柄沢照文の絵本 | 恋着、横着、漂着 遊び盛りゆるゆるのびのび60代

恋着、横着、漂着 遊び盛りゆるゆるのびのび60代

2年早く退職して機能と効率のタガを外すことが出来ました。
人生をゆるゆるのびのびと楽しんで味わって行きたいと思う60代です。

 

 何とも人を喰ったような絵本だ。

 絵本と言っていいのだろうと思う。ただし、読み手をくたびれている大人に想定しているのだろうか。

 実は作者を知ったのは、三重テレビのドキュメンタリーシリーズ「日本の道」のひとつ、「塩の道」だった。

 「日本の道」は千葉テレビでも再放送されていて、それを観て来た。シリーズ通して、森本レオのナレーションに魅かれて観ていたようなものだ。

 あの独特のやさしさ、溜めは聴いていて飽きないし、ついついモノマネをしたくなる。

 その一話「塩の道」で紹介された作者の「塩の道 旅日記」は古本でも2000円超えと高値で、手が出ず、代わりに安値で売られている本書を注文してみたのだった。

 

 

 本書は、この表紙に見られるように、作者の手によるオリジナルキャラクターと思われるシロモノが数々登場し、そこに短文が添えられる。

 特に、雲をみつめて、その形をあれこれと描き、短文に綴る頁がいくつもある。

 鈴木大介氏の本を読んでいて、虚を突かれ、いたく感心もさせられたエピソードのひとつに「空の雲を見上げてみなよ」という妻のアドバイスがあった。鈴木氏はその通りにして、パニック状態から平常に戻ることが出来た。

 雲をしばらくの間、見つめる。

 そんな行為は実に豊かだと思う。

 あわてて見るものではない。あくせくしている時に、雲は視界に入って来ない。

 ぼーっとして、ぽかんとしている時こそ、雲は何かの形になる。

 さっき、外から帰って来る途中に、私が見た雲は、袋から取り出したアンパンのようだった。または、きれいな曲線を失った出来損ないのUFOみたいだった。