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心の歩み、さまざま

米国マサチューセッツ州で、サイコ(心理)セラピーをしています。
そこら辺に転がっている、日常の色々。
心理学の視点、文化の視点から斬ってみると、また別の物が見えてくるかもしれません。

ここ一週間に日本人のクライエントさんと、

そもそもセラピーとは何か

についてお話しする機会が何度かありました。

 

忙しいから、と言って休みがちになったり、

最近調子が良いから、行かなくていいや、とか

一週間に一回のアポイントメントは多すぎる、

と思うのは、

日本の方に多い様子です。

 

それも無理はないかもしれないですね。

 

人生数十年、心理セラピー無しでも

生きてこられた。

だから、セラピーは行かなくても良いもの。

という考えの方が、今の日本ではほとんどのはず。


実際にクライアントさんに伺ってみました。

この方は、最初の下見に一回いらして以来

2か月間予約を入れられなかった

みぞれさん。

 

これから、セラピーをしますか?

 

という質問にみぞれさん。

 

「自分の調子がよっぽどひどくならない

 限り、来ない方が良いかなと思って。」

 

来ない方が良い?

 

「他人がどう思うか、とか考えたり。」

「ま、別に自分がセラピーを受けることを

 人に言うわけではないんですが。」

 

どう思われると思いますか?

 

「何か、精神的にヤバい人って。」

 

なるほど。

 

みぞれさんの経験としては、

日本で心理セラピーに

かかっている人というのは、

仕事が出来なくて休む人や

言動がおかしな人しか

知らないから、とおっしゃいました。

 

なるほど。

実際に、私のマサチューセッツのオフィスに

来られる日本人の方達も、

ストレスを貯めすぎて、いよいよ

機能出来ない状態になってから、

いらっしゃる方が多いです。

 

別の言い方をすると、

 

虫歯がかなり進行して、

歯に穴が開いて、

痛くて仕方がなくなってから

歯医者に足を運ぶ、

 

というのに似た状態と言いましょうか。


そういうケースが多いです。

 

そうすると結果的に

病気の人だけが

セラピーを利用するように見えてしまう

のかもしれないですね。

 

「はい。」


でも、だからと言って、セラピーは

機能できなくなったの人だけのものという

わけではないのですが。

 

というお話しをしました。

 

それと、

ストレスのない人って居ないですよね。

というお話と、

 

虫歯になったことのない人も

歯の定期健診には行きますよね。

(日本ではまだ保険が

 きかないのが難点ですが。)

というお話も。

 

又、

どうしても嫌いなタイプの人間というのが

居るとします。

 

自分はなぜか、こういうタイプの人を見ると、

自分の感情が、毒された感じになる、

という場合。

 

「あぁ、います居ます。」

 

人は、時が去れば、問題が解決したと

思いがちです。

 

「違うんですか?

 完璧に忘れるとは思いませんが。」

 

忘れていたと思っていた過去の古傷が、

似たような人に出会って、

再び無意識にうずく、そんなものです。


問題を解決せずに忘れようとして

無意識に押し込んでしまうと、

ふとした時に、

時々そんな悪さをすることもあるんです。

 

「わかる気もします。」

 

それを掘り起こして、

埋まっていた、毒素を放出してやって

すっきりする。

そんなもんです。

 

というお話も、させていただきました。

 

ずっと静かに聞いておられた、みぞれさん。

 

みぞれさんの場合は、

これから

お子さんがお生まれになるということ。

 

みぞれさんなりに、以前から

セラピーにかかっておいた方が良いかな、

と思う理由があったそうです。

 

みぞれさんは、そう意識している分、

ずいぶん意識が高いです。

 

子供は、親が無意識に感じたり

したりすることを、すべて感じて

観察して、

その弱い部分を自分のものにしてしまう。

親が隠している弱さも

全て見抜いていて、

反発しながらも吸収してしまう

そんな存在ですよね。

 

それに、子供が将来

ストレスの貯めにくいか

ストレスが解消しやすいかは

親の心の健康の状態と

直結しています。

 

というお話になった時、

 

「私は割と、ストレスを貯めやすい方

だと思います。」

と、おっしゃっていました。

 

そこで私がお話ししたのは、

 

どんなに精神的に健康な人でも

お子さんが産まれてお母さんになると

心配の度合いが上がる、

ということ。

 

それは守る存在ができるから、

本能的なものである、と。

 

真剣な目で聞かれるみぞれさん。

 

けれど、親の不安が

知らないうちに

子供の心の締め付けたり、

伸びる芽をつぶしてしまうことも

多々ありますね。

 

子供が歩き出したり、

成長が進むにつれ、

その時々に心配事が増えるのも

自然ですよね。

 

逆に、子供は

「守られること」と同時に

「信用されること」も必要で、

心配されすぎると、

「自分は信頼されていない」と

感じ始めることも。

 

「信頼されていない」と意識する子供の

行動が悪化することはよくある事。

 

頷いて聞いておられます。

 

思春期の頃になって、

子供との関係の糸が

こんがらがって、ほつれない状態になってから、

「私は息子のしつけの

 どこをどう間違えてしまったのかしら?」

と悩むのではなく、

 

赤ちゃんが生まれる前の今現在、

既にこのセラピーの部屋に来て居られる

というのは、かなりすごいこと。

 

まだ、ほつれる糸も存在しないうちに、

自分の水面下の意識を知っておく

というのは、親としての成功を

考えたかったら、一番良い出発方法

ではないでしょうか?

