「目を動かさないで! まだまっすぐ見えませんか!?」

 検査士の女性が次第にいらだってくるのが分かる。
 声のトーンがきつくなってきている。

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 先日、半年間隔になっている眼科の受診に行った。
 特に変化の自覚はない。

 「mokogawaさん、どうぞ」

 診察前の検査で最初に私を呼んだのは見るからに新人っぽい男の子(視能訓練士?)だった。
 この春にも入ったばかりだろうか。

 「変わったことはありませんか?」

 とお決まりの質問。特に変化はない…一昨年あたりに気づいた「線がぎざぎざに見える」こと以外は。
 この症状は既に申告済み。

 線や格子が歪んで見えるといえば、まず加齢性黄斑変性など網膜の異常だ。
 ただ既にOCT検査は何回か受け断層画像からは異常は指摘されなかった。

 線の歪みというか震えは相変わらずなので、医師の注意を再喚起という程度の心づもりで彼に再度申告。
 既にカルテには書いてあることなので前回来た時は言わなかったか「以前と同じく…」と添えて言ったかもしれない。

 歪みに関する事前検査は最初の1回だけだったが今回は視力検査の後、同じ歪み検査のカードの束を持ってきた。

 直線の真ん中の点を見つめたままで線が歪んで見えるか聞く。

 私「ぎざぎざに見えます」
 彼「そうですか、ではこれはまっすぐに見えますか?」

 今度は直線でなく間隔の狭い点の連なりだ。点のつながりは一列に綺麗に並んでいる…とも見えない。
 
 私「うーん、真っすぐには見えませんね」
 彼「見えませんね…ではこれでは?」

 だんだん点の間隔が広くなっているカードに変わっていく。

 検査の仕組みはネットで調べればすぐわかるのだろうが調べない。
 いちいち何事も細かく調べ上げて書いたりする私は
 ブログを書く時間がうんざりするほど長くなって我ながら嫌になるので。(笑)

 ただ検査の状況から
 ある程度の間隔のところで点の連なりが直線に見え始めるとそれで歪み度のレベルを判断する
 のだろうと想像はつく。

 次第に間隔を広げても、また狭い間隔に戻してもあまり変わらないような。
 いやそもそも最初の直線、確かに定規で引いたようなすっきりした線に見えないのには自信がある。

 しかし後の広かったり狭かったりする点の連なりは直線でないと言えるのかほぼ直線と言ってよいのか…
 検査を続けるうちに次第に分からなくなる。

 私「うーん、どれも同じに見えるような…よくわかりません」
 彼「よくわかりませんね…ちょっと待って下さい」

 しばらく待たされる。
 検査室の隅の方を見ると数人の女性検査士に囲まれて何やら話している。

 たぶん「僕には判断がつきません」とでも相談しているのだろう。
 案の定、つかつかとその中の一人の女性検査士が同じカードを抱えてやってきた。

 「目は中心の点を見つめたまま! 動かさないで下さい」

 たぶんそのあたりで新人検査士の指示が不徹底だと思っている様子。
 動かさないようしているつもりだがやはり点の間隔を広くしていってもここから直線…という箇所は無かった。

 そこで思い出す。
 最初にこの検査をしたとき、やはり同様で「これでは検査になりません」と言われたことを。

 結局そのときカルテにどう書いたのか知らないが同じ女性検査士だったのかもしれない。

 次第に彼女の不機嫌度が上がってくるのをもろに感じながら、沸点の低い私も内心ムカムカしてくる。

 機器で客観的な数値を得られる検査に対して、問診により間接的に数値を得るこういう検査法は何というのだろうか?

 こういう検査では患者の曖昧な、矛盾する回答でも
 まずそのまま受け止めてそのなかから正しい結果を引き出すことが大事だろう。

 その点では男の子の対応の方が、よほど患者の受け止めができている。

 たぶん数人いるスタッフの中でも女性はベテランの技能士なのだろう。
 下手に経験を積んで自信がついて患者の回答を「こうあるべきだ」という方向にもっていこうとしていないか?

 私の回答は確かに判断に困る回答かもしれないが
 "各間隔レベルの見え方に規則性なし"というのもひとつの検査結果では?

 「うーん、だいたいまっすぐかな…」

 既にかなり時間もかかり面倒になった私は適当なところでこう答えた。
 検査はそこですぐ終わった。


 あなたはこの仕事に向いてないネ!…と目の前で言ってあげたら
 どんなにスカッとするかと思う私はカスハラ予備軍か。(汗)

 プロの検査士なら「こうあるべきだ」という呪縛に
 私もからめとられているが…

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 結局、その日の断層写真でも前回との際立った変化は無かった。
 線の震え(歪み)は気のせいのレベルではなく片目で見ても左右確かにある。

 ただ網膜が浮き上がってきて全体が歪むとかとは違う感じだ。

 素人考えでは
 若いときは整然と並んでいた眼底の視細胞が加齢で並びにバラつきがでてきたのではないか?
 と思って医師に聞いてみたが反応は薄かった。

 とりあえず次回受診は半年先。


 ああ結局また無駄に長文になった… (汗)