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SINCERO-FF

主にサイトに投下していたSJのFFCP話を放り込むブログです。閲覧の際にはご注意ください。


最初に指摘されたのは付き合う前。
「綺麗な手なのに、駄目ですよ」と言ってきたお前に、「癖なんだよ」と今までも何度も使ってきた言い訳を返した。
そうしたら「爪なんて構わないで、俺を構ってくださいよ」だなんて、いつものブラックを潜めて言うもんだから。
思わず笑いながら頷いてしまったんだ。



「それが今になって響いてくるなんて....」
「え?ヒョン何か言いましたか?」



俺の後ろから飄々とした声が聞こえる。顔は見えないけど、多分澄ました顔してるんだろうという予測はついた。


例の会話から数ヶ月後。
めでたく付き合うことになって、メンバーにも報告した。皆「やっとか」なんて言って受け入れてくれて(何人か膝をついていたこととか、ジョンスヒョン達に呼び出されたキュヒョナが顔面蒼白で帰ってきたことはおいておいて)。
元気のないキュヒョナを相手していたら、奴は急に綺麗な笑顔になりこう言い放った。


「これで堂々とヒョンにくっついてられますね!」
「は?」


思わず素で返事をしてしまったのは仕方がないというものだろう。
お前今まででもわりかし堂々とくっついてきてただろ?えっあれはフルスロットルじゃなかったのか?という疑問が伝わったのか、笑顔から一転真顔で言い放った。


「ヒョンの小さな手は俺が守るんですよ。」
「喧嘩売ってんのか?」


その時は少しじゃれあっただけで終わったから、その意味がどういう意味かわかることはなかった。

そして次の日。
リハーサルを終えて本番前。それはいつもの通りソファに座って、曲を聞きながら台本を読んでイメージトレーニングに勤しんでいる時に起きた。
読んでいた台本に影が落ちて、マネヒョンか?と思いつつ顔を上げると。


「ヒョン」
「キュヒョナ。どうした?」


そこにはいつになく不安そうな顔のキュヒョン。緊張してるんだろうか、と発破をかける姿勢に入った俺に、キュヒョンが口を開く。


「ヒョン。俺の上に座ってください」
「は?」


また素が出る。こんな短期間に出るなんて早々ないことで、うん、あぁキュヒョナ凄いなぁうんさすが。
なんて現実逃避している間にもちゃっかり俺を力尽くでどかし、俺がいた場所で膝を叩いているキュヒョンがいた。


「ヒョン!早く!」
「.......えっと」
「ヒョン!」
「.........」


そして冒頭に戻る。
キュヒョンの腕は腰に回っていて、所詮バックハグをされていて。いくら付き合うことは報告したとはいえこんな人目のつくところで....とも思ったけど、満足そうに顔を埋めるキュヒョンを前にしては何も言えない。


「ヒョン、また腰細くなりました?駄目ですよ、きちんと食べないと....」
「食べてるし鍛えてる。なかなか筋肉つかなくて.....」
「えっ!?ヒョンまでシウォンヒョンみたいになるのは嫌ですよ!?」
「キュヒョン、それ俺に失礼じゃないか?」
「それは俺も嫌だ」
「えっ」


なんてシウォンを挟んでくだらない話しをしているうちに本番が迫ってきていたらしい。
ジョンスヒョンの行くぞ!という声を合図にキュヒョンは俺を開放した。


「おい、キュヒョナ」
「頑張りましょうね」


そういっているキュヒョンは既にいつもの凛々しい顔に戻っていて。
それ以上気にすることも出来ずに、ステージに向かった。



その後もキュヒョンの謎のスキンシップは続いた。
音楽を聞いていれば「半分貸してください」なんて寄ってくるし、暇な時にリビングでぼうっとしていれば「買い物付き合ってください」と外に連れ出してくれる。

俺の機嫌が目に見えるほど悪いと、リョウクを引き連れてくることもあった。ご機嫌取りにリョウクって、と笑ったら、奴は「可愛いマンネサンドですよ?」なんて笑っていて。そんな俺達を見てリョウクは呆れていた。

そうやってキュヒョンがやけに俺を構い倒し始めてから数週間。
久しぶりのオフに2人でテレビを眺めていると、キュヒョンが少し暗い顔をして切り出した。


「ヒョン、少しいいですか?」
「ん?どうした?」
「俺、ソロデビューが決まりました。」


その落ち込んだような顔に反して、内容は喜ばしいことだ。
....内心ほっとした。何かやらかしたかと思った。
ほっとしたのも束の間、ソロ活動で忙しくなり、宿舎に戻ってくることも難しくなる、と寂しそうな顔で伝えられて、一気に複雑な気持ちになった。


「.....ヒョン、俺、頑張ってきますから。出来る限り連絡もとります。だから....」
「.....俺は大丈夫だから。気にしなくていい。頑張れよ、キュヒョナ」


はい、と複雑な笑みを浮かべたキュヒョン。
そしてソロデビューを果たして、宣言通り宿舎に帰ってくる頻度が激減した。
一応帰ってきてはいるらしいけれど、見事にすれ違ってまったく会えない。暇になった時間を埋めることも煩わしくて、リビングでぼうっとしている時間が長くなった。

やることもなく、動画を漁って手当り次第見る。
検索をかければ話題の動画!なんて欄にはキュヒョンの文字があって....


「はあ....」
「あっ!ジョンウン駄目だって!」


ため息をついていると突然の大きい声。
驚いて顔を上げると、困り顔のジョンスヒョンが何故か飴を差し出していた。


「ジョンウン、また爪噛んでたよ」
「えっ...ごめん。...えーっと、飴?だよね?」
「あー、うん。キュヒョナがさ」


キュヒョナ?なんでここでキュヒョナが出てくるんだろう。
出てきた疑問に、ジョンスヒョンが相変わらずの困り顔で答える。


「どうしても傍にいられないから、爪噛み出したら渡してくれって言われて。その場しのぎにはなるかな?」
「あ.....ありがとう、ジョンスヒョン」
「うーん、俺が甘えさせて上げれば早いんだけど。キュヒョナには負けるだろうしね」


爪の噛み癖って、甘え下手な人に多いっていうし。キュヒョナは薬なんだよねぇなんて笑顔で言われて。
飴って、キュヒョナが?そんなこと気にしてたのか。甘え下手って、薬って、俺、そんなキュヒョナに甘えてた?

数週間続いてた謎のスキンシップ。
今更のように思い出した、付き合った日のあの言葉。
全部繋がって、思わず笑みがこぼれた。

変なところで不器用なんだよなぁ、キュヒョナ。
そんな回りくどいことしなくても、言ってくれれば甘えるのに。

以前の自分なら素直に甘えられないかもしれないけれど、誰がお前の告白をオッケーしたと思ってるんだよ。
今も片方だけ外されたイヤホンが、全てを物語ってる気がする。


「ジョンウン?」


固まった俺を心配するようなジョンスヒョンの声が聞こえる。
答える暇はなかった。

次にあった時、どんな甘え方をしてやろうか。

笑いながら、飴を口に含んだ。