 

と言ったとたん、

はっとした顔をされておられました。

 

他にも、

仕事が大変で、

時間がなくて、

という理由で来られない人の例も

あげてみました。

 

「私、別に仕事しているわけでもないし

家にいるだけなので、来てみようかな

と思います。」

 

みぞれさんは、よく考える人のようです。

 

さらに、

「妊娠中、眠くて

 家を出るのがおっくうで。」

と、

昼間数時間寝ることもしばしばと、

素直におっしゃいました。

 

それも、セラピーの予約を入れなかった

理由なのかもしれません。

 

ところで、みぞれさん。

 

体を動かされること、何かしておられますか?

と伺ってみました。

 

「運動ですか?」

 

激しい運動、とまではいかなくても

歩くとか、家で体操をするとか。

 

「いえ、風邪ひかないように、

雨の日や寒い日は、出ないように

していました。なるべく動かない方が

いいかと思って。」

 

家にこもると鬱になりやすいですよ。

 

逆に鬱や不安を、歩いて治す人も

居ますよ。

 

「え!?そうなんですか?」

 

体を動かして血行をよくした方が、

もちろん赤ちゃんにも良いでしょうし、

脳に酸素が運ぶと、

脳全体が機能して、

気持ちも楽になるんですよ。

 

「それって、散歩が気分転換に良い、

というよりも、もっと深い意味がありそうですね。」


みぞれさんには、とても納得できる

お話だったようです。

 

そんなお話しも、

これからゆっくりしていきます。

以前書かせていただいた、
娘を甘やかしてしまうマーガレットさん。

 

不思議に思うことがあるそうです。

 

26歳の娘さんは
マーガレットさんとマーガレットさんの母が
一緒に住む家の半地下の部屋に住んでいて、
ほんの5歩程歩いてすぐのところに、
家族用の洗濯機がある。

 

それでもいつも、「ママ洗濯して。」と
階上にいるマーガレットさんに
頼んでくるのだとか。

 

「何で自分でしないの?」と聞くと、
仕事で疲れているからとか、
眠いから、と色々な言い訳を
してくるそうです。

 

26歳にもなって、仕事もできる娘が
どうして洗濯機に洋服を入れ
ボタンを押すだけの事が
出来ないのだろう?

 

マーガレットさんはそう言いながら、
笑います。

 

最近まで家事の何もかもを
マーガレットさんがして来られていて、
今現在足の動脈の問題の為、
重いものを持つことが出来ない
マーガレットさん。

 

これを機会に
なるべく娘さんに自立させようと
思っておられる様ですが...。

 

「家事をしない彼女に対して
 半ばあきれている。」
と言われます。

 

一方で、前回書かせていただいた様に、
マーガレットさんご自身も
働いていないことから収入がなく
肩身が狭い、という理由で、
家事全般をマーガレットさんが
してこられております。

 

この持ちつ持たれつの関係を絶つという
一大決心をしたのが前回の記事。

 

マーガレットさんに聞いてみます。
娘さんの様子をお話するとき、
時々笑っておられますが、
笑っている時の気持ちはどんな感じですか?

 

「おかしいっていうより、あきれているのか、
 たぶん馬鹿馬鹿しい、って思っている
 って感じかも!?(笑)」

馬鹿々々しい。

 

何に対してでしょう?
と聞きました。

 

「服を洗濯機に移動する、そんな
 簡単なことを、26歳にもなった娘が
 わからないはずがないのに。(笑)
 言い訳ばかりして、
 バカげているって思います。(笑)」

 

そしてこんなこともおっしゃいました。

「まぁ、私がやることそのものは、
 私は気にならないんですけれど。」

「それに、あの子がやると、
 散らかすし。(笑)」

 

ではここで改めて、おさらいをしてみます。

 

前回洞察力の良さを披露された

マーガレットさん。

 

マーガレットさんはいつも、セラピーの
セッションでの理解がものすごく深いので、
あえてここで、すこしマーガレットさんに
挑戦させていただいていいですか?

「はい。」

1.娘の身の回りの世話は、自分が
  した方が良いと思うことが多い。
2.26歳の娘が、身の回りの世話を
  自分でできないのは馬鹿々々しい。

 

ここに二重基準がありますね?

 

「はい。わかります。」

 

理解が早いマーガレットさんは
否定もあまりされません。

 

以前、娘さんを甘やかしてしまうのは、
ご自分の仕事をしていない事に対する
罪の意識を消したいからだと、
おっしゃってもいましたよね。

 

「確かに。」

 

衝突に遭うくらいなら、自分を犠牲にする方が
楽と言うパターンを取ってきたことも。

 

「そうでした。」

 

相手に任せるのではなく、世話をする方が
簡単、ともおっしゃっていましたか?

 

「そうです。」

 

このようなセラピストの挑戦に、
マーガレットさんは、反発するでもなく
お話しに沿っておられます。

 

ここで、マーガレットさん、
こうおっしゃいました。

 

「別に娘本人に馬鹿々々しいと
 言うわけではなくて
 本人には優しく接していますよ。」

 

そうですか。わかりました。

確かに娘さんには言っていないのだとして、
実際にどう接するかが、ここでの焦点ではなく、
マーガレットさんの心の奥深いところでの
娘さんに対する理解を探っています。

 

「はい。」

 

子供の頃から、お手伝いをさせていなかった
とおっしゃっていましたか?

 

「そうです。一人っ子ですし、
 私の娘なので、かわいがって育てました。
 (照れ笑)」

 

マーガレットさんご自身はセラピーで
何度かその問題に触れてきておられる。

そのため徐々にご自分の自立と娘の自立に
ようやく心の準備ができてきた様子ですよね。

 

「はい。」

 

一方で、娘さんの方はどうでしょう?

