High Tide 『Sun Shanties』 (1969)
→イギリス、ハードロック/サイケデリックロック

Sun Shanties
 
 サイケデリックの栄華が終わりの影を見せ始め、プログレやハードロックといった新しい音楽性がロック文化に現れてきた60年代末期にこのデビュー作は発表されました。その時代性なのか、サイケデリック風味のある、ハードロックといった感じの音楽性です。一般的にはハードロックとして語られることが多いですが、そこらのハードロックよりもはるかに攻撃的でしょう。さらにヘヴイさ、即興性、音数・手数もすさまじく、他にはない凶暴さとアングラ臭がたまりません。
 
 High Tideはギターボーカル、ベース、ドラムに加えてバイオリンがいるという、珍しい4ピース編成です。どの楽器も強烈ですが、とくにギターとバイオリンがバンドを引っ張っています。ファズで歪みまくったギターはチョーギングや速弾きを多用し、攻撃的なフレーズを奏でています。その速弾きもメタル系のようにピロピロしているのではなく、つんのめったような独特なものです。また、バイオリンもかなり歪んでおり、初めはギターと聴き間違ってしまうほどです。左右から聞こえてくるギターとバイオリンの攻防がこのアルバムの魅力の一つではないでしょうか。
 
 しかし、このバンドが下品に聴こえないのは、ボーカルと曲作りにあると思います。ボーカルは重厚で、また哀愁をもって歌い上げるような感じがシリアスな雰囲気を創り上げています。曲作りも巧みなもので、ハードロックやサイケデリックだけでは無く、ジャズやクラシック、ブルースなどの音楽的ルーツも見え隠れします。音自体は攻撃的であっても、メロディアスでどこか哀愁があり、英国ロックの血を引いているのだなと感じされられます。この攻撃的で重厚な曲たちに陶酔して聴いてしまうこと間違いなしです。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 イギリスのバンド、High Tideの1stアルバムです。決して有名なアルバムとは言えないですが、完成度はかなり高く、この時代の傑作アルバムだという声も少なくありません。ブリティッシュハードロック好きにはかなり響くアルバムではないでしょうか。


【おすすめ曲】
1. Futilist's Lament
 アルバムの一音目からえげつないギターの音が聞こえます。私のなかで、この曲の入りのギターほど凶悪な音は聞いたことがありませんでした。ハイテンションで終始暴れ回るギターに、ボーカルやバイオリンなどの楽器が絡みつき、シンプルにかっこいいです。また、哀愁を感じさせられる深みのあるボーカルも聴きどころです。
 
2. Death Warmed Up
 こちらは9分を超える大作インストです。ギターとバイオリンを中心に、それぞれの楽器が絡み合い、暴れあってます。インプロ要素も強く、全編ソロのような勢いには圧倒され続けます。この曲は何も考えず、轟音に身を任せるべきでしょう。
 
4. Walking Down Their Outlook
 ボーカルがあるパートではポップで哀愁も感じられます。その後の、ボーカルのキメから怪しげなインストパートに突入する流れがたまらいです。このアルバムの中でもトップに聴きやすい部類に入るのではないでしょうか。
 

【曲リスト】
1. Futilist's Lament
2. Death Warmed Up
3. Pushed, But Not Forgotten
4. Walking Down Their Outlook
5. Missing Out
6. Nowhere
 

Discus 『...Tot Licht!』 (2003)
→インドネシア、プログレッシブロック

...Tot Licht!
 
 世界のプログレマニアを震撼させたインドネシア産プログレバンドが恐ろしいアルバムを発表しました。
 
 前作『1st』もごった煮の傑作ジャズ・プログレ・ロックの傑作でしたが、今作はごった煮感は健在のまま勢い、ロック感の増した作品になりました。とくに大名曲の#1ではテクニカルなプログレ、Dream Theaterばりのメタル、ディズニー楽曲を彷彿とさせるポップス、インドネシア産だと思い起こさせる民族音楽、ジャズ、シンフォニックなどこれでもかといろいろな要素が詰め込まれています。
 
