検査から10日後、母をデイサービスに送り出して診断結果を聞きに病院に行った。

 ほとんど女性ばかりの産婦人科の待合室。
 待っているのは居心地が悪くなるべく廊下側にいた。

 一人の男性が診察室に入っていくのが見えた。
 若い人ではなかったから、その人も奥さんか母親に代わって相談に来たのだろうか。


 やがて呼ばれ、診察室で医師から渡された細胞診の検査結果には「陰性」と書かれてあった。
 意外だった。
 その紙の余白に医師が見慣れぬ用語を書いた。

 尿道カルンケル

 初めて見る病名だったが尿道口付近にできるポリープらしい。傷つくと出血するという。
 
 内診のとき少し腫れているところがあったし、これでしょう。
 今後は症状(出血)が出たら泌尿器科へ行くように。

 そう言って医師は説明を終えた。特に治療は必要ないらしい。
 診察時に行った血液検査も若干の貧血気味ではあったが問題のあるほどではないと。


 最悪の事態を予想していた私は、ほっとすると同時に拍子抜けした気分でもあった。
 そして思った。

 (医師の判断は)本当かなあ…


 なんでもすぐ悪い方へ、悪い方へと考えるのが私。
 自分自身には「いつも最悪のことを考え備えるのがリスク管理だ」と言い訳をしているが、要するに医療不信、他人不信が根にある。

 私の心配性に付き合わされ振り回される妹は堪ったものではないだろう。

 妹自身が言っていたが、病院で検査などしても詳細な結果を聞くことはない。
 先生が特になにも言わなければ(しめしめ)と帰ると。
 気になるところがあれば先生だから言ってくれるだろう…うかつなことを聞いて藪蛇になっても嫌だ。
 …というのが妹の考えらしい。

 だから糖尿病もこじらせて重度になったんだ…と私は内心思っている。

 私はといえば、

 医者は患者本人ほどには患者の身体に関心がない

 と思っている。
 医者がいい加減…というのでなく、忙しすぎるのだ。

 検査結果が出たらまずじっくりと眺める、カルテに過去データがあれば比較して推移を吟味。
 患者を診察室に呼び入れたら、とめどない訴えの中からピンと神経を張り巡らせキーワードをキャッチ。
 そして的確な診断を下す…

 「先生」と尊敬される医師の仕事にそういう姿勢を期待したいのはやまやま。
 だが、長年母を連れて、あるいは自分の病気であちこちの病院通いを続けていた「患者のプロ」?としてはついつい見方が辛らつになる。

 診察室に呼び入れ初めて検査結果の表に目を走らせる。
 その時間、僅か数秒。
 とても全部は見ていないだろう…基準を外れたHまたはLのところの数値だけチラ見だろう。
 「どうしました?」と患者に聞くが、既に心の中では診断は幾つかある手持ちパターンのどれかに押し込んである。
 その類型と患者の話していることの中に特に大きな矛盾がなければそのまま診断確定。
 「それと…」と患者が続けて重大な(かもしれない)ことを話そうとするが、もう目はパソコンに向かい次回予約のカレンダーをスクロールしている…

 とまあ、なんとも意地悪な偏見だらけの私の認識だが、てきぱきと診察が進む病院の多くはこんな感じだった。
 そうでもしなければ、廊下にまであふれる診察待ちの患者はこなせないだろう。

 骨粗鬆症で通っていた整形の医師は、わりとじっくり話を聞いてくれたほうだ。
 そしてこの先生の待ち時間を示す待合室の電光掲示板にはいつも、
 「90分遅れ」「120分遅れ」などの表示がザラだった…

 もちろん診療にかかる時間だけで判断はできない。
 経験を重ねたベテラン医師なら、
 検査結果の一瞥でも、僅かな患者とのやりとりの中でも的確に問題点を見つけ出す
 ということもあるだろう。そういう医師は多くはないとは思うが。

 それにしても私は心が曲がっている。心配性がひどい。

 「とくに異常ありませんよ」

 がん検診でひっかかり精密検査でそう言われても、検査した医師が若い、あるいは検査室入口の担当医師一覧の一番下に書かれている(あいうえお順ではない)場合は、ほっとすると同時に

 (ちゃんと見たのか…)
 (見落しではないのか…)

 などと思ってしまうくらいだ。
 説明がどうも通り一遍だったり、なんとなく不調の感覚が残っている場合のことだが。


 今回の母の診察結果も、ほっとすると同時にいまひとつすっきりしない部分があった。

 次は泌尿器科へと言われたが、慢性的に繰り返す膀胱炎があり何年も定期的にこの総合病院の泌尿器科で尿の検査をしている。
 その尿道カルなんとやらで傷があったなら、とっくに尿検査に強い鮮血反応が出ていてもいいのでは?

 それに最初にエコーで見えた変性部分というのは結局何だったのだろう?
 内診中大暴れもしたらしいし、採取すべき部分の細胞が正しく採れてなかったということは?

 などなど疑えばきりがない。
 我ながら救われない性分ではある。

 とはいえ、ここはとにかくひとまずほっとするところだ。
 何はともあれ良かった良かった…


 ところがこの約一週間後に、この病院に救急搬送される事態が起きた。


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 思い出して書いているうちに、記憶に不確かな部分があって過去の記録を調べたり
 介護に直接関係ないが書きたかったテーマに話がいったりとだら続けています。

 1回分書くのに時間がすごくかかるので、ついつい分けて書いていますがよければいましばらくお付き合いください。

 ブログも始めて1年以上経って、以前に書いた同じことをまた書いているかも…