 

20数年間、自分が知識を得て、体得する

機会がなかった。

今回母親の体調が都合で、いきなり家事を

するように言われた。

 

心の準備は?

「私ほどは出来ていないのはわかります。」

 

その場合、娘さんは体は26歳かもしれませんが、
家事関係に関しての
行動能力や精神年齢は、
5-7歳と考えてもよいかもしれない、
どうでしょう?。

 

と言われた途端、マーガレットさん。

 

「ってことは、先生、
 娘を5歳の子を相手にする様に
 接しろってことですか?(笑)」

「よくできたねー!(笑)
 頑張ったねー!みたいな?(笑)」

 

大笑いです。

 

ずいぶん笑われますね。

 

今度の笑いの意味は何ですか?

 

「だって、あの子が5歳だなんて。(笑)」

 

そう思えないのもわかります。

 

ちなみに、娘さんは鬱や不安症を
お持ちですか?

 

「あ、抗不安剤とADHDの薬を
飲んでいます。
抗鬱剤は今は飲んでいない
けれど。」

 

精神疾患的症状の一部として、
頭でわかっていることが
なかなかできないこと、ありますよね。

 

「わかります。」

 

マーガレットさん自身、
強度の不安を抱えていた方で、
近所での車の運転も、
怖がってできなかった経験を
お持ちです。

 

ではマーガレットさん。
すると、娘さんの場合、

 

1.母親の自分自身の罪の意識や、
  心の負担を減らすために、娘さんは
  幼いころからスキルを学ぶ機会も
  習得する機会を得なかった。

 

2.親からの無言のメッセージは、

  「親がやった方が早くて上手い。」つまり、
  「おまえは役に立たない。」


3.鬱や不安などの疾患もある。

 

これの1、2、3、どれかが
当てはまりますか?

 

「全部当てはまると思います。」

 

マーガレットさん、頷いておられます。

 

そうですか。

 

では、そうだとすると、
これらは、娘さんの責任でしょうか?

 

「いゃ、もちろん違います!
 不安や鬱があれば、
 体が動かないし、
 そりゃぁ、娘のせいではありませんよ。(笑)」

 

そう言われたマーガレットさん、

こうも言われました。

 

 「よく居ますよね。
 鬱の家族に怠け者だとか言う人って。
 本人、かわいそうじゃないですか。(笑)」

 

ご自分の経験を使って理解をする。
その早さは、マーガレットさんの強さでも

あります。

 

同時に、この言い方の中に、あたかも、
自分自身が批判されることを
回避する如く、素早く理解を示している
そんな姿が見えるような気もしました。

 

マーガレットさん。
娘さんのせいではない?

 

たとえ洗濯機が目の前にあるのに、
洋服を入れるさえできなくても
ですか?

 

「...。そうかもしれません。」

 

では、マーガレットさんは、娘さんの
家事、行動能力が5-7歳くらい
であるという考え方について
改めて、どう受け取られますか?

 

「...。」

 

馬鹿々々しい、でしょうかね?

 

ここでマーガレットさん、
ふっ、と一瞬笑い、
突如として、ご自分のお母様のお話しを
始められました。

 

「私の母は、第一印象が、
 氷のように冷たい人だと
 よく人から聞きます。
 本当は暖かい人なんだけれど。」

 

お母様は、批判や皮肉を
される方ですか?

 

「しょっちゅうです。
 ほぼ普段の会話全部に
 皮肉がちりばめられていて、
 私たち姉妹も皆、こんな感じです。」

 

こんな感じ、とは?

 

「人をあざ笑うっていうか。
 本人たちも、そんなつもりも
 ないでやっているんですが、
 結構笑いながら、人を批判することが
 多い気がします。」

 

それは、マーガレットさんご自身が
その環境の中で普通に育ってこられた、
というお話ですか?

 

「そうだと思ます。
 普段、考えたことはなかったけれど。」

 

ご自分の中の、
普段考えていなかった行動に
ここで気付かれた。

 

「はい。」

 

マーガレットさんの正直さが
功を奏したようです。

 

それならば、これからきっと、

お母さまやご姉妹の話され方や
自分自身の行動が、もっともっと意識的に
目につくようになると思いますよ。

 

「あ、その感覚、わかります。」

 

そう言って、マーガレットさんは、
今までのセラピーの過程でも、


普段、考えずに自動的に行っていたことが、
自分や人を傷つけていたと知った途端に、


無意識の行動がどんどん意識化され
気にならずに居られなくなって、


自分の行動も変わって行った、という

ご経験についてお話ししてくださいました。

 

このマーガレットさんも、
以前ご紹介したジョーさんと同じく、
他人にもご自分にも厳しい人
のようです。

 

その理由が、実は
お母さまとの普段の接し方と
関係があったのかもしれない。

 

そんな深い読みを、
マーガレットさんはこの度、
すばやく披露してくださったのでした。


ところで、マーガレットさんは、
最後にこうもおっしゃいました。


「前回すでに全部わかったと
 思ったんですけれど。
 なかなか難しいものですね。」

 

でも、毎回何歩も進んで
おられますよね。

 

「なんで、一気にわからないので
しょうか?」

 

毎回が、階段上り、
そんな感じですかね。

 

心の階段は飛ばして登ることはできず、
成長段階のように、
一つ一つクリアしてこそ、
上に進むことができる、といいましょうか。

 

でも、深く考え、逃げるでもなく、
正面から向き合って
正直に答えられるマーガレットさん。

 

ずいぶん山の高いところまで
来られましたね。

 

「はい。そう思えます。」

 

上からの景色は如何ですか?

