心の歩み、さまざま -2ページ目

心の歩み、さまざま

米国マサチューセッツ州で、サイコ(心理)セラピーをしています。
そこら辺に転がっている、日常の色々。
心理学の視点、文化の視点から斬ってみると、また別の物が見えてくるかもしれません。

今日のポールさんは

怒っておられます。


なんでも、昨夜は、

30年来の友人ジェイさんと
初めて喧嘩をし、

それから「もう会わない」
ことに決めたのだとか。

 

事の初めは、

こんな状態だったそうです。

 

相手のジェイさんが、

病院で検査を受ける間、
数時間、犬を預かって欲しい

と言われたので、ポールさんは

快く引き受けたのだとか。

 

けれど、その犬は

非常に大きな声で鳴き、

飼い主を探し、
家にいるポールさんの息子の

寝る時間も差し迫っている状態。

 

ポールさんは病院の

ジェイさんのところへ、
「とりあえず、犬は車にいるけれど」
 何時頃に受け取れるのか?」
と聞きに行かれたのだとか。

 

ポールさんの奥さんも、
夜勤でそろそろ出かけなくてはいけない。

 

病院での検査は長引き、
夜11時を回っても、終わらない様子。

 

しかも、ジェイさんは、
「犬を車の中に置き去りにしないでくれ!」
とハラハラしていたとの事。

 

それに対し、
「動物より人間の方が大事」
と言われる
ポールさん。

 

ポールさんは、
「俺は息子を家に夜中
 一人で置いておくわけには
 行かない。」
と述べてから、

ジェイさんが大反対する中、
その犬を、ジェイさんの車に移し、
家に帰ったとの事。

 

ポールさんの言い分。

 

『数時間預かる』予定だったはずが、
夜中を回るまで、犬の世話をし、
妻は夜勤に遅刻し、

子供は眠れず、
俺は相当疲れた。

 

その上に、
ポールさんはジェイさんに
「裏切者」呼ばわりされた

のだとか。

 

ポールさん。
「人が親切にしてやったのに、
 感謝の気持ちもないどころか、
 裏切者呼ばわりするなんて。」
「友人だと思っていたのに、
 許せない!」 と

相当傷ついた、と言った様子です。


ところで、ポールさんに

ジェイさんとの関係や、背景を

もう少し伺ってみると、

 

ジェイさんは、兄弟が多いのに、
今現在は誰とも話をしなくなっており、
幼少の頃から、両親からも、兄弟からも、

粗悪な扱いを受けて育った、

とのこと。

 

ジェイさんは綺麗好きで、

いつも部屋はビシッと片付いている

一方で、
何か一つの物の場所が移動していると、
ピリピリとイラついてしまう、

 

そんなところがジェイさんには
あるとの事です。

 

世話好きのポールさん。

セラピーの中で、
自分以外の人の問題を
話始めると、止まりません。

 

ジェイさんには、幼い頃からの
色々な複雑な事情がある。

そう分かっていながらも、
今回のことは、とにかく許せない、
と言ったご様子でした。

 

「今度会ったら、殴り倒してやる。」

全く疑いもない様子で

語っておられます。

 

ポールさん。
それをしたら、どうなりますか?

「俺が牢獄へ行くことになる。」

そこで伺ってみます。


ポールさん。
さっき、『動物より人間の方が大事』
と言っておられました。

これについて、もう少し
お話しを聞かせてください。

 

「そんなの当たり前だ。
 おれは、息子を一人にすることは
 できないと言っているのに、
 ジェイは、犬を車に置いて行かないでくれ
 と言う。
 答えはもちろん、人間を優先する。」
「ジェイは、犬が盗まれると言っていたけれど、

 だいたいあんな大きくて吠える犬
 誰が堂々と持っていくって言うんだぃ?」

と言われました。

 

そしてさらに伺います。

ポールさんは動物をペットとして
飼ったことがありますか?

 

「ある。7歳から9歳の2年間、
 俺が世話していたコリー。」

 

そう言ってから、うつむいて
ため息を出されたポールさん。

 

「母親が売ってしまった。」

 

ポールさんの同意なしにですか?

 

「俺の母親は敢えて

 俺が惨めになることをした。」

 

「母親の浮気について、
 父親が俺に色々聞いてきて、
 正直に吐くまで、ずっと殴り続けられた。
 その浮気がバレて以来、
 母親は俺を恨んでいた。」

 

「そして、母親は、そのころ
 俺が母親とのセックスを
 拒み始めたから、
 罰として、俺を里親に出したんだ。」

 

そう言いながら、椅子の腕を
こぶしで叩き、上を向いて、
悔しそうに涙を浮かべるポールさん。

 

ポールさん。
ポールさんにとって、そのコリー犬は
どんな存在でしたか?

