最遊記三蔵お相手
名前は凪で固定♀
「面倒なんだよ、お前は」
第一声がそれだった。
この世界で玄奘三蔵と、その仲間の悟空、八戒、悟浄と旅をするようになったのがつい先日。
初めての旅
初めての野宿
初めての戦い。
全てが初めてで、全てが新鮮だった。
そして私は今日、初めて妖怪を殺した。
「……、」
「…またダンマリか?」
埒があかねえな。
三蔵は苛つきを隠そうともせずに紫煙を吐き出した。
室内にのぼったそれは拡散し、私達をマルボロの香りが包んだ。
「……」
自らの手を爪が食い込む程強く握り、ひたすら床を見つめた。
わたしが、ころしたんだ。
この手で、命を奪った。
かたかたと震える手を更に握り込むと、前からため息が聞こえ、私の手に三蔵の手が重ねられた。
思わず顔を上げる。
「…あまり握るな」
「さんぞ、…」
きたないよ。
唇だけそう動かせば、それに気付いたらしい三蔵が眉を寄せた。
きゅ、と重ねられた手に力が籠もる。
「何が汚い」
「わたしの、手が、」
「…甘ったれんじゃねえ、馬鹿娘」
三蔵は私を真っ直ぐ見つめた。
「…だがな、」
濃い紫の瞳が私を映す。
「お前はその気持ちを忘れるな。殺生を畏怖し、仕方ないの一言で片付けるな」
「さん、」
「お前は染まらなくていい、凪」
徐に肩を引き寄せられ、三蔵の腕の中にぽすりとおさまった。
背中に回された彼の腕に力が籠もる。
三蔵がいつも吸っている煙草の香りがする法衣に額を押し付け、私は縋るように抱き付いた。
「さんぞ、」
「ああ」
「さん、ぞう」
「…ああ」
「…三蔵、」
「……大丈夫だ」
自然と涙は出なかった。
自らの手は相変わらず血まみれで、涙を流してもその鮮やかな朱は流れてはくれない。
「…三蔵、ごめん」
「謝るんじゃねえ、この馬鹿」
そんな経験を重ねた三蔵が目の前に居る。
「染まるな」「殺生を畏怖しろ」と言った三蔵は、もう妖怪を手に掛ける事をおそれては居ないのだろうか。
…違う、きっと三蔵も怖いんだ。
悟浄も悟空も八戒も、三蔵も、みんなみんな怖いんだ、みんなみんな泣きたいんだ。
「……強くなる」
「そうしろ」
法衣に額を押し付けたまま、私は仲間の顔を思い出し、静かに涙を流した。
泣けないこども
名前は凪で固定♀
「面倒なんだよ、お前は」
第一声がそれだった。
この世界で玄奘三蔵と、その仲間の悟空、八戒、悟浄と旅をするようになったのがつい先日。
初めての旅
初めての野宿
初めての戦い。
全てが初めてで、全てが新鮮だった。
そして私は今日、初めて妖怪を殺した。
「……、」
「…またダンマリか?」
埒があかねえな。
三蔵は苛つきを隠そうともせずに紫煙を吐き出した。
室内にのぼったそれは拡散し、私達をマルボロの香りが包んだ。
「……」
自らの手を爪が食い込む程強く握り、ひたすら床を見つめた。
わたしが、ころしたんだ。
この手で、命を奪った。
かたかたと震える手を更に握り込むと、前からため息が聞こえ、私の手に三蔵の手が重ねられた。
思わず顔を上げる。
「…あまり握るな」
「さんぞ、…」
きたないよ。
唇だけそう動かせば、それに気付いたらしい三蔵が眉を寄せた。
きゅ、と重ねられた手に力が籠もる。
「何が汚い」
「わたしの、手が、」
「…甘ったれんじゃねえ、馬鹿娘」
三蔵は私を真っ直ぐ見つめた。
「…だがな、」
濃い紫の瞳が私を映す。
「お前はその気持ちを忘れるな。殺生を畏怖し、仕方ないの一言で片付けるな」
「さん、」
「お前は染まらなくていい、凪」
徐に肩を引き寄せられ、三蔵の腕の中にぽすりとおさまった。
背中に回された彼の腕に力が籠もる。
三蔵がいつも吸っている煙草の香りがする法衣に額を押し付け、私は縋るように抱き付いた。
「さんぞ、」
「ああ」
「さん、ぞう」
「…ああ」
「…三蔵、」
「……大丈夫だ」
自然と涙は出なかった。
自らの手は相変わらず血まみれで、涙を流してもその鮮やかな朱は流れてはくれない。
「…三蔵、ごめん」
「謝るんじゃねえ、この馬鹿」
そんな経験を重ねた三蔵が目の前に居る。
「染まるな」「殺生を畏怖しろ」と言った三蔵は、もう妖怪を手に掛ける事をおそれては居ないのだろうか。
…違う、きっと三蔵も怖いんだ。
悟浄も悟空も八戒も、三蔵も、みんなみんな怖いんだ、みんなみんな泣きたいんだ。
「……強くなる」
「そうしろ」
法衣に額を押し付けたまま、私は仲間の顔を思い出し、静かに涙を流した。
泣けないこども