 

「下にいた頃より、気分いいです。」
「もっと気分良くなりたいです。」

 

行けますか?

 

「行けます。
 ぜんぜん行けます。」

 

以前よりも、うまくいっている、
以前よりも、
いろいろが見えるようになっている。
以前よりも、晴れやかな気分である。

 

そのような感覚を何度も得たからこそ、
さらに前に進むことも、
ためらわずにできる、

 

そうおっしゃっているように聞こえました。

 

階段上り、ぜひ応援しています。

前回書かせていただいた、

州に子供を取られてしまったナンシーさん。

 

生い立ちはといえば、

自分の両親は、結婚していなく、

自分の実の父親が誰かもわからない。

そして母親はアルコール依存症だった為に

ある時期から、弟とともに里親に出された

とのこと。

 

その里親のマザーとファーザーの元で

成人になるまで育ったという人です。

 

その里親のファーザーが

アルコール依存症で、

それだけではなく、

ナンシーさんに性的虐待を

していた模様です。

 

里親のマザーは、驚いたことに

実は州の児童保護局のスタッフ、

それでありながら、

夫の子供への虐待を全く無視し続け、

自分自身も夫から暴力を

受け続けていたとの事。

 

ナンシーさんは、兄も一緒に

里親に出されたものの、

兄は、ファーザーから暴力を度々受けて

いたそうです。

ナンシーさんの、その場での「役割」とは

怖いファーザーに歯向かうこともできず、

いつも「ナース」のような役割でもって、

兄の傷の手当をしていたとのことです。

 

つまり、子供の頃から、「世話役」を

ずっとしていたそうです。

 

そして、里親のファーザーが、

夏に庭のデッキでビールを飲みながら、

ティーンエージャーになったナンシーさんの

着替えているところを、

窓の外から、覗いてにやにやしていても、

決してブラインダーを下したり、

「見ないでくれ」というメッセージを

送ることが出来なかった。

 

それも、後からくる父親からの

復讐が怖かったから、とのこと。

 

そんな話をセラピーでしてきました。

 

その「世話役」をどこに行っても

買って出るナンシーさん。

 

自分の子供が

州の児童保護局に取られて以来、

自分の心の弱さや

人に「NO」と言うことの難しさについて

今まで以上に深く

掘り下げて考えるようになりました。

 

けれど、クセというか、習慣というか、

考え方や行動は、なかなか簡単には

変わらないものの様です。

 

3人の子供に会えなくなった後でも、

セラピーの中で、

「昨日ね、チャールスっていうホームレスの人が、 

 私の家に泊まったの。」などと、

話したりしています。

 

「もう一晩だけ、って約束で、

 今晩も別の部屋で泊めてあげる。」

とも言われます。

 

なぜですか?

と聞いてみると、

 

「困っている人を助けるのは、

悪いことではないですよね。」

と言った後、

 

「今回は、ちゃんと

私の部屋とは別にしたし。」

と言われます。

 

では、ナンシーさん。

伺います。

 

ピザ屋のお兄さんは店員が少なくて

困っていた。

だから、助けた。

その結果、ただ働きさせられて、

暴力まで振るわれた。

 

性犯罪者のクリスさんは

一人で孤独だった。

だから、一緒に過ごした。

その結果、我が息子が犯された。

 

そして今回は、住むところがなくて

困っている人がいた。

そこでナンシーさんは、助けた、

というわけですね。

 

この3つの中に、

何か共通のパターンは見えませんか?

 

と伺ってみました。

 

「...。」

 

しばらく黙ったあと、ナンシーさん、

叫びました。

 

「Shit!!」

 

自分を責める言葉を吐きながら、

「今からすぐ家に帰って、

 荷物を廊下に出してくる。」

と言って、席を立って帰られました。

 

 

その次からのセッションでは、

ナンシーさんはセラピーに

いよいよ改めて本腰を入れられました。

 

そこでは、日常に見える

木の「枝葉」に見られる、パターンではなく、

木の「根」の部分について、

さまざまな角度から、

掘り下げていただきました。

 

昔の事。

自分の実の母親の事。

「No」と言えない、マザーのこと。

自分を性的嫌がらせした、ファーザーのこと。

 

心の中を開拓していく内に、

とりわけファーザーへの怒りが

沢山放出されている様子でした。

 

「あんな酷いことをしても、翌日は

『酔っぱらっている時のことは覚えていない』

って言って、私にも『だから忘れろ』って

言うんです。」

 

怒りの放電はしばらく続きました。

 

数か月後、徐々に、

そのファーザーに対し、

ちょっと違う気持ちの言葉も出始め、

心の中の、こんな記憶を見つけました。

 

「ファーザーはある日、「友人」を

連れてきたんです。」

 

「ファーザーは言いました。

『その友人は、実は逃亡中で、

家にしばらくひっそりとしていなくては

いけない。』と。」

 

「『だから、子供たちは、

学校の友人や先生にも誰にも、

家に「客」が滞在していることを

口外しないように。』と

ファーザーから言われました。」

 

「色々後からファーザーに聞いてみると、

その「友人」は優しくて良い人間である。

ただ、「間違い」を犯してしまった。

それが理由で、警察に追われている。

見つかったら、刑務所に入れられてしまい、

おそらく、長い間もしくは一生、出てこられない。

そんなことを言っていたんです。」

 

「けれど、人間は誰しも

間違いを犯すものであり、

『Everybody needs a second chance.』って

言っていたのは、強く印象に残っています。」

 

つまり、もう一度チャンスを与える必要がある。

というメッセージ。

 

「ファーザーは言いました。

『警察は非情だ。

おそらく彼の人間性を理解しようとは

しないだろう。

だから俺が、彼に

もう一度生き直すチャンスを

与えてやろうと思う。』って。」

 

幼い心に深く刻まれた、

「人を救う慈悲」として

理解してしまったお話し。

 

この話はナンシーさんにとって、

「いつも憎んでいたファーザーを 

 めずらしく尊敬した出来事だった」

といのこと。

 

そうでしたか、ナンシーさん。

そんなことがあったのですね。

 

ところで、ナンシーさん。

このファーザーのお話と、

ご自分がクリスさんにした事の

繋がりは見えますか?

