「今日の3時はどうですか?」

 意外だった。
 まさか今日、診てくれるとは…


 昨夕にかなり傷んでいた歯が折れて今朝、診察の予約を入れた。
 早くても一週間か10日くらい先だろうと思っていたので。

 「根っこは抜くしかないですね」

 医師に言われて「はい…」きてと小さく答える。
 で、抜いてくれるのかと思いきや抜けた痕に応急的にフタをしてくれただけ。
 所用時間、5分くらいか。

 「これってよく外れるんですよね。外れても痛みとかなければ、そのままでいいですから」

 と歯科助手?の女性。

 歯が取れたときからその時まで別に痛みは無かった。
 診察室から出て、抜歯の日の予約を取って帰る。

 とれても特に支障のないフタ(詰め物?)なら、
 今日わざわざ来なくても、電話で抜歯の日の予約を取っても良かったのでは…
 などと思いながら家路に。

 「急に痛くなったりしたら、隙間時間に診ますから来てみて下さい。待つようにはなりますが」

 以前の医院ではそう言われていた。
 この医院では「それはできません。必ず予約をとって下さい」

 …そう言われていたが、ここも隙間時間に私の診療時間を押しこんだのだろう。


 ところで、今日も診察室に呼ばれたのは電話で告げられた3時きっちり。
 他の日も同様で、いつも診察室に入るのは予約時間きっちりだ。

 これは、車いすで入れるトイレがないため止むなく行かなくなった以前の歯科医院でも同様だった。


 総合病院などではこうはいかない。

 「*時の予約で来たのに、どうしてこんな時間でまだ呼ばれないんだ!?」

 いらいらした様子で看護師を困らせている人をまれに見る。
 大抵、年配の男性。

 (オトウサン、病院の予約時間なんてこんなもんですよ…)

 既に悟りの境地に達している私は、待合室でやや憐憫のこもった冷たい視線を向けながら心の中でつぶやく。
 …かつての自分の姿は棚にあげて。(笑)

 「**先生の診察、現在*時*予約の患者さんです」

 待合室のディスプレイに出るのは結構人気のある眼科だ。
 午前予約の患者の診察が午後になっていることはザラ。

 「**先生 現在60分遅れです」

 これは公立病院の整形外科の待合室ディスプレイ。

 60分は、そのうち90分になったりする。

 歯医者はどうして予約時間に正確に診れるのだろうか?

 たぶん、確保した時間内での治療にとどめているからだろう。
 だから患者は、場合によっては細切れの治療を受けるため何度も通わなくてはならない。

 歯が1本、2本抜けたからといって死ぬ人は居ないし。たぶん…

 それに昔読んだ本によると、歯科診療で感じる疑問の多くは歯科の診療報酬制度によるところが多いとか。
 30年くらい前なので現在もそうかは分からないが…

 医者が、時間をとって1度に治してあげたくとも、そんなことをしていたら経営が成り立たないとか。
 こうなると個々の医院の問題ではなく政治の問題といえるかも。


 でも…と、ふと考えた。

 何度も通わなくてはいけないが、時間がきっちり決まっているやり方は、例えば都会の人には向いているのかな?

 仕事で、あるいは習い事や買い物などでしょっちゅう外出している人は、交通の便もいいし、通院することに余り抵抗がない?
 仕事帰りとか買い物ついでに寄ればいいだけだから、回数よりも時間がきっちり決まっていて正確な方がいい。

 一方、地方の交通の便が悪いところの高齢者とかだったら、病院にたどり着くまでが大仕事だ。
 もうその日は、長い時間待たされてほぼ一日仕事になってもいいから、なるべく1回か2回で済ませて欲しいとか。

 そう考えると1回、2回では終わらない歯科受診もそのシステムがなんとなく理解できるような…いや、やはり理解できないような。

 今年も何回かの通院を前にして、次第に歯科受診にもサトリを開きかけている? (汗)