プレハブの物置を開けるともう使わないガラクタがごっそり。
 捨てるものは引っ張り出しておかないといけない。

 ブロック塀の工事で瓦礫撤去と併せて粗大ごみ的なものを処分してもらうことに。
 自治体の収集する45Lのゴミ袋に入りきらないものなど、大きかったり長尺物など手に余るものはため込んでいるので。
 小さくても重くて運べないものもそうだ。

 まとめて車のトランクに積み込んで自分で処分場に運ぶという手もあるが、積み下ろしが大変だ。

 古い車いすの取り外した車輪などに混じって足のついた30cm角くらいの板があった。 

 ああ、これは…

 母を連れて歯医者や美容院などに通う時使っていた自作の「段差解消台」だ。


 入院を機に車いす生活になるまで、母は歩行車を押しながら何とか歩けていた。
 膝関節症は末期まで進み骨盤は大きく傾いてひどいO脚になってはいたが。

 広いスーパーや大病院内での移動は次第に難しくなり備え付けの車いすを借りるようにはなったが、美容院や歯医者の中くらいは大丈夫だった。

 しかし入口に段差がある

 そんなに高い段差ではないが、既に歩行はすり足になっていた母にはあと2cm、あと1cmほどなのに足があがらない。
 足が上がりさえすれば、まだ踏み上がる力はあるのだが。

 なにか手立てはないものか…

 ホームセンターで樹脂でできた小さなスロープは売っている。
 道路から歩道をまたいで車庫に車を入れるときの段差解消とか、引き戸の玄関土間の中にバイクや自転車をしまうとき、敷居の段差解消に使ったりするのだろう。

 そう長くはないから傾斜は急だ。
 長くしたら大きくなりかさばってとてもトランクに入れて運べない。

 介護用品でアルミ製の持ち運びに便利なものもありそうだが値段がたぶんバカ高い。
 だいいち、膝が柔軟に曲がらない足で歩くにはスロープよりは低い段差のほうがまだマシだろうと思える。

 ということで作ったのがコレ…


 作ったと言っても、鋸はあるものの木片ひとつ満足に引けない。
 3、4回往復したら鋸身は板にはまって行くも戻るもできなくなる。
 
 根性が曲がっているから鋸身もひいているうちに曲がってしまう。(笑)

 ホームセンターでは板を1回10円かそこらでカットしてくれる。
 2cm厚、30cm程度の板を買って30cmの長さにカットしてもらう。

 3cm角の角材を買って、30cmの長さにカットしてもらう。
 裏側の両端に両面テープで貼る。
 たぶんそのままでもいいと思うが、斜めに力がかかり足が外れるのを防ぐため木ねじで止める。

 金槌も釘もあるのだが、やはり素人にはまともに打ち込めない。
 たいてい斜めに打ち込んだり釘の頭を打つより板を打つ方が多かったり…時に指。(怖い)

 「下駄を履かせる」という言葉があるが出来上がったのはまさに下駄だ。
 なお、足の部分は必ず板の端にあわせ(板の端っこを踏むことを考え)体重で真ん中が折れることも考えて念のため斜めにもう1本補強を追加。

 これを2つ作って車のトランクの隅に載せておいた。
 これくらいだと歩行車と一緒に積んでもそんなに邪魔にはならない。

 軽くはないが重くもない。箸より重いものを持ったことの無い私でも難なく取り出せる。(笑)
 あまり軽いと踏むとき動いたりして危ない。ほどよい重さも要る。


 うん、使える使える…

 あと僅かのところでつま先が段の側面に当たって悪戦苦闘していた母だが、今度は苦労せず上がれた。

 2つ作ったのは段差が大きいところで5cmの下駄で足らなければ、重ねて使うためだ。
 もう1つは少し低いほうが、A単独、B単独、A+Bと高さのバリエーションが可能だ。

 足にした角材の裏にはゴムバンドを貼った。トラックの荷台に乗せた荷物を縛って固定したりする板状のゴムロープ。
 重ねたとき滑って外れるのを防止するため。

 どれくらい活躍しただろうか…
 1年くらい経ってからか入院となり車いすとなってお役御免となった。

 これはもう要らないかな。
 私はもともと車いすだから使わないし、妹に使わせるのはまだまだ先のことだ。(そうあって欲しい)

 ということで処分品の仲間入りをした。