 

「え?」

 

ナンシーさんは、犯罪者をかくまうことの

「必要性」を、里親のお父様から、

「学習」された、というお話しですよね。

 

「...。」

 

しばらく黙っていたナンシーさん。

 

ゆっくりと頭をもたげて

さらなるお話を始めました。

 

ナンシーさん、犯罪者をかくまうのは

実は

クリスさんが初めてではなかったとのこと。

 

高校生の頃にも、

付き合っていた彼が目の前で万引きを

するのを、見て見ぬふりをしたり、

車を盗んだ人をかくまう内に付き合って、

一緒に住んだり、

 

小さいものから大きいものまで、

色々な過去のお話が

出てきました。

 

そこで、

どうしてでしょうね?

と聞いてみました。

 

するとナンシーさん。

「Everybody needs a second chance.」

 

そしてこんなことも。

「これはキリスト教の教えでもあります。」

 

そうですか。

それではナンシーさん。

 

これからも、困っている人に

チャンスを与える役目を

担い続けていきたいですか?

 

「...。もう嫌。」

「それで、私の子供たちが取られた。」

 

静かに沸き起こる怒りが感じられました。

 

「クリスはとっくに釈放されて

道を歩いているのに!」

 

「子供たちは私から引き離されて、

電話の向こうで泣いている!

なんで!?」

 

「私は教えに従っただけ。

父の教えと、神の教えに

従っただけだった!」

 

「...今でもそう思いたい。

私は悪くなかったって。」

 

「でも、それだと子供たちに

説明がつかない。」

 

そういって、しばらくの間

泣き続けておられました。

 

それから、

こんなことを言っておられました。

 

「怖かった。ファーザーが。」

 

目の前で兄やマザーを殴り倒され

血だらけになるのを見てきて、

「断る」ことへの恐怖を

ずっと持ちづづけていた。

 

そんなお話をされました。

 

それから、しばらくして、こんなことも。

「寂しかった。」

 

寂しかったから、

人に必要とされたかった、と。

 

「子供が出来て、

毎日騒がしければ、

孤独も癒されるのかと思ったものの、

寂しさは消えなかった気がする。」

 

「しかも、子供がどんどん大きくなって

自分以外のところで活動する時間が増えて、

置いてきぼりにされそうで、怖い。」

 

「それも関係あるのかもしれない。」

と言います。

 

虐待を受けたり里親の元で育ち、

我が子達まで取られてしまった

ナンシーさんのお話し。

 

私がここで思ったことは、

内容は騒然とする

珍しい話であるにせよ、

ナンシーさんの問題は、

私達自身や周りの人が

抱える心の問題と、

何一つ変わらない、

そんな気がしました。

 

 

子供が里親に収まって、数か月後。

 

お子さんと週末に数時間、

会うことが許されたそうです。

 

その後も、

娘さんが里親の家を飛び出して

里親の変更を申請したり、

ナンシーさんが娘を

教会に行くように申請しながら、

子供との面会時間を増やそうとしたりと、

色々と右往左往があったものの、

娘さんの新しい里親も見つかって、

なんとか落ち着いたようです。

 

そして、

独り暮らし慣れてきたナンシーさんは

子離れして自由になった時間を

徐々に教会でボランティアをしたり、

お得意の編み物で作った作品を

教会や知り合いを通じて売ったりして、

新しい目的を持って、

生き生きと過ごされています。

 

そして今でも、

男の人の誘惑にも、

自分の心の中の誘惑や恐怖にも、

ずっと正面から戦うことによって、

以前より自信を持って

過ごしておられる様です。

 

「私は何も悪いことはしていない。

親切にしただけなのに!何故!?

子供を返して!!」

 

ナンシーさんは、半年前、

鬱病とADHD、「その他諸々」の理由で、

私のところに通い始められました。

 

結婚をしていない彼女には

それぞれ父親の違う、

2人の子供がいます。

11歳次男のT君は、

13歳長女のKちゃん。

 

正確に言うと3人いるそうですが、

長男は「ある事情」で

あと2年経って成人になるまで

会うことができないのだとか。

 

そんな、ナンシーさん。

 

ふとした時に、いつも

誰かのお世話をしている、

お世話好きの人です。

 

例えば、

最近行き始めたピザ屋さん。

結構イケメンの店長に、

喋り始めたら、いい感じだった、とか。

 

ナンシーさんも、

子供のいない時は、

どうせ暇だし

店長と話をしているほうが楽しいし、と

通うようになったそうです。

 

まじめに働いている店長さん。

雇ったスタッフ達が

しょっちゅう休んだり、

すぐにやめてしまったり。

 

忙しそうな店長さんは

一人でピザやサブを作り、

電話も取って、

お客さんの相手もし、時には

出前もしなくてはいけない。

 

なので「お客」でありながら、

ナンシーさんは

時折、カウンターから客席まで

ピザを運ぶ手伝いなどを、

してあげるのだとか。

 

そんな話を

セラピーでしていたかと思うと、

次の週に、アポイントメントの直前に

ナンシーさんから電話が

かかってきました。

 

「今日セラピーに行けない。

ピザ屋の手伝いがあるから。」

と、突然アポのキャンセルです。

 

その次のセッションでは、

なんかそわそわ。

「実は彼と、つき合っている。」

という話になりました。

 

ナンシーさん、お店のお手伝いでは、

お給料がでているのですか? 