 

「家族の中で、唯一
 俺を裏切らない存在だった。」

 

家族以上の存在
ということですか?

 

「そうだ。家族以上だ。
 友達でもあり、相棒でもあった。」

 

それを売られた時の気持ちを
覚えていますか?

 

「あの時は、一度にいろんなことが
 あって。」

 

嗚咽して泣かれるポールさん。

 

「今だったら、母親を
 殺してやりたい。」

 

そう言われてから、ポールさんは、
今まで封じ込めていた感情を
吐き出されました。

 

犬が一匹くらいどうなったって

泣くんじゃない!

 

そんなメッセージを親から受けた
ポールさん。

 

当時どうしようもなくやるせなかった
自分の心を収めるには、
「犬なんて」と自分に
言い聞かせていたのかもしれない、

そんなことを言っておられました。

 

自分の痛い過去の気持ちを

見ないようにしていたポールさんには、

友人の似たようなペットに対する気持ちも

完璧に無視したかったのかもしれません。

 

ペットが家族と同じような存在である
ことは、実はわかっておられるのでは
ないのですか?

 

「...。」


いつもすぐに反応されるポールさんが
黙って下を向いたままです。

 

わかりました。

ポールさんは、傷ついた、と言って
おられるのですよね。

 

本来は、数時間だけ
めんどうを見るという約束だった。

それが、予定外の時間に
及んでしまい、


そこで、相手が
『迷惑をかけてごめん』と言うのでも
『長時間面倒を見てくれてありがとう』
と言うのでもなく、ポールさんを
『裏切者』と呼んだのですからね。

 

「本当だ!
 友達だと思ったから、
 世話してやったのに!」

 

「感謝の気持ちが一つもないなんて、
 俺に対する侮辱以外にの
 何物でもない!」

 

沢山の怒りを発しておられます。

 

奥様も遅刻してしまわれたのですね。

 

「妻は言っていた。
 俺は一つも悪くないって。」

 

そう言ってから、ポールさんは、
翌日我慢できなくなって

ジェイさんに電話をしてしまい、
口論に発展してしまった、

その時の内容について、
説明してくださいました。

 

要約すると、

ジェイさんの言い分は、
ポールさんの息子が

10歳になる小学生なら、
家に一人でいても良かったはずだ。
自分の犬より、息子を優先するなんて。

友人だったら、病院を出られない

自分の要望を聞いてくれても

良かったであろうに。

とのこと。

 

全てを受け入れてほしい

という感じがにじみ出ています。

 

一方、ポールさんは、
「俺の息子の話は一切するな!
 これ以上したら、おまえの
 腕をへし折ってやるからな。」
と言って、相手を黙らせたのだとか。

 

その後に、
「お前とは金輪際、一生
 口もききたくない。」と言って
別れたのだそうです。

 

この話の中に、

ポールさんをずっと
父親のように慕って、
頼ってきた、まだ精神的に
自立でき切れていない
ジェイさんの姿と、

 

自分の領域を犯されて、
戦闘態勢に入っている
ポールさんの姿が

垣間見れた気がしました。

 

以前のポールさんのお話を
読んでくださった方は
ご存知かもしれませんが、

 

ポールさんには、
心の領域を犯され続けた
厳しい過去があり、

 

その過去の傷に触れる度、
逆上してしまう傾向が
いまだにあります。

 

一方のジェイさんの過去は、
私には詳しくわかりませんが、

このお話を伺うだけでも、

 

実際のポールさんに対してではなく、
全ての要求を満たしてくれなかった
「過去の親か誰かによって
 できた古傷」に触れて
乱れている、と言う感じが
推測されます。


ポールさん。

私の推測は

間違っているかもしれませんが、
でも、どちらにしても、
ポールさんが、ジェイさんの反応を
個人的に心に沁み込ませる必要は
ないのではないでしょうか?

 

「え?」

 

ポールさん自身が

実はジェイさんにではなく、
ご自分の過去の親や兄弟のしたことに
反応しておられますよね。

 

同じように、もしジェイさんが、

ポールさんにではなく、
過去の親や兄弟のしたことに
反応しているのだとしたら?

 

「...。」

 

天井を見つめて、
考えるポールさん。

 

「そう言われたら、なんか
 怒らなくて良い気がしてきた。」

 

すっきりした理由を
ポールさんの言葉で
言ってみてください。

 

「だって、自分が怒っている理由が
 冷静に考えてみたら、
 昔、俺にひどい事をした親に
 向けているって、わかるし。」


「そう考えれば、
 ジェイの周りの家族も酷かったし
 ジェイは、ちょっと自分の思うことと違うと
 耐えられない性格だから、
 それは俺の問題とは関係ないわけだし。」

 

ポールさん、さすがです!

