これはどうにかしなければ…
そう思ったのは在宅介護が始まる前、約半年の期間母が病院に入院していたときだ。
当時私は1日の半分は病棟内で暮らしていた。
母が朝ごはんをどれくらい食べるか、薬をきちんと飲むかを見届け一旦家に帰り、
慌ただしく食事や入浴、洗濯などをして母がリハビリ室に行く4時ころまでは病院に戻る。
夕食は途中のコンビニで買った弁当で済ませ、
そのまま就寝時間になると売店でレンタルした折りたたみベッドを廊下から病室に運び入れ母の傍らで寝る。
付き添いが必要なほど衰弱していたわけでなくその逆だった。
入院以来一気に進んだ認知症で夜は不穏となり6人部屋で真夜中に大声をだす。
安静のためいろいろと処方された薬も効かなかった。
結局鎮静剤を打たれ翌日は夕刻まで食事もとれずぐったりとなっているのを見て
看護師の提案もあって母が不穏状態になったとき何とかなだめようと病室に泊まり込むようになった。
自分の朝食は買っておいた即席みそ汁と休憩室の自販機で買うカロリーメイトで済ませたりしていたが
母の検査があったり病院側との話し合いがあったりすると昼間も居ることも多く
しょっちょう病室や廊下をうろうろしていた。
母の病室のある病棟は地域包括ケア病棟…急性期の患者ではなく在宅生活復帰や施設入所の準備のため3カ月ほど居られる病棟だ。
廊下には覚束ない足取りで歩行器に掴まって歩行訓練をしている人もいる。
そうでなくとも危なっかしい足取りで歩いている高齢患者も多数いる。
当時の私はストレスの塊のような状態で多分全身から尖りまくったオーラが出ていた(と思う)。
憂鬱な考えごとに夢中になりながらせかせかと車いすを漕ぐ。
平坦な廊下などでは結構スピードも出る。直角に折れた廊下で出合い頭に看護師とぶつかりそうになったり、
はっと別の用事を思い出して戻ろうとバックしかけすぐ背後に人が居るのに気づいたり…
これは危ない! もし高齢の患者に接触して転倒させ骨折でもさせたら…
病棟という場所は、車いすの人当然は居るだろうが私のようにすいすい車いすで走れるものが日常的に居てはいけない場所なのだ。
自分で気をつけるのはもちろんだが、どうしてもついうっかり…ということがある。
それにそういう事故には至らなくても
危険性に気が付いた病院側から病棟の出入り差し止めを食らったら…
被害妄想力に富む私の中で次々とよからぬ想像が膨らむ。
それはいまから7年前だった。
最近自転車に対する安全義務や罰則が一段と強化されたが、
そのころ既に子供が自転車で他人に危害を与え親が高額の賠償を命じられたなどという例が
ときおりニュースで報じられていた。
車いすでも同じことだ。
せめてそういう時の保険はないものだろうか?と考えた。