と聞けば、

 

「私が手伝いたいから、

 お金はいらないの。」

と言われます。

 

行く場所ができたり

会う人ができると、一時はみなさん

幸せそうな顔になられます。

 

けれど、しばらくすると、

現実を帯びた話になってきます。

 

「今日もセラピーキャンセルする。」

との電話が。

 

どうしましたか?と聞けば、

「今度話す。

いまは店の手伝いがあるから。」

 

なんだか曇った声です。

 

一般的に、

以前にセラピーを受けたことのない、

クライエントさん達の場合、

通い始めのころは、

「セラピーはなくても生きていけるもの」

だから、「休んでもやめても変わらない」

と、思いがちのようです。

 

そのキャンセルする瞬間は、

セラピーに行き始めた理由を

忘れようとしてしまっている様子。

 

セラピーを始めた理由が、

症状を改善するという目的の

「治療」であるということも。

 

又、

セラピー以外のものを優先する

クライエントさんの中には、

「人のニーズを優先」して、

「自分のニーズを犠牲」にする、

タイプの人もよく見られます。

 

「自己犠牲」は、日本の文化では

美化されがちではありますが、

「自分の治療より、人のお世話を優先」

となれば

事情は違う、といいましょうか。

 

「自己犠牲」の何がまずいのか、

それをまだ理解していない

ナンシーさん。

 

次のセッションでは、

震えておられました。

 

どうかしましたか?

と聞いてみると、

「殴られた。」と言われます。

 

お店の仕事に遅れていくと言ったら、

店長に怒鳴られた。

仕事にミスがあったら、殴られた。

 

「もう行きたくない。」

セラピーではそういわれるナンシーさん。

 

にもかかわらず、次のセッションには、

またキャンセルの電話があり、

「彼はいい人だし、私にとって大事。」

とおっしゃいます。

 

別れるという話にでも触れようものなら、

非常な抵抗でもって、

なんとかしてその関係をつなげようと

頑張るのは目に見えています。

 

実はナンシーさんの場合、

このような男性との関係のパターンは、

一度ではなかった模様です。

 

ナンシーさんにとって

人生の最大の危機となった

次のお話も。

 

ある日、ナンシーさんの息子さんT君が

家に「お友達」を連れてきたと言います。

それも、大人の男の人だそうです。

 

ナンシーさんは、警戒心を持って、

「誰ですか?息子に何の用ですか?」

と問いかけたそうです。

 

そうしたら、その男性、クリスさんは、

非常に親切な様子で、

『息子さんが学校からの

道を間違えて迷った様子』だったから、

『家に送ってあげたのだ』

と説明したそうです。

 

そして、悪い人でもなさそうだから、

度々家に招いて、家族と一緒に

時間を過ごし始めたとのこと。

 

それからしばらくたった数週間後。

 

真っ青になったナンシーさん。

セラピーで、何かを言いにくそうにしています。

 

何かと聞いても、なかなか答えられません。

その日は何も言わずに、別の事をお話して

帰られました。

 

次の週になって、ようやく話始めた内容は、

といえば。。。

 

息子が連れてきたクリスという男は、

”Level 3 Sex offender”。

つまり州が「非常に危険」と認知した

「性犯罪者」である

と、知ってしまった、

ということでした。

 

”Level 3”というのは、

「性犯罪を繰り返す危険性が高い人」

の事を指し、

それに認定された性犯罪者の

住居位置や経歴などの情報が、

住民を守るために、

州のウェブサイトなどで

一般公開されてる模様です。

 

ナンシーさんは、その事実を

学校からたまたま聞いて

知ったとの事でした。

 

で、その時のセッションでは

「クリスを、もう息子に近づかせない。」と

言っておられました。

 

 

それから数か月後。

なぜか、州の児童保護局から、

私のオフィスに連絡が入りました。

 

「ナンシーD の件についてですが、

 あなたは彼女のセラピストですか?

 いくつか質問させてください。」

 

その時は、いったい何故、私に

ナンシーさんについて、児童保護局が

連絡をしてきたのかが、わかりませんでした。

 

「ナンシーの息子さんのT君が

 性犯罪の被害に遭ったので、

 一時的にナンシーの親権を剥奪します。

 調査はこれから行われます。」

 

え?

 

驚いたのは私です。

 

一体何があったのか?

