「ど、どうした!?」
ふと振りむくと妹が母のベッドに座り込んで肩で息をしている。
そんな姿を初めて見た私は驚いた。
大丈夫、こんなことはよくある…まだ喘ぎながら妹が言う。
まだ母が不穏でよく暴れていたころのことだ。
亡くなる前の1年弱ほどの期間は、デイサービスに行っている間の心配といえば
ご飯を少しでも食べてくれたか
身体の傷はひどくなっていないか、新しくできていないか
一日じゅうぐったりしてるのか、少しは動きや発語はあるか
…などだったが、それ以前にはデイから帰って連絡帳を見るときの恐怖?は、
また今日もデイで入浴拒否、介助拒否で大暴れしたのではないか!?
…だった。
不穏がひどいと施設からそれとなく苦情が出始める。
実際に数回通って利用を断られたデイサービス事業所もあった。
1年前くらいに利用を始めたショートステイの「長生園」では、数日間の泊りを終えて玄関まで送り届けたとき相談員が
「お元気ですねー!!」
と驚いていた。
あちこちのデイで「今日は…お元気でした」と言われたら、それはかなり手こずらせたということだ。
奇声
車いすを手足でこいで施設内を自走…爆走か?
介助拒否…特に入浴時、暴れる
足蹴り、噛みつき、ツバ吐き、爪立て…
「痛っ、痛い!!」
家族の前では自制しているはずが、思わず悲鳴をあげる介護職員。
朝のデイからの出迎えの時の抵抗も激しい。
母としては何をされるかわからず死に物狂いだったのだろう。
私や妹も腕をわしづかみされたが、これが百歳間近の老女か?と思うほど握力が強い。
それで爪が伸びていたら最悪だ。
施設でも隙を見て?切ってはくれるようだが、妹が来た日に二人で母の爪を切ろうと思った。
一人では到底無理だ。
妹が車いすに座った母の片手と身体を必死で押さえ、私が爪切りで伸びすぎて危険な爪をなんとか切った。
やれやれ…とほっとして振り向くと、妹は背後の母のベッドにへたりこんでいたのだ。
これでは妹が母を看るのは確かに無理だな…
「私にはできない」と以前に言われていたが、その理由の一つがそのとき実感として分かった。