの2ndアルバムです。前作『Ptooff!!』と比べると、混沌度合いは減ったものの、アルバム全体に漂う怪しさは残しつつ、曲の完成度としては上がった感じがします。曲のメロの良さも目立ってきており、良質なブルースサイケロックのような曲もあります。またこのアルバムの特徴として、ダウナーな雰囲気が漂っており、それがなかなかかっこよくて癖になります。
 
 とはいっても狂気サイドも健在で、凶悪ファズギターやしつこいほどのリフの繰り返し、やけくそのようなボーカル、他のバンドのコラージュのような小曲、もはや歌になっていない会話や叫びなど、怪しさプンプンで楽しませてくれます。とっつきやすいけれど、アンダーグラウンド色強めで混沌としたアルバムは、The Deviantsにしか作りえないものでしょう。
 
 
【おすすめ度】
★★★☆☆ 良作、★4の次に聴いておきたい
 
 イギリスのバンドThe Deviantsの2ndアルバムです。1st,3rdと比べると、印象が薄いとされていますが、このアルバムにしかない魅力があり、なかなか良作だと思います。


【おすすめ曲】
4. You've Got to Hold on
 このアルバムのなかでもキャッチーで、シンプルにかっこいい一曲。UKロック味あふれるサビと、終始弾きまくるブルージーなギターが聴きどころです。
 
6. Let's Loot the Supermarket
 サックス、トランペットが印象的な1曲。サビのメロディもキャッチーで、コーラスもしっかりしており、すんなりと曲が入ってきます。
 
 
7. Pappa-Oo-Mao-Mao
 ただタイトルのPappa-Oo-Mao-Maoを連呼して歌っています。全く意味不明ですが、妙な疾走感とめちゃくちゃ感が聴いていて楽しくなってしまいます。


【曲リスト】
1. Somewhere to Go
2. Sparrows and Wires
3. Jamies Song
4. You've Got to Hold on
5. Fire in the City
6. Let's Loot the Supermarket
7. Pappa-Oo-Mao-Mao
8. Slum Lord
9. Blind Joe McTurks Last Session
10. Normality Jam
11. Guaranteed To Bleed
12. Sidney B. Goode
13. Last Man
 

The Deviants 『Ptooff!』 (1968)
→イギリス、サイケデリックロック

Ptooff!
 
 60年代後半の英国ロックといえばサイケデリック全盛期でしたが、そのなかでもアンダーグラウンドで混沌とした界隈に所属していたバンドの一つがこのThe Deviantsです。英国アンダーグラウンドの重要人物、Mick Farren(ミック・ファーレン)も所属していたこのバンドは、英国アングラロックを語る上では外せない存在になっています。
 
 そんなThe Deviantsのこのデビューアルバムですが、ジャケットを見るだけでも伝わってくるように混沌として、凶悪で、ドラッギーな世界が繰り広げられています。ヘヴィなサイケから、パンク、穏やかなバラード、曲になっているかすらも怪しい音の塊など音楽性は幅広く、また効果音や会話や絶叫などもごった煮に詰め込んであり、ハチャメチャな混沌度合いに圧倒されます。しかし、そういったセンスあふれるアイデアの数々や、根底にあるポップな面を見ると、ただの怪しいアルバムというだけではない魅力を感じます。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作、これは聴いておきたい
 
 イギリスのバンドThe Deviantsの1stアルバムです。3枚のアルバムの内、2ndと3rdと比べると曲の完成度という面では劣りますが、混沌さ、ハチャメチャさという面では一番です。英国アングラサイケの名盤でしょう。


【おすすめ曲】
2. I'm Coming Home
 この曲は、けだるいボーカルと単調なリフの繰り返しから始まります。そこから徐々にテンポも速くなり、半分ノイズのようなギターも加わり、混沌とした曲調に変わっていきます。まさに危険な香りのするアンダーグラウンドなサイケシーンを象徴する1曲です。
 
3. Child of the Sky
 混沌とした2曲目から一転して、アコースティックギターの弾き語りをメインとする穏やかで美しい1曲です。しかし、左右から聞こえるリバーブ掛かったボーカルが、左右で少しだけずれている所には美しい中にも少しの怪しさを感じます。
 
