*4月29日付記事 の続きです。
R大学文学部史学科のぜんざい教授
と、教え子の院生・あんみつ君
の歴史トーク、今回のテーマは武田勝頼です。
本日がシリーズ最終回。
武田家滅亡の経緯を見ていきましょう。
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あんみつ
「先生、高天神城を見殺しにした武田家への豪族たちの失望は大きく、離反が相次ぎます。裏切りの連鎖は武田家御親類衆にも波及しました」
ぜんざい
「うん、信玄の娘婿で木曽伊那を守る木曽義昌が織田信長に降ると、信玄の甥で一門筆頭の穴山玄藩頭信君(のぶただ,梅雪)が徳川家康に内応した。これにより信濃・駿河の防衛ラインが開放され、天正十年(1582)二月三日、ついに甲斐侵攻がはじまったんだ」
あんみつ
「総大将は織田信忠で、信長は出馬してませんね。勝頼は諏訪で迎え撃つべく出陣します。しかし武田方はオセロのように信濃の支城が降伏し、あっという間に織田軍が甲斐にまでなだれ込んできました」
ぜんざい
「しかも二月十四日夜、北佐久の浅間山が大噴火を起こした。京都から空が赤いのがわかったというから(『多聞院日記』など)、相当な規模のマグマ噴火だね。それは武田が天に見放された と解釈され、さらなる離反を呼んだ」
あんみつ
「わずかに高遠城を守る勝頼の異母弟・仁科五郎盛信の奮戦があったとはいえ、そこも落城。勝頼は3ヶ月前に新築したばかりの新府城に火をかけ、小山田信茂の守る都留の岩殿城を目指します。このとき真田昌幸は、上野・吾妻の岩櫃城への退避を勧めたんですが」
ぜんざい
「小豪族の真田はいつ裏切るか分からない、と側近が断ったと言われるね。ただ、昌幸が岩櫃城に宛てて、勝頼を迎える支度をするよう命じた書状が現存している。このとき昌幸が本気で勝頼をかくまうつもりだったのは事実だろう」
あんみつ
「浅間山噴火の話を聞いて、勝頼が吾妻でなく都留に向かったのは、噴火のせいで上州に行けなかったんだろうな と思いました。だとすると、勝頼はとことん不運に泣きましたね」
ぜんざい
「結果的に、小山田までもが裏切ったからね。諏訪出陣時、約一万いた武田軍は続々逃亡し、新府に戻ったときは二千人、都留に向かうときは七百人になっていた」
あんみつ
「勝頼の逃避行には、信玄の従妹・勝沼氏が同道していたんですよね。供の者が隙をみては去っていく様子が克明に記録されていて、胸が詰まります(『理慶尼記』)。最後まで勝頼に付き従ったのは、夫人の侍女を含め百人足らずでした。歩きさまよいながら、みんな泣いていたと言います」
ぜんざい
「岩殿城に籠るつもりだった勝頼一行に、笹子峠で小山田勢が襲い掛かった。最期の地を天目山棲雲寺と決めたのだが、滝川一益勢や地侍の群れに遭遇し、それも叶わない。三月十一日、山麓の田野という場所で勝頼(37)と嫡男・信勝(16)は討たれ、北条夫人(19)と侍女たちは自殺した」
あんみつ
「逃亡した他の一門、武田信豊や逍遥軒信廉、一条信龍らも処刑されましたから、武田家は完全に滅亡ですね」
ぜんざい
「小山田信茂は、勝頼を追い詰めたご褒美があると思って出頭したが、織田信忠に “古今未曾有の不忠者” と罵倒されて打ち首になった。まぁ、同情はできない話だ」
あんみつ
「勝頼の首実験をした信長は、“天下に並ぶ者のない猛将だったが、運に見放されてこうなってしまった” と感傷的だったと言います。その信長も、たった3ヶ月あとに本能寺で斃れることになりますけども」
ぜんざい
「広大な甲信駿野の旧武田領を併合したために、戦後処理で有力武将を派遣しなければならなかった。すると信長自身の身辺が手薄になり、明智光秀に隙を衝かれたわけだ。だから結果論ながら、勝頼は信長を地獄の道連れにした と言えば言えなくはない」
あんみつ
「なるほど、あと3ヶ月頑張れば、武田は滅ばずに済んだかなと思ったんですが、その逆なんですね。勝頼の十年をたどると、歴史って個人の器量より、運や時代情勢に翻弄されるんだなと痛感します。先生、今回も勉強になりました~」
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これで、シリーズ武田勝頼は終了です。
蛇足ながら、タイトルは 頼山陽 「川中島」 の、“遺恨十年磨一剣 流星光底逸長蛇” から採ってみました。戦国の世、短い年月を駆け抜けた勝頼に相応しいと思いまして。
また次回、ぜんざい教授とあんみつ君の新テーマでの歴史トークにご期待くださいませm(_ _ )m。
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参考図書
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・林屋辰三郎 「日本の歴史12 天下一統」
・上野晴朗 「定本 武田勝頼」
・磯貝正義 「定本 武田信玄」
・藤本正行 「長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因」
・藤本正行 「再検証 長篠の戦い」
・鈴木眞哉 「鉄砲隊と騎馬軍団」
・鈴木眞哉 「<負け組>の戦国史」
・鈴木眞哉 「謎解き日本合戦史」
・谷口克広 「織田信長の外交」
・黒田基樹 「戦国北条氏五代」
・平山 優 「真田三代」
・新田次郎 「武田勝頼」
・海音寺潮五郎 「武将列伝 武田勝頼」
