「左足は正常範囲、右足は(詰まる)ぎりぎりあたり」
10年以上前に心臓を検査してもらった基幹病院の循環器内科。
そこで母の足の血管の詰まり具合を測定してもらった結果だ。
後日、骨粗鬆症で定期的に治療を受けていた公立病院(母が転倒で入院した病院)の整形外科で同じ検査をしてもらった。
やはり同じ結果だった。
不思議なのは血管閉塞の境界あたりという数値が出たにもかかわらず、ではこれこれの治療をしましょうという積極的な提案が無かったことだ。
循環器内科にしても、公立病院の整形外科にしても。
「どうしたらいいですか?」
という私の問いに、最初に検査した循環器内科の医師は、
「うーん、ダンセイストッキングとかいいですね」
男性用ストッキング??? ああ、「弾性…」か。
着圧ソックスともいうらしいが、当時はよく知らなかった。
「ただ、これは着脱がなかなか大変ですが…」
こう言われたのは循環器科だったろうか、それとも整形外科でだったろうか。
結局、定期的に受診をしていた整形外科の方で足首やふくらはぎのサイズを測って処方してもらった。
金額は全額自己負担のようで両足分で3000円くらい。
治療ではなく予防だからだろうか。
で…
確かにキツさがハンパない。母の足に合わせたサイズにもかかわらず。
足先から膝の方に向けてぎゅっと静脈血を押し上げていくためのものだろうから、
楽に穿けるくらいでは意味がないのだ。
診察室で母に穿かせた看護師は両手で力一杯広げながら履かせていた。
買ったものの私にできるだろうか? 母は自分ではできない。
これは母が入院する前、認知症もまだ顕著になっていなかったころだと思う。
その定期受診でストッキングを購入、装着して帰り夕方ごろだったろうか、締め付けて痛いというので脱がせた。
脱がせるのは普通に上から、バナナの皮を剥くように裏返しながら引き下ろせばいいので
片手が役に立たない私でもまあなんとかできた。
翌朝…いつも起きたときに浮腫んでいる足がさほど浮腫んでいない。
おお、効果があるじゃないか!
と思ったのだが、あまり効果が実感できない日もあったり、強く締め付けるので母が嫌がったり、
私も穿かせるのに相当手こずったりで、そのうち疎かになってしまった。
このストッキング…医療用の本格的なものは誰も着脱に苦労するようだ。
ネットで調べると、まずかかとから上を裏返しにしてかかとまでを履かせ、次に裏返っているひざ下までの部分を引き上げるというやり方が見つかった。
https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/20160418-3.pdf
この方法だと確かにソックス部分はぴたりと足にフィットするが、かかとに穿かせるまでが折り返しで2重になっているから穿き口を広げるのに固さが2倍だ。
私にはなかなか難しい。
着脱に使う専用の器具もあるが価格がバカ高い。
その中でセルロイドの下敷きを使って着脱ツールを自作した…というサイトがあった。
まず下敷きで筒状の枠を作っておいて、それに靴下を穿かせる。
そこに足を挿しこんだあと、下敷きを引き抜く…とこんな理屈だったように思う。
(そのサイトは保存してあるはずだが、いまちょっと見つけられない)
これは自分にも使えそうだ…と思って、早速厚手のセルの下敷きを買ってはきたのだが、
そのうちに…と思いながらとうとう作ることはなかった。
その後、転倒で入院し下肢に血栓ができてそれが肺に飛んで死にかけたわけだが、
その後も再発予防のためか病室での足の包帯は続き、ストッキングを持っていたのでそれに変わって、終日装着していることになった。
そして退院するときもこのストッキング装着は続けるように言われた。
「知り合いに看護師が居るので(着脱の仕方を)教えてもらいました」
こう言ったのは訪問介護ヘルパーのチーフの佐藤(仮名)さん。
入浴介助を頼んでいたので、浴後にストッキングを穿かせてもらうことにしたのだ。
訪問介護が来ない日はデイのある日で、その日はデイでの入浴後に穿かせてもらうことにした。
妹が来る曜日を除き、そのころ母は週に6日、デイか訪問介護でお風呂に入っていた。
「いつまでストッキング着用を続けたらいいんでしょうか?」
退院して2カ月くらいだったか病院に問い合わせたことがある。
血栓の再発防止としてはもう相当期間過ぎたので大丈夫ではないかと思ったのだ。
看護師を通しての回答だったが、ずっと続けた方がいいようなニュアンスだった。
入院中は昼も夜も着用していたが、夜は外すようにと書いてある説明書も見た。
この手のストッキングは、正しい製品を全く正しく使わないと逆に血流を阻害して逆効果になってしまう。
自分でしないくせにケチばかりつけるが、ヘルパーの穿かせ方もデイでの着用も、時にズレ下がっていたり皺がよっていたり、間違えて血流モニター用の穴から指が出ていたり…完璧には程遠いことが多々あった。
だから夜は自分の勝手な判断で、脱がせて寝させていた。
在宅介護が始まって母は車いすに乗るようにはなっていたが、
初期は寝たきりというわけではなく車いすは足こぎしたり、まだ歩けるつもりで窓枠に手を置いていきなり立ち上がったり、
不穏時には怒って暴れ、職員を足蹴に(!)したり…
血栓防止としてはそんなにストッキング着用にこだわらなくてもいいように感じていたのだ。
そしてもう一つの…というか、もともとの「むくみ」対策としてだが、
なんと綺麗さっぱり、浮腫みはなくなっていた。