「担当の人をたくさん抱えてるようで、朝から晩まで忙しく飛び回っているんですよ」
あれは次第に大きくなる救急車の音が突然止んで近所の人が何事かと道に出てきたときだったか。
私も外に出てみた。
同じ班の高齢の男性が体調不調で救急搬送されるところだった。
同じく覚束ない足取りで杖を突きながら出て来たNさんのお義母さんに「きょうはNさんは?」と聞いてみた。
在宅なら真っ先に飛びだしてきそうなものなので。
仕事をもっているのかボランティアに専念しているのか、とにかく日中はなかなか忙しそうだ。
「そういえば、Mさんどうしてらっしゃるんですかね?」
アンケートの質問項目にチェックを入れながら各種”老人クラブ活動”?への勧誘攻撃を繰り出してくるNさんだが
話題が我が家と目と鼻の先の、連休前後に退院して自宅に戻ったMさんのことに話が及んだ。
あれ?ほどなく施設に入ることは知らないのかな…
民生委員と言っても地区住民のすべてを把握しているわけではないのかとやや意外な気がした。
私よりかなり年上で、一人暮らし…しかも最近は転倒しては入院を繰り返しているMさんだがNさんの担当リストには入っていないのだろうか?
或いはMさんが自分の状態を近隣の人に知られるのが嫌なのかもしれない。
以前、母が病院に入院したとき廊下を療法士に付き添われ歩行訓練をしているのに出くわした。
「わあ、とうとう見つかっちゃった…」
とMさん。確かそのとき「(私がここに入っていることは)近所の人には言わないで下さい」と言われた覚えがある。
Nさんの各種サークル活動への「来てみませんか?」「出てみませんか!」の勧誘の嵐をしのごうと
「塀を低くしたので、最近は道を通る人たちと結構挨拶したりするんですよ…」
と言ってみる。
決して家の中に閉じこもって外部と関りを断った暮らしをしているわけではないとのアピールだ。
そうですね…とぐるりと庭先を見渡し玄関先が「広くもなりましたよね!」と。
塀を崩すとき塀際や玄関先の植栽も撤去してコンクリートを広げたので車1台分くらいのスペースができた。
「そうだ今度、ここで一緒にお茶でもしませんか!? Mさんを誘って(^_^)」
ちょ、ちょっとNさん…どうしてそっちに話が行く!?(汗)
「そうだそうだ、うん。いきなり来ても構いませんか!?(^_^)」
いやいやいや…
いきなりドアホンがピンポーンなんて、私が最も日常生活で苦手とするパターンだ。(滝汗)
曖昧な返事をしていると本当に来そうで、最近は出かけていることも多くて…などと必死で牽制する。
基本的に我儘な性格の私は他人にスケジュールを左右されるのが大嫌いなのだ。
それにMさんはほどなく入所してしまうのだし
私の感触的にはもしお茶会に誘ったとしても絶対に固辞するだろうという強い自信がある。
庭に置いてあるバケツの中でメダカの針子が泳いでいるのを見つけ自宅でも飼っているとNさん。
あまり増えなくなったのことで「増えたら下さい!」とあっというまに譲渡契約を成立させ乗って来た電動バイクのスイッチを入れる。
「今からまだ他も回るんですか?」
「そうなんですよ…もう忙しくて」
でも楽しいです…とにっこり笑って走り去るNさん。
奥の班に向かう坂道を上っていくバイクを見やりながら(いい人なんだが…)と心の中でつぶやく私。
Nさんから見ると
私は高齢で一人暮らしでおまけに車いすに乗っている障害者で
とても一人暮らしは覚束ない、常に見守りが必要な要支援者に見えるのだろう。
もう施設に入所していてもおかしくないというか…
実際同世代の障害をもつ知人の動静を伝え聞くと
施設に入ったらしいとか入院しているとかいう話もだんだん増えた。
Nさんならず近隣の人も(まだ施設には入らないのか?)と思ってみている人も多いかもしれない。
そろそろこちらに来ませんか?
そう「おいでおいで」をしている気がする施設を尻目に
いましばらくは抗いたい。
人生、もっといい目をみないと… (笑)
