久しぶりに三人で飲みに行きましょうよ!」とマンネ二人に誘われたのが二時間前。
俺が二人を誘うことはあっても、二人から誘ってくることなんて珍しくて、ついつい理由も聞かずにのってしまったのだ。
それが羽目を外すためだなんて二時間前の俺は考えもしなかったよな。
「ヒョン、愛してる~」
「あーあー、俺も愛してるぞ~」
「ヒョンは僕の事愛してますもんね~?ヒョ~ン」
普段はあまりあからさまに甘えてこず、どちらかというと自由人な兄たちをまとめたり嗜めたりする役目のリョウク。そんなリョウクも、酔うと枷が外れるのか、こうやって「愛してる」ループにハマって動かなくなることが大半だ。
これにつかまるとリョウク自身が標的を変えるまで身動きはとれない。し、放っておけば拗ねてさらに厄介なことになる。
だけれど、リョウクがこうやって捨て身で甘えてくることは酔った時しかないので、俺に限らずこの癖を煩わしく思っている奴なんていないと思う。
ただ今日に限ってはまずい。
まずいのは、そもそもキュヒョンと俺とリョウクという少ない人数で来てるからリョウクが絡む時間が異様に長いということと(異様にというか始まってから絡まれっぱなしだ)。
何故か横で拗ねているマンネの存在だ。
「....ジョンウニヒョン..........」
今も何故か俺の名前を呟きながらいつもより早いピッチでワインを飲んでいる。
いつもはもっと上手に飲むのに....ワインをそんな水のように飲んだら、ギュラインの誰かに怒られるんじゃないのか...?
そんなことを考えながら舐めるようにサワーを口にする。酒はそこまで強い方ではないし、始まって30分経った時点で「あ今日は俺が回収班だな」と悟ったのでいつもにまして飲むペースは控えめにしてある。
飲んでいる間にも腰から肩に移動したリョウクが大分赤くなった顔を近づけてきた。
「ヒョン、全然飲んでないんじゃないですか?もっと飲めばいいのに~.....」
「リョウギは今日はよく飲むな?」
「だって~、久しぶりなんですもん!ずっとスタッフさんとで、ヒョン達と飲みに来るのなんて.....」
「うんうん、そうだな。そろそろ水にしとこうな?」
えええーーヒョォーン!!なんて抱き着いてまた「愛してる」ループに入ったリョウク。身動きがとれない俺に、のそりと大きな影が近づいてきた。
「リョウギが目に入れても痛くないほど好きなのはわかってますけど、俺もいますよ?ほら!ヒョン!ジョンウニヒョン!」
「お前いつの間にそんな酔ってたんだよ。真顔で近づくな、怖い」
「省エネ解除の俺は凄いですよ」
「わかったわかった。キュヒョナすごいなー本気になればすごいもんなー」
適当だ....ジョンウニヒョンのくせに....なんてリョウクとは逆側から抱き着いてくるキュヒョナ。今さりげなくすごい失礼なこと言ったぞこいつ。
いい加減酔いを醒ませようと水を取ろうとしても、がっちりホールドされてまったく動けない。個室のお座敷にしてよかった。こんなところエルフに見つかったら俺はいいとして、他二人のイメージ戦略が危ない。
「ちょっとキュヒョナ!僕がいるでしょ、来ないでよ」
「ずっと抱き着いてただろ!」
「キュヒョナはいつも我儘聞いてもらってるじゃない!」
「リョウギだって同室だろ!?」
「今は関係ないですー!それにすれ違い多くて全然話せなかったもん!」
「そんなの俺だって一緒だよ!」
あ、これ個室とか関係ないかもしれない。声大きいよお前ら。
そろそろ帰った方がいいな、と判断して二人に声をかける。
「リョウギ、キュヒョナ。歩けるうちに出るぞ」
「えー」
「もう少しいいじゃないですかぁー」
「宿舎で飲みなおせばいいだろ?そろそろソンミナも帰ってきてるだろうから、なんか作ってもらえばいいし」
その言葉で二人ともしぶしぶといった感じで俺から離れた。よかった、どうやらまだ話を聞く理性ぐらいは残っていたようだ。
今度こそ酔い覚ましにお冷をもらって、二人が飲んでいる間に会計をすまそうと手洗いを装って立ち上がる。後ろからまた二人の言い合う声が聞こえているがスルーだスルー。
無事会計もすませて個室に戻れば、まだ言い合いをしている二人が目に入った。
「キュヒョナ付き合ってるわけでもないのにー!!」
「これから付き合う予定なんだよ!!」
「僕だってそうだよ!!」
「何を言い争ってんだお前らは」
スキャンダルの種になるような言い方はやめなさい。
そういって軽くこづくと二人とも頬をふくらませて拗ねていた。妙に似合ってしまうのはマンネたる所以なんだろうか......
そのあと俺が支度をしている間に、気を取り直したのか「今度は何飲もうかなー」やら「俺ソンミニヒョンに連絡して見ます」なんて車に急ぐ二人をみて自然とため息がこぼれた。
「.....お前ら普段からそんなだったら可愛げあるのになー」
普段は俺をからかうことに全力を注いでくるか完全無視なキュヒョンと、相槌はうつものの基本スルーするリョウク。それが普通になっているし、まあいじられ役だしいいんだけれど、たまに寂しくなるのも事実。
まあでも、これだからいいんだよな。うん。
「ジョンウニヒョン!ソンミニヒョン、一緒に飲みたいそうなので早く帰りましょう!」
「そうですよヒョン!僕まだ飲み足りないんだからね!?」
そういって笑う二人に、軽く手を振って急ぐ。
夜はまだ長そうだ。