 それに加えて演奏のレベルも高く、構成、フレーズも複雑というのだから驚きです。メンバーも8人いて、一般的なバンド楽器に加えてバイオリン、サックス、ハープギター、ガムランまででてくるのでもう笑うしかありません。
 
 曲構成、フレーズなどもロックファン、プログレファンのツボなところをついてくるようで、他のバンドにはないDiscus特有のものを出してくるところ、本当に素晴らしいバンドです。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 インドネシアのバンドDiscusの2ndアルバムです。数年前このアルバムがとあるラジオで紹介されたときは、プログレマニア界隈に衝撃がはしり、すぐに在庫がなくなったという伝説があるほどの衝撃作です。


【おすすめ曲】
1. System Manipulation
 とんでもない1曲です。ごった煮ロックとそれをテクニックと勢いでねじふせる楽器隊。1手先まで読めない展開と熱い演奏はゾクゾクするものがあります。このアルバムはこの曲を聴くためだけに買ってもよいほどの名曲です。
 
3. P.E.S.A.N.
 生楽器を主体とした穏やかな曲。それにコーラスも加わり、心地よい気分になります。珍しいハープギターなる楽器が使われているとか。
 
6. Anne
 アンネ・フランクを題材にしたという19分半にも及ぶ大作。終始緊張感があり、聴き終わると一つの映画を見終えたような気分になります。ガムランの独特な音がいい役割を果たしています。


【曲リスト】
1. System Manipulation
2. "Breathe"
3. P.E.S.A.N.
4. Verso Kartini -Door Duisternis Tot Licht!
5. Music 4.5 Players
6. Anne
 

Discus 『1st』 (1999)
→インドネシア、プログレッシブロック

1st
 
 音楽の印象があまりないインドネシアですが、実はDiscusというとんでもないバンドがいるのです。
 
 そのDiscusの一作目です。ジャズロックを基調としている印象ですが、シンフォニック系、ハードロック系、ポップス系、民族音楽系などさまざまなジャンルがごった煮になっています。それをひとまとめにしてプログレッシブロックという感じでしょうか。どことなく漂う異国感はインドネシアという土地から来るものなのでしょう。
 
 それに加えてメンバーは9人もの大所帯らしく、ボーカルが2人おり、楽器はギター、ベース、ドラムに加えて、キーボードに管楽器、バイオリン、インドネシアの民族楽器までも聞こえてきます。それぞれどの楽器もテクニカルでレベルの高い演奏をしており、インドネシアにこんなすごいバンドがいるのかと驚かされます。
 
 Discusと言えば、大傑作の2ndアルバムというイメージですが、この1stも他のどのバンドにないDiscusならではの音楽になっておりとても楽しめます。インドネシアという先入観なしでもいいアルバムです。
 
 
【おすすめ度】
★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 インドネシアのバンドDiscusの1stアルバムです。2ndと比べるとジャズロック、ポップス色が強く、聴きやすい印象です。


【おすすめ曲】
1. Lamentation & Fantasia Gamelantronique
 オープニングを飾る壮大1曲。さまざまな楽器でいろいろなフレーズが入れ替わり立ち替わり出てきます。同じフレーズの繰り返しなどがなく、気づいたら8分半が終わっています。
 
4. Condissonance
 生楽器を主体とした美しいインスト曲です。どことなくノスタルジック感じもあり、聴いていて心地よい1曲です。
 
9. Contrasts
 10分越えの大作インスト曲です。それぞれの楽器が弾きまくり、吹きまくり、叩きまくりで緊張感のある1曲です。まるでバトルを見ているようでゾクゾクします。
 

【曲リスト】
1. Lamentation & Fantasia Gamelantronique
2. For This Love
3. Doc's Tune
4. Condissonance
5. Dua Cermin
6. Wujudkan!
7. Violin Metaphysics
8. Anugerah
9. Contrasts
 