早いですね、いつも見渡すのが。
鋭いです。

 

「あ~♪ またスッキリしちゃった!」

 

では、ポールさん、
次にジェイさんに
道でバッタリ出会ったら
どうされますか?

 

みるみる内に、
怒りで込められるポールさんの目。

「殴り倒してしまいそうで怖い。」

 

何故ですか?

「わかんない。」

怒りと、やるせなさを
顔ににじませるポールさん。

 

では、ポールさん。
そんな気持ちになってしまった時の
黄金ルールは
なんでしたっけ?

 

「別の場所に行く。」

 

そうでした。

 

相手を殴りたい。

そんな、脳の感情部の
血流が一杯の時は、
冷静に考えるのは無理
と言った方が安全でしょう。

 

とにかく別の場所に行って、
深呼吸をし、
落ち着くまで何もしない、
というルール。

 

と、脳の図を見ながら、
おさらいをします。

 

「そうか。それなら既に、
 ずっとやっているから。」

自信を取り戻した様子の
ポールさん。

 

こんな風に、
試行錯誤と練習の
積み重ね。

 

けれど、ポールさんは明らかに、
以前の、
「いつの間にか人を殴って
 自分が罰を受けている」
状態から、

 

人の心も理解できる状態へと
変わって来ておられます。

以前、お医者さんになかなか

意見を言えないマーガレットさんの

お話を書かせていただきました。

 

血管が原因の脚の痛み。

 

いままで痛かった脚以外にも、

最近は腰も痛い。

 

対処療法に痛み止めの注射を

ずっとしているけれど、

このままこれを続ける以外に

方法はないのだろうか?

 

不安が募る。

腰の痛みの理由や

他の治療法があれば

知りたいけれど、

医者には質問できていない。

 

きっと質問をすれば、

失敗を指摘されたと

医者が思うだろうし、

気分を害される気がする。

 

3年間CTスキャンを取って

もらっていないけれど、

自分がお願いするのもおかしいと思う。

良い医者なら既にやっているはず。

 

やっていないのは、きっと

CTをやっても仕方がないから

なのではないか。

 

こう言われるマーガレットさん。

 

前回までのセラピーで

見えてきたのは、

医者を崇める彼女の家族背景と、

医者への落胆。

少々投げやりな気持ちもある。そして

医者に楯突くお母さまのようには

なりたくないという心理等が

重なったものでした。

 

それまでのセラピーで、

それらの背景に付随した

沢山の気持ちを洗い流し、

 

さらに、話し方のテクニック等

についても話し、

医者にどのように外交的でポジティブに

お話しをするかの

練習をしてこられたマーガレットさん。

 

今日のセッションでは...。

 

「今日この後、外科医と

予約の日です。」

「けれど...。」

 

申し訳なさそうに話します。

 

「やっぱり言えないです。」

「医者でも、質問されて

わからないこともあるだろうし。」

 

今まで、セラピーで階段を

登ってきたように見えていたのですが、

まだやり残したことがあるようです。

 

そこで伺ってみました。

お医者さんに実際に

聞きたいことを質問すると、

マーガレットさんの心の中では

どんなことが起こりますか?

 

すると、マーガレットさんは、

泣き出しました。

 

泣きながら、

「涙の意味が自分でもわからない。」

と言われます。

 

深呼吸してみましょう。

 

そしてしばらくしてから、

こんな風に言われました。

 

「私のバカな質問は、聞くだけ無駄

そう思うのかもしれません。」

「医者だって忙しいし、私の質問は

 聞くに値しないと思うんです。」

と。

 

バカな質問。

 

そうですか。

では、マーガレットさん。

そのお気持ちは、どこからくると

思われますか?

 

私がこの『どこからくる』と伺う時は、

大抵、ご本人の歴史の中で起こった

感情的な出来事の事を指します。

 

しばらく考えたマーガレットさん。

「…母だと思います。」

 

以前、皮肉をあしらった会話で

満ちた、家族の在り方を

話しておられた彼女。

 

「バカじゃないの!?」(笑)

「あの人、おかしいよね。」

「ねぇ、何やってんの?」

 

ユーモアを交えた皮肉。

 

日本の日常会話でも

普通に聞こえてくるような

一見、何ともない会話です。

 

そんな日常の風景が、

いつの間にか自分の中で

「笑われないように」しようと

思う向上心のようなものと同時に、

 

失敗して恥じた時の

不安や恐怖が、

見えないところで蓄積していった。

 

そんな感じでしょうか?

