Watain :: The Wild Hunt
Watain
The Wild Hunt
Century Media, 2013
8.0- 1. Night Vision
- 2. De Profundis
- 3. Black Flames March
- 4. All That May Bleed
- 5. The Child Must Die
- 6. They Rode On
- 7. Sleepless Evil
- 8. The Wild Hunt
- 9. Outlaw
- 10. Ignem Veni Mittere
- 11. Holocaust Dawn
"ブラック・メタルとはなんぞや?"とは、聞き手のファンはもちろん、世間への送り主であるバンドのメンバー個人間でも異なる答えを有する、過分に複雑な反応を引き起こすこの上もなくシンプルな問いであろう。「悪魔主義の音楽的体現」とは一つの安易な回答ではあるが、そも「音楽的体現」というのがまた多様な解釈の余地を残す表現だ。
最も優勢な回答は初期のノルウェイ勢に顕著だった、いわゆる"プリミティブ・ブラック"がそれではあろうが、しかしシーンが活気づくにつれ、Dissectionに代表される明快なギターリフを主軸にした"メロディック・ブラック"や、Dimmu Borgirらによって牽引される"シンフォニック・ブラック"等、"ブラック・メタル"という範疇で語られる音像が多様化して来たのも事実である。
だが「範疇」という言葉で括るのであれば、当然「埒外」に配置される存在も発生するのが必然であり、その産出経緯は得てして"もう連中はブラック・メタルではなくなった"といった類いのバンドの音楽的、思想的に対する失望を伴うものだ。特にブラック・メタルのような、所謂"コア"な位置に存するシーンの中では、「聞きやすくなること」自体がシーンへの裏切りと捉えられることも少なくない。
そこで今作であるが、これまで比較的手堅くブラック・メタル然としたイメージを貫き続けて来たこのスウェーデンの3人組の新譜は、ノーマルVoで紡がれる叙事詩"They Rode On"、"The Wild Hunt"に代表されるように、脊髄反射的に考えれば"ブラック・メタルではなくなった"と言われても不思議はない、表情の豊かさを見せている。
しかし、自身のバンドの行く末を訪ねられて"Into the unknown, as always."と答えるErik Danielssonの非常にストイックな姿勢をみる限り、Watainがブラック・メタルを捨てて何処かへ行くとは考えにくい。そういう意味では、本作は紛れもなくWatain流のブラック・メタルなのだろう。
事実、驚きを持って迎えられる前述の2曲以外は、Dissectionへの敬意に溢れる"De Profundis"にせよ、Watainらしい"Black Flames March"にせよ、一聴した上でのストイックさは薄れているもの、リフを基準に構成されるスウェディッシュ然とした根本的な音像は、さほど変化はない。やはり問題になるのはアンダーグラウンド臭が薄れ、エモーショナルとも言える取っ付き易さが支配的になったことだろう。
ギターリフが明快なメロディを奏で、リズムパターンも多様化し、ボーカルはノーマルスタイルまで取り入れる。一見、大衆的ロックバンドへの入り口に見えるこれらの要素は、しかし多分にその多彩さ故に、単純なテンプレートへの準拠以外の取り込みに際しては、楽曲の空中分解を招く可能性を孕む。にも関わらず、それらの要素を破綻なくこれまで築き上げて来た自身のアイデンティティと合わせて練り上げてみせた構成力は賞賛すべきものだ。
バンドの変革期故に、単純に言ってしまえばこの音を愛せるか否か、にかかってくるのは当然だが、自分も含めたこの変化を許容できる人間に取っては、寓意に満ちた美麗なアートワークも含め、彼らのキャリアを汚すことのない、傑作と言える。
Wild Hunt/Watain