WEEN 『Quebec』 (2003)
→アメリカ、ポップ/ロック

Quebec
 
 相変わらずのWEENワールドです。気持ち悪い曲からすてきな曲まで多様な曲が入り乱れています。
 
 ただ前作までと比べて少し控えめな感じはします。変態サイドの曲なのか普通の曲なのか判断に迷うような曲が多いイメージです。
 
 その分じっくり聴かせる曲も多く、それらの完成度は高いです。WEENの音作りやポップのセンスを感じさせられます。1曲目だけ、激しいロックンロールのナンバーですが、その後は落ち着いて聴くことのできるアルバムなのではないでしょうか。
 
 
【おすすめ度】
★★★☆☆ 良作、★4の次に聴きたい
 
 アメリカのバンドWEENの8thアルバムです。今までのアルバムとくらべると少し控えめかもしれませんが、その分聴きやすく、すんなりと受け入れられるのではないでしょうか。
 

【おすすめ曲】
3. Transdermal Celebration
 壮大な1曲。聴いていて圧倒される名曲です。特にこの曲のギターはとても素晴らしいです。
 
10. Chocolate Town
 シンプルにいい曲。爽やかでかつ落ち着いているため、聴いていて心地よいです。夕方の海を見ながら聴いてみたい音楽です。
 
12. The Fucked Jam
 控えめなこのアルバムなかで飛び抜けて変態な1曲。タイトルからも察する通り気持ち悪いジャムが繰り広げられています。理解不能ですがなぜか曲が終わる頃にはもっと聴きたくなってしまいます。


【曲リスト】
1. It's Gonna Be a Long Night
2. Zoloft
3. Transdermal Celebration
4. Among His Tribe
5. So Many People in the Neighborhood
6. Tried and True
7. Happy Colored Marbles
8. Hey There Fancypants
9. Captain
10. Chocolate Town
11. I Don't Want It
12. The Fucked Jam
13. Alcan Road
14. The Argus
15. If You Could Save Yourself (You'd Save Us All)
 

WEEN 『The Mollusk』 (1997)
→アメリカ、ポップ/ロック

The Mollusk
 
 前作『12 Golden Country Greats』では突然のカントリーアルバムになっていますが、今作では『Chocolate and Cheese』の路線を取り戻しています。変態曲と良曲がうまく融合されていて、これもまた完成度の高いアルバムです。
 
 アルバムを通してもバラエティーが多く、ポップな曲で占められているので、聴いていてとても楽しいです。しっかりとポップな曲なのにひと癖もふた癖もあるところが魅力だと思います。
 
 ポップで楽しい曲から、壮大な曲、アコースティックで穏やかな曲、疾走感のあるロックナンバーや、しっとりとしたバラード、さらにはラジオ体操風ピアノ曲や、お祭り騒ぎのような曲までまるでおもちゃ箱のように様々な曲が現れてきます。バラエティー豊かで、最後まで飽きずに楽しく聴くことが出来る名作です。
 
 
【おすすめ度】
 ★★★★☆ 名作!これは聴いておきたい
 
 アメリカのバンドWEENの6thアルバムです。ポップでバラエティーも豊かな傑作アルバムです。楽しいアルバムで個人的にWEENのながでも一番気に入ってるアルバムでもあります。WEENの入門にも最適だと思います。


【おすすめ曲】
1. I'm Dancing in the Show Tonight
 ピアノを主体とした楽しい曲。聴いていてウキウキしてきます。どことなくラジオ体操を彷彿とさせるのは気のせいでしょうか?
 
2. The Mollusk
 穏やかなアコースティック曲。穏やかで心が落ち着きます。アルバムタイトル曲ですが、日本語タイトルとして『軟体動物の宴』とつけられています。この平和な感じわからなくもないですね…(笑)

11. Waving My Dick in the Wind
 疾走感のあるさわやかで楽しい曲。ただ歌詞はそれとは正反対に下品です。そこがWEENらしくて最高です。


【曲リスト】
1. I'm Dancing in the Show Tonight
2. The Mollusk
3. Polka Dot Tail
4. I'll Be Your Jonny on the Spot
5. Mutilated Lips
6. The Blarney Stone
7. It's Gonna Be (Alright)
8. The Golden Eel
9. Cold Blows the Wind
10. Pink Eye (On My Leg)
11. Waving My Dick in the Wind
12. Buckingham Green
13. Ocean Man
14. She Wanted to Leave