最近頻繁に病院を訪れている。手術やその術前検査や定期健診などで。

 母の生前は、2人で、あるいは妹と3人でやはりしょっちゅう病院を訪れていたが、
 そもそも母を連れて病院に行きはじめたのは20年、あるいは30年前くらいからだろうか。

 そのころは外来患者の多い基幹病院にしても公立病院にしても、車いすでやってくる外来患者は今ほど多くなかった。
 車いすを見かけるのはほとんど看護師に後ろを押されて院内を移動する入院患者。
 
 外来の車いす患者はあまり見なかった気がするのだが、今は多い。特に近年はすごく多い…

 昔は病人が少なかったというわけではないだろう。人口も今より多かったのだから。

 高齢化が進んで、昔より車いすに乗る人が増えた
 社会の福祉インフラが整い、バリアフリー化が進んで医療機関にアクセスしやすくなった

 …などだろうか。

 見ると、怪我で一時的に車いすに乗っていると思われる若い人や
 脳血管障害の後遺症と思われる人たちとともに、家族に付き添われた高齢の人も多い。

 その中で、リクライニング式の車いすに横たわってじっと動かない白髪のお婆さん。、
 あるいはヘッドレストでやっと首を支えられながらぐったりした様に座ったままのお婆さん。


 母だ。

 亡くなる直前、一気に衰弱したころの母の姿だ。

 一瞬ぎゅっと胸を掴まれる気持ち。

 お婆さん、長生き…長生きして下さいね。いつまでも…

 心の中で思わずつぶやいてしまう。

 そのあとすぐに、
 他人のこの勝手な願いは、疲れた顔で付き添う家族の人にはどうなんだろう

 との思いが寄せて返す。