明日のゴミ出しは資源ごみか…衣類の日だな

 汚れたりしていなければ衣類は資源ごみとして出せる。
 ただし肌着は新品でも燃えるゴミだが。

 タンスの中にはまだまだ母の衣類がかなりある。
 幾つか妹が自分で着ると持ち帰ったが、残りの大部分はそのままだ。

 いつも着ていた服は、スラックスにブラウス、袖無しなどを組み合わせて壁にでも下げおこうか。思い出のために…
 などと亡くなった当初は感傷に浸っていたものだが、2年近くたってもタンスにそのまま。

 もう思い切って処分してしまおう。
 自分の「終活」もあるのだから、とにかく家の中から少しでもモノを減らしておきたい。

 見慣れた衣類の数々。
 
 何度となく洗濯して、干して、天気や気温で組み合わせを考えて…
 多くは母がもともと持っていたものだが私が買い足したものも結構ある。

 スラックス類は、デイなどで入浴やトイレ介助のとき暴れるので一気に引き上げたりする。
 
 「すみません…ちょっと破れてしまって」と母を送り届けて来た介護士。

 縫い目が裂けてしまい、裁縫はできないので布用ボンドで貼り合わせたり、買い足したり。
 
 週5日デイに行かせると着替えや紙パンツ、尿取りパッド、タオル類や汚したときの予備などで持ち物は大きなバッグ一杯になる。
 前日に全て揃えるのは大変なので袋を3つ作ってローテーションを組み余裕を持たせていた。

 持ち帰ったものは翌朝までには乾かないのでその分余分に衣類が必要になる。


 そういったものを畳み直して積み重ね、ポリのロープで縛っていたのだが、

 あ…

 名札が付いたままだ!


 ショートやデイに行かせるとき、結構大変な作業がこの名札付けだ。
 下着も、外着も、バスタオルから洗面具から全てに名札を付けるように言われる。

 まあ一度つけてしまえば毎回必要な作業ではないが、前述のように3セット分用意するとなると数がハンパ無い。


 「そんな大層なことをしなくても…」

 デイのない日に週一で来てくれていた妹が顔をしかめる。
 衣類の首の後ろのネームタグや、裏側の洗濯表示のタグの部分に母の名のある布テープをアイロン付けしている私を見て。
 テープは名札付けなどに使うテープライター(ネームライター)で打ち出したものだ。

 睡眠時間もろくに取れない日々なのに、何を悠長なことをしているのか?
 そんなのはチャチャッと布用サインペンで書けばいいではないか? 介護の人に見栄を張っているのでは?

 …というニュアンスだった。まあ見栄と言われれば無いこともないが…

 ちなみに妹はこういうツールを使ったりするのが大の苦手で最初から敵視している感あり。

 私は以前から本格的な介護生活に入ったら名札付けはコレを使おうと決めていた。
 ずっと前に、姪の結婚式で初めて母を2日間ショートステイさせたとき、全部の持ち物に名前を書いてくれと言われて懲りたので。

 印字するのが手間といえば手間だが、手書きより読みやすいし小さく印刷すれば衣類のタグにさり気なくアイロンで圧着できる。
 ブランドものの高級衣類でも(もちろん母の持ち物にはないが)大きな手書き文字で服を台無しにすることもない。


 取れるかな?

 名札に気づいて取ろうとする。
 こういった資源ごみはどういう利用の仕方をされるのだろう。

 程度の良いものは中古衣類として販売もされるらしい。
 その場合はやはり名札がついていればまずいはずだ。

 そうでないものは小さく切られてウエスかな。
 たぶん我が家の資源ごみはみなそちらだろうが、やはり個人情報を付けたまま出すのは気持ち悪い。

 はぎ取ることにした。
 本来はアイロンで温め直せば取れるはずだがいちいち面倒だ。
 それでなくても手先が不自由で力もなくなっているので、工具箱から先の細くなっているラジオペンチを取り出す。
 
 このアイテムは日常でなかなか便利だ。
 僅かに1mmくらいめくれた端をつまんで力まかせにぐぃっ。ペリッ…

 タグ部分の布目は細かいから、わりと奇麗に剥がれる。これが手書きをしていたらこうはいかなかっただろう。

 勝った… (笑)