前回書かせていただいた
いつも何かイベントがあると
それまでの数か月を心配し、
眠ることが出来なかった
環境が変わっても、
似たような心配の形が
しばらく消えませんでした。
そんなスーザンさんの
表からは見えない、
根本的な理由を
探り見つけていくお話しを
書かせていただいたのが
それ以来、
スーザンさんは随分
変わられました。
スーザンさんが、
ご自分の過去のお話をされたのは、
セラピーに来始めてから、
実に数年後です。
しばらく口を堅くして
話されなかった事とは、
スーザンさんのお母さまに対する
お気持ちに関してでした。
過去の話に触れたことは
以前も何度もありました。
けれど、普段は、
「母は良い人だった。」と
言うのみ。
けれど、それから時々、
お母さまのお話をしかけ、
言い切らずに終わることも
度々ありました。
「母はもう死んでしまったし。」
「過去の事だし。」と。
そして、今日から2か月前の
ある日の事。
「母の悪口は言いたくない。」
そう言いながらも、
スーザンさんは何かを
言いたそうでした。
まるで、体の中で
何かがうごめいて、膨らんで、
今にも飛び出してきそうな
雰囲気。
スーザンさん。
何かお話ししたいことが
あるのではないですか?
という私に対して、彼女は
「母のせいじゃない。
母も苦労した人だったから。」
とおっしゃいました。
スーザンさん。
何かお話ししたいことが
あるみたいですね。
お母さまのお気持ちについて
お話しすることは、
大切です。
これは、
お母さまの「悪口」を言うこと
ではなく、
ご自分が過去に持たれた
お気持ちに向き合って
ご自分でそれを受け止める為に
必要な大事なステップ
なのではないでしょうか?
私がそう言った途端、
彼女は、何か納得したような
表情をして、こんな風に
お話しされはじめました。
「私の母は、いつも
『自分』が中心でした。」
「私はもう少しのところで
レイプをされそうになったこと
があって、警察が介入したことが
あるんです。」
「でも、その時の母の様子は、
『娘が危ないところだった』
という話し方ではなく、
『レイプされそうだった母親の
私は、大変な思いをした。』」
と言ったように、常に自分が
中心でした。」
レイプしようと襲い掛かってくる
相手に「本当に怖い思いをした」
という心の処理をすることも
出来ずに、ストレス一杯の母親の
心を収めることに一生懸命だった
というスーザンさん。
「ずっと鬱だった母に、
私が子供の頃すがるなんて
考えたこともありませんでした。」
「心細くても、『助けて』なんて
母に言ったら、「私が大変なのに」
とか、「どうして私の足手まといに
なるの」とか、言われました。」
「セラピーに来てから、先生に
『子供がすがるのは当たり前』と
言われたから、最近はそうなのかと
思えるようになりましたけれど、
あの頃は、自分が悪い子でだから、
母がイライラしているのだと
思っていました。」
ここまで言い切られたスーザンさん。
長年、口を閉ざした人が、
セラピーでいきなり古傷の感情を
出した場合、後からしばらく
痛みを思い出してつらいことも
あるようです。
けれど、スーザンさんの場合、
伺ってみたところ、
「気分良くなった。」
「何かいつも、心を下の方へ
重く引っ張っていたものが
あったのだけれど、やっとそれを
外すことができた感じ。」
とおっしゃっていました。
それから、数週間後、
スーザンさんは、次々と
新しいことに
踏み出していかれました。
鬱から立ち上がった者として、
ある会場でスピーチをする。
それのコンテストに出す文章を
書き始めたり。
精神疾患の人の為の、
仕事のトレーニングをする場で
学んでいたスーザンさん。
今度はトレーニングする側として
ボランティアを始め、
さらに「上の段階」へ行くために、
ある審査へ申し込みをされたり。
「先生、この文章見てください。
うまく書けないから、
何回も書き直しちゃった。」
「昨日、審査に落ちた時の事を
考えたら、緊張しちゃて。」
そう言われながら
見せてくださった文章は、