8. Deviation Street
 混沌としたこのアルバムのなかでも最もハチャメチャなのがこの曲でしょう。フレーズの繰り返しの演奏の上に、怪しい効果音、会話、絶叫が挿入され、ボーカルは叫びまくり、ギターはノイジーに弾きまくります。曲調もコロコロ変わりただただ圧倒され聴いていると、突然曲が終わり、9分が経っています。


【曲リスト】
1. Opening
2. I'm Coming Home
3. Child of the Sky
4. Charlie
5. Nothing Man
6. Garbage
7. Bun
8. Deviation Street
 

Mainhorse 『Mainhorse』 (1971)
→イギリス、プログレッシブロック

Mainhorse
 
 後にRefugeeやYesの『Relayer』などの活動で有名なキーボーディスト、Patrick Moraz(パトリック・モラーツ)が中心となって結成されたバンド、Mainhorseの唯一作です。大まかに見ると、鍵盤が引っ張っていくハードロック調のプログレアルバムといったところでしょうか。それを基本として、幻想的なサイケデリック風味が加わったり、ジャジーな展開や、クラシックの要素のある曲も見られ、かなり実験的で多彩な、レベルの高い曲たちが揃っています。同じ時期のプログレ界隈でもある、ELPやKING CRIMSONを思わせる瞬間などもあります。
 
 このようにかなり複雑な曲が多いのですが、それに負けず演奏のレベルもかなり高いです。どの楽器も主張が強いですが、それでもきちっとまとまる安定感があります。その中でもやはり突出しているのはキーボードでしょう。歪ませたオルガンで縦横無尽に弾きまくっています。一般的なイメージの鍵盤よりも数倍エネルギッシュな演奏です。それに対抗するのはブルージーなディストーションギターで、それらがバチバチと戦っているような様は聴いていて無条件にかっこいいです。それでも叙情的なパートや、ジャジーなパートでは、きっちり雰囲気に合ったプレイをしていて、演奏のレベルの高さがうかがえます。そのほかにも、ドタバタと叩きまくるドラムや、要所要所に入れられるチェロやバイオリンなどの多彩な弦楽器も聴きどころです。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 イギリスのバンドMainhorseの唯一作です。キーボーディストPatrick Morazで語られることが多いですが、それを抜きにしてもかっこいい作品です。


【おすすめ曲】
1. Introduction
 1曲目からテンションが爆発しています。キーボード、ギター、ベースは弾きまくり、ドラムは叩きまくりで、すさまじい緊張感とスリリングさに痺れます。この曲イントロダクションとするにはもったいないほどのかっこよさです。
 
2. Passing Years
 打って変わって2曲目はボーカルがメインの叙情的なバラードです。前曲で激しくぶつかり合っていた楽器も、この曲ではボーカルの引き立てに徹し、美しい曲になっています。曲全体で聴かれる印象的なグロッケン(鉄琴)もいい味を出しています。
 
3. Such a Beautiful Day
 ボーカルに掛け合うコーラスが印象的な一曲です。激しいドラムとファズギターが疾走感を生んでいます。これもテンションの高い曲なのですが、どことなくジャジーな香りも漂います。


【曲リスト】
1. Introduction
2. Passing Years
3. Such a Beautiful Day
4. Pale Sky
5. Basia
6. More Tea Vicar
7. God
 

Freak Kitchen 『Move』 (2002)
→スウェーデン、メタル

Move
 
 Freak Kitchenは、ギタリストMattias IA Eklundh(マティアス・エクルンド)擁するスウェーデンの3ピースメタルバンドです。マティアスといえば、あのスティーヴ・ヴァイに変態と言わしめた変態凄腕ギタリストです。
 
 そんなこのバンドですが、やはりギターはかなりの変態度です。常人の理解を超えた音使いや、突然放り込まれるテクニカルで変態的なスウィープ、タッピング、速弾き、アーミングなどの奏法など終始度肝を抜かれます。そのほかにもおもちゃを使って音を出したり、さりげなく変拍子を入れたりと様々アイデアが詰められているのが感じられます。
 