それを知ったのは、それから数週間後に

ナンシーさんがセラピーに戻ってきて、

本人の口から説明をした時でした。

 

来るや否や、一心不乱に泣き出す彼女。

「私は騙されただけ。

 何も子供を取らなくったって!」

 

ワーッっとしばらく泣いた後、

こんな長いお話を、されました。

 

「息子の誕生日会を、家で催したのですが、

その時に、クリスも呼んだのです。

息子が呼びたがっていたので。」

 

「それに、クリスはいい人以外には

考えられなかったし。」

と。

 

「クリスは友達が一人も居ないって

言っていたし。

寂しそうだった。

寂しそうな人の気持ちはわかります。」

 

といいながら、

『性犯罪者』ということは

頭の端では考えてはいたものの、

その言葉が当てはまらないほどに、

理解しあえる人だった、と言います。

 

そして、一波乱。

 

「誕生日の日、

クリス以外にも、息子の友達とその親達、

そして、(ナンシーさんが当時付き合っていた)

彼も来たんです。」

 

「彼はきっと、

クリスの存在を見た途端、

「誰か知らない男が居る」ことに反応する、

そう思ったので、

クリスのことは何も言いませんでした。」

 

でも、反応したのはクリスさんの方

だったとのことです。

 

「クリスは、

『男がいたのか。

 俺の事をバラしたら、

 承知しないからな。』

って言って、

キッチンナイフを

私の方に向けていました。」

 

体がガクガク震えて止まらなかった

とのこと。

 

クリスさんは

そのままドアから外へと抜けて

帰って行ったとのこと。

 

震え涙目ながらに

お話しするナンシーさん。

 

お話しは続きます。

 

それから数日後のこと。

 

夕方クリスさんが遊びに来た。

断るに断り切れなかったという

ナンシーさん。

 

「ちょうど夕食の時間だったので、

子供たちと一緒に、

食事を済ませました。」

 

そして、ナンシーさんがトイレに

行っていた時の出来事。

 

「しばらくしてトイレから出てきたら。」

 

真っ青な顔のナンシーさん。

 

「息子のパンツが下がった状態で。。。

 

息子の太腿の位置にクリスの顔があった。」

 

その一瞬に驚愕して激怒したナンシーさんは、

怒鳴り散らして、クリスさんを追い払った、

とのこと。

 

「信じられない!信用していたのに!

 親切にもしたのに、裏切るなんて!」

 

ナンシーさんのクリスさんに対する怒りが

セラピーの中で噴火しました。

 

そして、児童保護局の対応は、

「母親が子供を守っていない」為に

「子供に被害が及んだ」。

従って

母親の権利を保持させるには危険、

という運びになってしまった、と

説明してくれました。。

 

児童保護局も罵倒する

ナンシーさん。

 

しかしながら、

私は後から聞いて知ったのですが、

児童保護局からナンシーさんへ

の調査が入ったのは、なんと

今回以外に、以前に数回

あったのだとか。

 

長男と一緒に住んでいない理由は

「自分の責任ではない」と話していた

ナンシーさんですが、

実は、長男が幼少の頃、骨折し、

ナンシーさんは男の家に入り浸っていて、

電話も取らずに過ごしていた為、

救急病院から連絡が入っても、

まったく気づかなかったらしいとの事。

 

そして似たようなことが

半年に2回も

起こってしまったそうなのです。

 

そのような男性の付き合いに

流されるナンシーさんの為、

長男は、州の判決により

里子として父方のおばあさんの家に

預けられてしまったそうです。

 

私からナンシーさんに伺います。

 

どうしてセラピーで

クリスさんのことを

お話しされなかったのですか?

 

「先生に嫌われると思ったし、

 クリスと離れろと言われると思ったから。」

 

「私は、今まで誰と親しくしても、 

 周りの人間は、『あいつはやばい』って

 反対ばかりされてきた。」

 

「それにセラピーで話すと、

児童保護局に連絡されてしまうと

思ったから。」

 

そうですか。

 

事実を隠してでも、

相手と一緒に居たかったのですね。

 

別にクリスさんと付き合っていた

というわけでもなさそうなのに。

 

ここまで引きずってしまった

本当の理由とは

何なのでしょう。

 

実はそれには

もっともっと、深い原因が

あった様子でした。

 

今回は長いので、

続きはまた書かせていただきます。

以前書かせていただいた、

ポールさんのお話です。


奥さんと何か月も、親密な関係がなかったという
ポールさんの前回のセッション


あの時点での結論は、


愛と切り離されたセックスは、
栄養のないポテトチップスと同じく、
なんとなく欲しくなって、
食べても食べても後を引くものの、
満足に至ることのできない
ドラッグと同じようなものある、という話。


同時に、
ポールさんの奥さんへの強い要求は、
ポールさんが幼少の頃、
愛や温もり、信頼や深い理解を
親からもらえなかったために
出来てしまった心の穴を、
奥さんに求めている形で
埋めようとしているのでは、
というお話でした。


つまり、愛情のかけらもない
過酷な環境でそだったポールさんが、
愛情がなしのセックスを
何度も何度も
求めないと気が済まないのは、


ポテトチップスに例えると。。。


愛情のこもった手作りご飯を
食べたことがなくて、
いつもお腹をすかしていた少年が、
青年になって、
心に開いた穴をふさぐがごとく
手軽に入るポテトチップスばかり食べて
肥満状態になりながらも、
まだ満たされていない気持ちがしている。


そんな状態かもしれないというお話し。


今日、セラピーにいらっしゃるや否や、
ポールさんは、いきなり立て続けに、
先日「学んだこと」について、

お話始められました。


「前回、先生が言った
 『昔の飢えていた自分』について
 あの後、家に帰って考えてみた。」

とポールさん。


以前、自分はものすごいエネルギーをもって
女性に「できるだけ激しく長い」パフォーマンスを
行っていた。
それは、そうすれば女性が
自分に、病みつきになり、
自分に戻ってきてくれるから。

戻ってきてくれないことが、不安だった。

 