細かな配慮が配られた、
底力の強い印象を受けました。
さらに、今後
「万が一、鬱が戻ってきた場合」
を自分で想定され、
コンテストに行かれる前に
事前に精神科医と予約を取り、
薬を手に入れたり。
以前は色々考えても、
体が動かない、という様子でしたが、
今は随分と行動力をつけられた
印象です。
「なんか、また心配性が
戻ってきちゃうかも。
薬飲んだ方が、いいですかね?」
そうおっしゃる、けれど、
以前のように、
イベントの当日まで、
事細かに考えだしたら、
すべてが解決するまで
気が収まらない、
という様子は見られません。
むしろ、長い間過去から
引きずっていた感情が
ある時点で処理されたためか、
今まで持っておられた「恐れ」
のようなものが消え、
新たな挑戦をするだけの力が
備わってきておられる印象です。
そこで私は申し上げました。
この文章も、行動力も、
今のスーザンさんは
鬱を抱えているようには
見えませんよ。
どちらかというと、
精神的「筋肉」を徐々に
つけておられるという印象です。
と。
するとスーザンさん。
あ。
という顔をされ、
「そっか。」
「ちょっとした緊張を感じると
すぐに鬱だと思っちゃうのかも。」
「でも、確かに。
数か月前に本当に鬱々していた時は、
私、文章なんて
絶対に書けなかった。」
そうおっしゃいました。
コンテストに出る前に
緊張するのは、誰でも
自然なのではないでしょうか?
と私が申し上げると、
「そうか。」と言われてから、
「私、最近歩き始めたんです。」
と、スーザンさんはおっしゃったのです。
リウマチで腰と足の痛みを
抱えると同時に、
肥満型体系の彼女は、
長い間、体を動かすことを
控えておられました。
家にこもると鬱が悪化する
というのはわかっていても、
彼女は、体の痛みを避けるために
家にこもって
悪循環に陥っていた時期が
長かったのも事実です。
ところが、コンテストに出場する
という目的が出来て以来、
ずっと予約を入れなかった、
フィジカル・セラピーも
週一回受けはじめ、
コンテスト会場で、
不自由なしに歩けるようにと、
フィジカル・セラピストを味方につけて
体力をつけておられるとの事。
そうですか、体も筋肉を
つけておられるのですね。
以前には見られなかった、
やる気が、症状改善にも
結びついているんですね。
これは、良い意味での
「雪だるま式、改善」とでも
言いましょうか?
軌道に乗ってきたスーザンさん。
「前はコンテストに出るなんて、
不合格の時の落ち込みようを
想像しただけで怖かった。」
とスーザンさん。
ところが、
「今は、コンテストの為に
歩いているし、それだけで
既に嬉しい。
だから、不合格でもきっと、
落胆しない気がする。」
と前向きの言葉。
「それに、落ちたら、審査員に
何が悪かったか、聞けば良いし、
来年その部分を改善して
また受ければよいから。」とも。
人と接することもなかなか
難しかったスーザンさん。
これが本来の彼女の姿なのか
と思いました。
辛かった時期が長かった為、
その渦中にいらした時は、
心に思うことが
沢山あったのでしょう。
やりたくてもできない、
という以前に、
やりたいという気持ちが
起こらない、
そんな時期を
かなりの長い間過ごされ、
今は何かに吹っ切れたように、
活動され始めております。
もう一度、伺いました。
お母さまのお話を
セラピーでされたあの日、
今思い返して、
どんな感じでしたか?
「あれが私の
ターニングポイントだった。」
「やっとココナッツの実を
割ることができた。」
「ココナッツの実って
固くてなかなか
割れないじゃない?」
そんなことを言って
笑うスーザンさん。
新しい自分には
「まだ慣れない」けれど、
「ちょっと子供に返った気分」
なのだそうです。
そうですか。
こんなに穏やかな笑顔を
拝見して、私も嬉しい限りです。
コンテスト、ぜひ楽しんで
行っていらしてください。
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