 ただ、テクニックだけのバンドではなく、曲もポップでかなり良いものが揃っています。どんなにテクニカルなことをしていても、曲調はポップなので聴きやすいです。テクニカルなことを感じさせられません。また、マティアス自身の渋い声と歌い方も素敵です。どの曲もすんなりかっこいいと受け入れられ、このバンドの高い力量を感じさせられます。
 

【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 スウェーデンのメタルバンドFreak Kitchenの5thアルバムです。彼らのアルバムのなかでも特にポップで聴きやすい作品です。ギター弾きはもちろんのこと、ロック、メタル好きも必聴のアルバムです。


【おすすめ曲】
2. Nobody's Laughing
 ゆったりとしてキャッチーな一曲。ボーカルの声もかなりかっこいいです。メロディーが五拍子になってるのに、こんなに聴きやすいのは驚きです。
 
3. Snap
 ゴリゴリに歪んだギターと疾走感がクセになる一曲。思わず拳を上げたくなってしまいます。曲中に一瞬入ってるスウィープや、マティアス特有のピッキングなど、さりげなく入れられている、「ん?」と思ってしまうような、変態フレーズも聴きどころです。
 
4. Humiliation Song
 ゆったりとしたテンポから徐々に盛り上がっていきます。ポップで良い曲だなと油断して聴いていると、ギターソロで度肝を抜かれます。私が聴いてきた中でも一番といっていいほどトリッキーです。ギターだけでなく、ベースもドラムも揃って狂ってます。ギターソロが終わった後の疾走パートもまたかなりのかっこよさです。


【曲リスト】
1. Propaganda Pie
2. Nobody's Laughing
3. Snap
4. Humiliation Song
5. Razor Flowers
6. Heroin Breakfast
7. Porno Daddy
8. Seven Days in June
9. Maggots of Corruption
10. Hateful Little People
11. Logo
12. The Wrong Year 
 

High Tide 『High Tide』 (1970)
→イギリス、サイケデリックロック/プログレッシブロック

High Tide
 
 前作『Sun Shanties』では凶暴なヘヴィロックでしたが、今作ではヘヴィさは控えめになっています。その分曲の重厚さ、スケール、多彩さが増しました。どちらかと言うとヘヴィサイケというよりは、プログレよりの作風になっています。アルバムの曲数も3曲で、それぞれ8分半、9分半、14分半と長尺になっていますが、曲の緻密さも増し、長さを感じずに聴いてられます。このバンドの持つ哀愁や浮遊感がより感じられるため、一般的に評価の高い前作とくらべても引けを取らない名作です。
 
 ただ相変わらず、弾きまくるギター、絡みつくバイオリンは健在で、やはりHigh Tideの唯一無二の音楽性に仕上がっています。また、前作よりもそれぞれの楽器の力関係も近づいてきており、どのパートも激しくぶつかりあっているように感じられます。渋く重厚なボーカルは今作でも堪能でき、やはりかっこいいです。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 イギリスのバンドHigh Tideの2ndアルバムです。前作ほどのヘヴィさはないですが、アルバム通しての完成度は高いです。個人的には前作と変わらないほどの名作だと思っています。このアルバムを出し、High Tideは一旦解散を迎えます。


【おすすめ曲】
 3曲しかないので3曲ともノミネートです(笑)
 
1. Blankman Cries Again
 ギターとベースの反復リフにバイオリンが絡みつき、ドラムはそれを支えながらも主張をし続けます。そのままどんどんと盛り上りを増していき、ギターはリフの反復を抜け出して弾きまくります。この混沌と盛り上がっていく様には一種の陶酔感、浮遊感も感じられ、8分半の恍惚とした時間をすごせるでしょう。
 
2. The Joke
 静と動のコントラストが美しく、哀愁を感じる一曲でしょう。後半のエレキギターからアコギに変わる部分ではHigh Tideのなかでも屈指の美しさを感じられます。ボーカル部分も、とくにキメの部分では根底にある英国ロック魂を感じられとても好みです。
 
3. Saneonymous
 14分半の大作です。どこか東洋的な雰囲気が所々に漂っている気がします。ギターが弾きまくるパートや、アコースティックなパートがあったり、テンポチェンジする部分があったりと、1曲でもバラエティーに富んだ構成になっており、14分半飽きずに聴くことができます。
 

【曲リスト】
1. Blankman Cries Again
2. The Joke
3. Saneonymous