朝、母の朝食(といっても今では幾つかの飲み物とゼリーくらいだが)の支度にとりかかりながらTVをつけると英国女王が亡くなったとのニュース。

 え?
 確か3日前にトラス新首相の任命に臨むにこやかな笑顔を見たばかり。

 最近、体調が悪いと伝えられてはいた。
 だから異例の静養先での任命式だと。

 それにしてもこんなに急に亡くなるとは。
 これは「びんぴんコロリ」に類する逝き方なのだろうか。
 安らかな最期だったと報道では伝えている。

 昭和天皇の時は…
 体調不調で、今日はどれくらいの下血があったなどと報道で毎日伝えられていた。
 亡くなるかなり前からもう意識も無かったのではないかと思ってニュースを見ていた。


 近ごろ「看取り」を意識して亡くなる前の身体の状態をいろいろ調べていたせいか…
 人は結局「死」という最後の大仕事を終えるには苦しんで…言い換えれば膨大な気力(意識のあるなしにかかわらず)、体力をふり絞ってやっと彼岸に行けるのだなぁ…
 そんなふうに思えていた。
 眠るように逝くとか、あっけなくぽっくり逝くとか…それは幻想だと。

 でも女王のような「逝き方」もあるのだ。
 実際には時には国民に見せられないような悲惨な時間もあって伏せられていたのかもしれない。
 でも3日前にはああして、曲がりなりにも公務をこなしていたのだし…。


 母は強い生命力を持っていると思う。
 でなければこの歳まで生きながらえていられない。

 最後は自然に逝かせよう…

 私はそう思ってはいるものの、いざとなったら現実を認めたくなくて取り乱すかもしれない。
 私はよく埼玉の立てこもり犯のことを思い浮かべる。
 彼は母親の死というものを最後まで受け入れることができなかったのではないか。

 そして私以上に…

 強い生命力を持った母自身が、いちばん死に対して抗うのではないか?
 死神が枕もとに来ても必死で抵抗し、ねじ伏せようとする…

 母の最期は…
 大きな息をつき汗だくになり、呻きながら死神と取っ組み合いをして最後に力尽きる。
 私はそれを見ているしかないような気もする。

 昨夜は静かだったが、夜に頻繁にある「呻き」は前哨戦なのかもしれない。