厚手の掛け布団がコインランドリーで洗えるか?
初めてする作業は、まずネットで下調べができるという便利な時代。
もっともコインランドリーは若いころ、しょっちゅう利用していた。
ただその頃は縦型の洗濯機にコイン投入口がついたもの。
今のようにドラム式が主流の店は使い方が違うかもしれない。
ネットでは有難いことに動画まで出回っている。しかも何本も。
ちょうど洗いたいものと同じような布団を洗っている動画があった。
そこで使っていた洗濯機には16kgの表示。大体の目安が分かる。
ちなみに「こうして乾燥までしっかりできます!」という動画は、たいてい店の店員とかオーナーの作成。
「やはりお勧めできません」という動画は布団店かクリーニング店陣営だろうか。
3つ、4つ倍速視聴してみた。まあ何とかイケるだろう。
さてまず直面する「家からのかさばる布団の持ち出し」の問題…
お誂え向きだと思った布団購入時のバッグは捨ててしまっていたが、押し入れから出した布団は圧縮袋に入っている。
このまま持っていこう。問題は洗濯の後、乾燥して膨らんだ布団を再び店内で汚さずにうまく詰め込めるか?
まあ何とかなるだろう
しつこいくらいあれこれ想定して準備に血道になるくせに、最後は疲れ果ててしまって適当な選択をするこのいい加減さ…
まず試してみようと思っている「あまり人に見られない店」は自宅からわりと近くにある。
誰もが「今日は布団でも外に干そうかな」と思うような天気のいい日に出かける。店は空いているはずだ。
車への積み込みは簡単だった。
圧縮して更に畳めるタイプの圧縮袋だったので買い物かごに入れることができる。
ただし店にはもちろん再圧縮のための掃除機は置いてないが…
私の車いすはオプションで前部に折りたたんで収納できる2本のフォークが付いている。
これがすごく便利で、買い物かごを乗せたりちょっとした大きさの箱でも車いすを両手でこぎながら運べる。
ゴミ出しも買い物かごを乗せて中にゴミ袋を積んで運んでいる。
プレハブのコインランドリー店は地面より高いが入口にセメントのスロープがあった。
ただしドアの敷居との間に10cm程度の段差…
TVだったか「残念な○○」というシリーズの番組があったが、さしづめ「残念なバリアフリー」の一例か。
いやもともとバリアフリーを意図したスロープではないのかもしれない。
昔だったらこれくらいは問題のない段差だが、衰えた今ではやっとの思いで越えることができた。
撤退したショッピングセンター前の空き地にあるコインランドリー店。
空き地の一部にはロープが張られ、店の横にはクリーニング取次のプレハブの店があるくらい。
ほとんど人は寄り付かないが、店の前に着いたとき黒い服の女性が出て行くところだった。
店内では洗濯ものの入ったドラムが回っていた。ちらりほらりとでも利用する人は居るようだ。
18kgの洗濯ドラムがあったが中に衣類が入ったまま止まっていた。他は14kgと8kg。
しばらく待っていたが誰も取り出しに来ないので仕方なく14kg用に入れる。動画の例より小さいが何とかなるだろう。
700円で30分。
持ってきた本を見ながら洗いあがりを待つ。
若いころ頻繁に通っていた大衆食堂やコインランドリーには、店の片隅のカラーボックスにごっそり週刊誌や漫画本が置いてあった。
ページをめくり、ラーメンの汁を散らしながら読みふけるのが楽しみだったのに…としばし若き日の昭和の郷愁にひたる。
ふと気が付くと壁の上の方に4面に仕切られたモニターがあり、2面に私の前後の画像が映し出されている。
まあ防犯上当然だろう。
これ見よがしのカメラにとどまらず、映された画像まで見せておけば、イタズラや窃盗などの犯罪抑止効果は更に高まる。
それはいいのだが…
私のこの姿は、どこかでチェックしている店の管理者のみならず、
日本中の、いや世界中のどこかから誰とも知らない人物にいま現在、盗み見られているのだろうなあ。
こういう監視カメラのかなりの数は、ろくにパスワードもかかってなくてネットの上では覗き放題という。
そうこうしている間に洗濯機が止まった。
はたして奇麗に洗えているか疑問だが、洗わないよりはマシだろう。
なお布団はカバーをかけたままだったが、どうせカバーも洗うのでそのまま洗う。
ファスナーを開けて裏からヒモを外すのが面倒だったこともあるが、古い布団なのでどこか裂けてドラムの中が羽毛まみれになる…というのを防ぐためもあった。
カバーを外して洗わないと綺麗に洗えないことがあります…と関連サイトに書いてあったが無視。
両極端は近接するという法則があるらしいから、過度な神経質さと呆れるいい加減は結局手をつなぐのだろう。
この店の洗濯機、乾燥機はだいたいコイン投入口に手が届く。
大型の乾燥機だけ車いすでは手の届かない位置だ。
[ 羽毛布団の場合は大型乾燥機を使って下さい ]
そう表示が掲げられていたがとりあえず、小さい方のドラム乾燥機に放り込む。
濡れて縮こまっているから洗濯機から乾燥機への入れ替えは楽だ。
小さい乾燥機でも[このラインまで]と引かれたラインの下に、洗濯ものは収まっている。
ちょっと乾燥機の前を離れ、戻って投入口に100円玉を押し込む。
100円で10分か…何枚要るかな? 1つ、2つ…
動く方の右手も近年は硬貨をつまむという動作が次第に不自由になってきた。
たどたどしく押し込みながら、なんとなく違和感…あ!
隣り合った洗濯機の方の投入口に入れているではないか…いつもながら迂闊な私。
返却ボタンを…と探したがボタンの代りに表示があった。
[ 投入された硬貨は戻りません ]
・・・・・・・・・・。
授業料…ということにしよう…
失った200円の不幸を嘆くより、いきなり500円玉を入れなかった幸福を喜ぼう…
なんとか立ち直ろうとする私でした。