 そして、
「先生は俺が、セックス中毒だと言った。
 そんなはずがない、と思ったんだけれど、
 自分のセックスは、きっと

 愛がなくて、体だけの 「一時的な満足」。

 でもそれは長続きしないから
 もっと欲しい、もっと欲しい、と
 2-3時間置きでないと満足しなかった。
 そういうことなのかもしれない。」


との分析。鋭いです。


ポールさん、
頭の中が一杯で、それを全部喋って
吐き出したい!そんな感じの勢いで
お話しされます。


「女達は、『もっともっと』と、
 ねだりながら、戻ってきた。
 でも、人生で俺を拒否したのは、
 妻が初めてだった。」


「そんな妻が憎らしかった。

 本当に憎らしくて、殺したかった。」


「でも考えたら、他の女達は、
 ドラッグみたいに、一時的な快感だけの
 中身のないセックスを求めていたから
 俺に戻ってきたがっていたのか、と
 気づいたんだ。」


素晴らしい分析です。ポールさん。


「前から俺は、なんだか他の女達に
 利用されるような気はしていた。
 きっと、今思えば、

 彼女たちは、俺を愛していたんじゃない。
 快感が欲しかっただけなんだ。
 だから

 俺は物扱いだったんだ。」


なるほど。


「妻が自分を拒否するのは、
 本当に悔しかった。

 けれど、
 妻だけは俺を物扱いしていない。
 でも、だからこそ受け入れて
 欲しかったのかもしれない。」


拍手!
こんなにセラピーで得たものを
さらに自分で考えて、掘り下げる人は
なかなかいません。

 

 「そう思ったら、なんか

スッキリしちゃって。」

「妻に怒る気が、消えている。」

 

そこで聞いてみました。

ポールさんは、奥さんにその

「発見」について語られましたか?

 

「言っていない。」

「お互いに腫れ物にはさわらないように

しているから。」

 

奥さんはきっと壁を作って、

守りに入ってしまっているのだと

おっしゃっていましたね。

 

「俺を避けている。」

 

もしお話をされたら、奥さんは

どんな反応をすると思われますか?

 

「...。」

「妻が俺の話を聞いて、

 怒るということは、ないかもしれない。」

 

相手の反応を恐れていた様子の

ポールさん。

 

「そうか、俺がもう、妻のことを

憎んでいないというのは

知らせた方がいいかもしれない。」

 

そんな雰囲気ですね。

奥さんは、ポールさんの押しの強さや

見えない怒りを感じて

壁を作って守りに入っていたのだとしたら、

ポールさんの「気づき」を聞いて

どう思われるでしょう?

 

「安心するかも。」

 

そんなポールさん。
こんなことも言っておられました。

 

「自分はどんどん泣き虫になって
 弱くなっているけれど、
 それでもいい。今までよりはいい。」

 

「弱くなっている」?

その点の考え方について、
もう一度とお話しさせていただいて
いいですか?

と伺いました。


普通は、幼い頃にひどい目に遭ったり
トラウマのある人は、
その頃のお話を簡単にはしたらない人の方が
多いのです。


嫌な記憶は、蓋をしておきたい
というのは、人間の防衛本能

なのだそうです。

古い傷を開いて膿を出す作業は
誰でも痛いはず。


昔の怖くて痛い記憶に立ち戻って、
泣くこともできるほどに
当時の感情もしっかり思い出して
傷口を掘り起こす。


そんなことが出来る人は、
勇気のある、強い人、と言えるのでは
ないでしょうか。


逆に、昔のことなど

なかったことにして、
あたかも平気に振る舞うことは、
弱い人のすることかもしれません。


「ふーん。」
「そんな風に考えたことはなかった。」
と再び言いながら、

しばらく黙るポールさん。


「それは頭ではわかった。」


「けれど、子供の頃から
 父親に「弱虫め」と言われてきた。」

 

「それに、父親にはとうてい怖くて、
 立ち向かうことが出来なかった。」


なるほど。


子供の頃の経験の影響力の強さは
かなり大きくて、根強いものがあるようですね。


子供にとっては、

親や周りの人間の言うことで
自分の自分に対する評価が

決まってしまうほど。


なので、いまだに
「父親の方が、実は自分より

 勇気のない弱い人間」
と思うことなんて、
なかなかできない、とのこと。


わかりました。


時間をかけて、ゆっくりいきませんか、
ポールさん。

 

歩き続けている限り、

いずれは必ず、

ポールの行きたい山の頂上へ、

行くことはできるのですから。


「だめ。今すぐ行きたい。」(笑)


だから。(笑)

セラピーは薬とは
違うんですってば。(笑)


「わかっているけれど。」(笑)


「答えに急ぐ」、という気持ちは
とりあえず、セラピー内では

しまっておいてくださりませ。(笑)


「それが一番、つらいです。」


ドラッグを乱用した経験のあるポールさん。

彼の頭の回路は、いつしか

即効性を求めるようになってしまっていて、
「おちついてゆっくり」、答えを見つけていくことは
かなり厳しいことのようです。


早く回復したいから、
どんなに痛くても、
先へ先へと突き進もうとするポールさん。


同時に、
まるで、顔面にパンチを受けまくっても、
しっかり目を開けて、
先を見据えて闘い続ける、
そんな強さも垣間見られます。


そんな風にクライエントさんが

闘っておられる姿は
なかなか感動的でもあります。


そしてそれを

応援できる立場にいる私は、
光栄だと感じています。

 

ポールさん。

ぜひ、山の頂上に向かって

歩み続けてください。

 

***

 

関連ブログ

 

以前のブログ

俺と何か月も寝たがらない妻が憎らしい。ポールさんの場合・1。

 

この次のポールさんのステップ

許せない親と同じ行動をしているらしい自分。ポールさんの場合・5。