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Movie :: Silent Hill Revelation 3D
サイレントヒル:リべレーションを観てきました。3Dは目が疲れるので2Dの方を。
前作はゲームの内容も昇華しつつ、美麗なコンセプトと映像で魅せてくれたなかなか良い映画でしたので、結末から当然予想された続編を待ち望んでいました。そしたら待っている間に7つ歳を取りました・・・( ; ´д`)
ゲームとの絡みは置いておいて、内容は前作で拡げた風呂敷を畳むもの、でしょうか。ストーリーも陰鬱だった前回と違い、今回は打って変わってストレートなアクションホラーといった印象でした。
感想は、率直に述べると「ストーリーの練り不足」。
登場人物の台詞回しにせよ演出にせよ、半ば強引に次の展開に持ち込むので全然深みが感じられない。理不尽さと因習、それに救いの無さが絡み合って不安を煽る前作と比べるとそこは大きなマイナスポイント。それに「三角様が味方とかチートすぎ!」(ネタバレ反転)という看過できない要素も。
ただ、その"薄っぺらさ"がテンポの良さを生み出しているのも事実で、実際観終わった瞬間は「あれ、もう終わり?」という物足りなさと同時に、スッキリとした爽快感もありました。(まあ、ホラー映画を見に行って"爽快感"というのもどうなんだ、という問題もありますが・・・)
そして、やはり独特の"裏世界"の映像はとても綺麗。
自分にとっては、このシリーズは映像技術が云々というよりは、美術コンセプトそのものが嗜好に合っていて、そこは今回も楽しみにしていたポイントだけに、その点に関して満足できたのは非常に大きかったです。
前述の通りストーリーは浅薄だし、1と比べるとゲームコンセプトからの逸脱も大きいので評価は分かれる作品だと思いますが、グロ = 耽美、「バブルナースはぁはぁ」と思える人間にはそれなりに訴えうる作品ではないかと。あたしゃ好きです。多分DVD出たら買います。
予告編(海外版):
予告編(日本版):
雰囲気がちょっと実物と合ってないので小さ目で・・・
サイレントヒル [Blu-ray]/ラダ・ミッチェル,ローリー・ホールデン,ショーン・ビーン

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Loud Park 13 :: 4 artists added!!
LOUDPARK2013の第2弾出演者が発表されました。
- Yngwie Malmsteen
- Angra
- Mokoma
- Lost Society
個人的な第1弾での注目株はKing Diamond、Behemoth、Therion、Amorphisでしたが、今回はLost Societyですかね。若さあふれるスラッシュはライブ映えしそうなので楽しみです。
しかしこうしてみると随分"案牌"な面子を揃えて来たな、という印象(現時点でのヘッドライナーはアレですが)。
去年の評判が良かっただけに、この路線に活路を見出したんですかね。"メタルフェス"と銘打つからには、こういう面子で固めるのが正解だと思いますな。
まあ一歩引いて見回すと、メタルはメタルでも出演者としてはどちらかというと地味(驚きが少ない&既来日バンド多しという意味で)な印象もありますが、オズフェスの悪夢があるので相対的に観て好印象ですわ。
去年と比べて感じるエクストリーム成分の物足りなさは、Marduk&Taakeの奇跡のジャパンツアーで補えるので問題なし!
Best of the year 2012
ここ最近、まったくレビューも年間ベストも書いていなかったのだけれども、気に入った音楽が無いわけではなく、総括という意味でも忘備録としての意味も込めて羅列します。
1. Anathema / Weather Systems

もうこれ以上の進化は見込めないだろうと思っていたこちらの予想を軽々と超越してリリースされた名盤。Kscopeと契約してからの彼らの作品は神がかっているとしか言いようがない。
2. Shinedown / Amaryllis

もう少し、あとちょっとだけキャッチーになって欲しいという我儘を遂に叶えてくれた名曲ぞろいの一品。どこを切ってもシングルになりうる粒ぞろいの楽曲たちは見事。
3. The Used / Vulnerable

適度にポップで適度にヘヴィ。「スクリーモ」シーン勃興の立役者となった先駆者が見せた会心の一枚。このさじ加減が一番好き。
4. Soul Asylum / Delayed Reaction

カレッジチャートを賑わせたベテラン、堂々たる帰還。初期の音ではなく、チャートアクションの良好なポップ化以後の音ではあるが、ものした結果が良質であれば文句など出るはずもない。「復活」とは、こういうことを言うのだ。
5. Der Weg Einer Freiheit / Unstille

Monoも発表された年の年間ベストに、そのMonoではなくこちらの方が印象が強かったという事実が、今の自分が「ポスト~」勢に求めている音がこちらの方だと言うことを如実に示している。インテリ臭さがやや鼻に付くきらいもあるが、一辺倒なメロディック・ブラックから大躍進を遂げた一枚。
6. Scuba / Personality

