「あは、見つかった。またやった…」
台所に行くと、母が必死で鍋を洗っていた。
私を見て照れくさそうに笑う。
鍋の内側は焦げ付いて真っ黒だった。
母はかなり遅くまで現役主婦でいてくれた。
朝が辛そうなので朝食は私が作るようになり、やがて全部私がするようになったのだが、料理ができていた時期も終わりごろはたびたび鍋を焦がすようになった。
介護認定で要支援や要介護1くらいのときでも
□ 鍋を焦がすことがときどきある
の項目は常にチェックを入れていた。
そのころから認知症は少しずつ進んでいたのだろう。
危ないのでガスコンロは高価になるがSiセンサー付きのものにした。
これで安心…というわけにはいかないが、気休めにはなる。
IH調理器ということも考えたが、長年ガスコンロを使い続けているので使いこなせないだろうと思った。
万一の停電に備えて、ガスという手段も確保しておきたかった。
冬に災害で数日停電してもガス(プロパンだ)があれば湯を沸かして湯たんぽが使える。
使いこなせないといえば、母の調理の負担を減らそうとよく即席品、時短調理品を買うことが多かった。
マーボー豆腐なら豆腐を炒めて調味タレを絡めればいい。
ところが、時には目先を変えて…と同じようなシリーズ、例えばマーボー茄子を買うとなぜか目に見えて不機嫌だった。
「(説明を)読むのが面倒くさい」
母はそういうが、説明も何も同じように炒めてタレとからめるだけなのに…
これも、今にして思えば認知症の初期状態だったのかも。
もうひとつ台所で困ったこと。
洗面所でもそうだが、蛇口をひねると閉めるのを忘れて離れる。
しかも耳が遠いから流しっぱなしに本人はなかなか気づかない。
水道代を見て仰天することが何度か重なった。
何かいい工夫はないか…何かあるはずだ。
自動水栓にすればいい。多目的トイレや病院などにはよく設置してある。
しかし目にするこれらの製品は、近くに制御ボックスのようなものがあり製品自体も仰々しい。
メーカー品だと本体に安くても10万前後はかかるだろう。
我が家に設置するとなると配線工事も必要だ。
蛇口 流しっぱなし 防止
こんなキーワードを使ったと思うが、ネットで調べていくうちにお誂え向きのツールが見つかった。
ネットで丹念に探していくと「店頭で(自分は)見たことはないが、こんな品物があればいいな」というものはほとんど見つかる。
ただしそれが実用的、実際に役に立つかどうかは別問題だが。
IDEXという会社の「水ぴた」
電源は乾電池で配線不要。
自分で既存の蛇口の先に取り付けられる。(ただし適合しない蛇口もある)
センサーがあって手を下に置くと水が出る。切替ボタンで流しっぱなしにもできる。
当時、amazonで7000円あまりだった。1万円以下で設置できるのは魅力だ。
台所につけてみる。
手洗いは別として、鍋に水を入れるなどはコツが必要だ。
センサーの感知するところに柄とか手とか何かを持っていかねば水が出ない。
流しっぱなしモードにすればいいのだが慣れていないと切り替えに戸惑う。
我が家に来た時に台所に立つ妹にはかなりのストレスだったようだ。
というか、これに限らず妹は面倒くさいことは妙に嫌がるようになったなあ。もしかして…
とあらぬ心配をする私だが、毎日使って慣れないと自分でも戸惑うかも。
買ったのは9年前だった。
その時はその製品しか見つけられなかったのだが、改めて検索してみると今は同じく乾電池式の自動水栓がたくさん出回っている。
もしかしたらコロナ渦が影響しているのかもしれない。
ただメーカー品は相変わらず高い。
TOTOのサイトなどではものにもよるが5~6万円するようだ。センサーの感度とか位置とか、いろいろ違いがあるのかもしれない。
私が買った製品は、後日母が在宅介護の状態になったとき業者にもらった福祉用具のカタログに載っていた。
同じ製品はもうなく後継機が出ているがamazonでの価格は1万円を超えていた。
せっかく取り付けた自動水栓だが、その後ほどなく台所に立つのは主に私になったので効果のほどはそんなに実感できていない。
そのうちパッキンが痛んだのか漏れるようになり一旦、外した。。
パッキンは取り寄せたのだが面倒でそのままだ。
どうしても取り付けが必要になるときが、あまり早く来ませんように… (笑)