「ポスト・ダブ・ステップ」の多様化が一つの集束を見せ始めた2012年、御大の出した答えはより柔軟なテクノとダブ・ステップとの混在だった。もはや「ダブ・ステップ」ではない?いやいや、これで良いのだ。これは「ポスト・ダブ・ステップ」なのだから。
7. Kamelot / Silverthorn

絶対的ボーカリストの脱退というアイデンティティの危機を見事に乗り切った名盤。粒ぞろいの楽曲は、この起死回生の一枚を期せずしてこれまでの彼らのキャリアの中でも聴き易い作品に仕上げた。
8. Satanic Bloodspraying / At the Mercy of Satan

年の瀬も近づいた時期に、突如として己の中にRawブラックブームを巻き起こしたボリビアン・メタラーのデビュー作。HHRと言えば、昔はHuman Highway Recordsのことだったが、今じゃすっかりHELLS HEADBANGERS Recordsになっちまった!
9. P!NK / The Truth About Love

ポップクイーンたるもの、シーンの流行にも敏感でなければ。ポップシーンの「現在」を体現するような、ともすれば「迎合」とも取られるスタイルの楽曲の中でも、自身のアイデンティティを見失わないのは流石。Butch Walkerの楽曲はもはや職人芸。
10. Cryptopsy / Cryptopsy

寄り道をした結果が、この名盤に結び付いたのであれば、過去の2作についてはもはや問うまい。度肝を抜くラウドパークの衝撃も素晴らしかった。
以上、ざっくり10枚選んでみました。今年はSoul AsylumにせよCryptopsyにせよ、「復活」と言える作品が多かったのも往年のファンとしては嬉しかったです。そういう意味での「復活枠」ではThe Cranberriesもありました。選外になったのは彼らの作品が悪いから、ではなく上の10枚がそれより良かったから、という理由です。
来年は1月のHypocrisyの来日から本格的な2013年の音楽ライフがスタートする感じですかね。Marduk来日の噂も絶えないし、方向性が微妙と言われつつ何だかんだで楽しみなOzzfestもあるし、2013年はメタル系のライブも充実しそうですな!
それでは、年内に記事がアップできたのは奇跡としか言いようがない自分を褒めつつ、皆さま良いお年を。
Archgoat :: Heavenly Vulva
Archgoat
Heavenly Vulva
Debemur Morti Productions, 2011
8.0- 1. Intro
- 2. Blessed Vulva
- 3. Penetrator of the Second Temple
- 4. Goddess of the Abyss of Graves
- 5. Day of Clouds
- 6. Passage to Millennial Darkness
ブラック・メタルとはその出自からして本来的にプリミティブかつアンホーリーであるべき、という思想は今でも一部のファン、そしてアーティストに受け継がれている思想ではあるが、フィンランドが誇るプリミティブ・ブラックの雄、Archgoatの最新EPもその姿勢を強烈に示している。
不定形でありながらも骨太な芯を維持しつつ、聴者の耳を殴りつけるオールド・スクールなリフと、それに呼応して荒れ狂う暴虐のリズム隊、そしてバンド名に相応しいヤギのグロウルにも似たガテラル一歩手前の(というかほとんどガテラル)Voが奏でる楽曲はしかし、その無秩序な個性とは裏腹にイントロからの劇画的な展開や、ドラマティックとさえ形容できるリズムチェンジ、不穏なkeyによる装飾と、意外にも整然と計算された構成を持つ。
だが、何より凄まじいのはリフの格好よさにせよ、絶妙な緩急を含めた楽曲の構成力にせよ、ともすれば何の疑問も無く高品質なブラック・メタルと思えそうなこれらの要素を以て形成された曲が、徹底的にアンホーリーな黴臭さを発しているところ。もちろん、故意に劣化させたであろう籠り気味のプロダクションも音像の地下室化に一役買っているのは間違いないが、それ以上の下劣さ、猥雑さがこの作品そのものから滲みだしてくる様は、まさに楽曲そのものがインモラルと言える。
徹頭徹尾「ブラック・メタルであること」を体現した作風だけに聴く者を選ぶ作品ではあるが、そのキャリアと与えられた評価からすれば、安定の傑作。
Heavenly Vulva (Christ’s Last Rites)/Archgoat

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