と伺ってみると、

 

「まさにそんな感じです。」

とマーガレットさん。

 

さらに、

癖のある強いお母様と、

押しの強いお姉さんたちに

育てられたという彼女。

 

彼女がした以前のその話を

レビューすると、彼女は頷きながら、

「母だけじゃないですね、

 姉も関わっていますね。」

と言われました。

 

では、ご自分の意見が、

尊重された記憶があれば

教えてください。

と伺うと、

 

「ないですね。」(笑)

 

そうですか。

 

あなたの言うことはもっともだ。

あなたは、あなたのままがいい。

何も恐れずに、自分のままの姿が

一番良い。

 

そんなメッセージを受けたことは?

 

「ないですね!」

 

マーガレットさんは、

笑いながら、涙を流しておられました。

 

マーガレットさんのお母さまは、

子供の誰かが転んで怪我をしたら、

傷を手当てし、心を和らげる

というよりは、

どちらかというと、

「唾でもつけておけば治る!」

という育て方をされたとか。

 

さらに、お父様の暴力や、

離婚を切り抜けた後、

二人目の夫の世話に翻弄され

子供の心に気を配るゆとりも

なかった模様、とのこと。

 

マーガレットさんが、

一通り涙を流して語られた後、

もう一度伺ってみます。

 

実際にお医者さんにお話したら、

どんな反応をされると思いますか?

 

「確かに...」

「実際、今の医者は別に

私を馬鹿にしたことは

ないんですよね。」

 

マーガレットさんは、

すでに分かっておられました。

 

自分がなかなか質問できないのは、

実際の医者に対する恐れではなく、

過去の権威者に対する恐怖で

あったかもしれないことを。

 

その恐怖に気付いたら、

目の前の恐怖も消えた。

 

「私、今日、話してみます。

 医者に会った時。」

 

そう言って、笑いながら

オフィスを去られました。

 

 

祝日を挟んだ2週間後のセッション。

 

マーガレットさんはニコニコ顔で、

こう言われましたました。

 

「MRIの予約が既に3日後に

 入っているんです!」

 

どういうことかというと、

お医者さんにお話をする覚悟を決めて

向かったその日。

 

何も話す前に、医者の方から

「CTスキャン、

3年もやっていませんね。」

と言われ、

瞬く間に、CTではなく、

精密検査として

MRIの予約の連絡の電話が

何本も入ってきたとか。

 

「何か、偶然って言う感じが

しなかったです。」

とマーガレットさん。

 

あたかも、欲しかったものが

たまたま向こうからやってきた

ような現象。

 

私のセラピーの経験でも、

このようなことは何度か

ありました。

 

ご本人の心の準備が出来ないと

何も起こらない、けれど、

覚悟を決めた途端、

突然道が開ける、と言ったような。

 

「これはマーガレットさんが

 いままで頑張ってこられた

 成果ですね。」

 

そういうと、

「そんな気がします!」

とニコニコ顔の彼女。

 

同時に、

とっても自信に満ちたような

お顔をしておられました。

 

「これで、治療方法が今までと

 変わらなくても、なんだか

 こんどは納得できそうです。」

 

患者さんが情報を欲している

と同時に、

お医者さんも情報が必要だ、

だから、自分も情報を渡す義務がある、

 

そんな割り切った話だったのか、

と彼女も今までの自分を

客観的に見ることが徐々に

出来るようになってきたようです。

 

心が軽くなったような

マーガレットさん。

これから

体も楽になると良いですね。

 

***

関連記事

 

医者が解決してくれない、イライラ。マーガレットさんの場合。
http://ameblo.jp/mnitta/entry-12138938438.html

素晴らしく前進したような

セラピーが続いた後、

 

揺れ戻しがあったり、

元の位置に戻ってしまうような

現象が起こることがあります。

 

「新しい自分」に

馴染みながら進む前に、

早く前進しようと頑張った為、

一度戻って休みたい時もあれば、

 

体の調子を壊したり、

なにか大きなストレスがあって

子供に返りたくなる、

そんな時もあるから

かもしれません。

 

最近絶好調だった、ポールさん。

 

随分熱心にご自分を見つめ

洞察力の深い味方と

重みのあるコメントを

連発された、この方。

 

今日は珍しく、ちょっと

バランスを崩している

ご様子でした。

 

 

「妻と話をした。

俺が変わってきていることを、

妻が理解してくれると思った。」

 

「だから、

週に一回一緒に寝てくれと

頼んだ。そうしたら、良いと言った。

なのに、又寝てくれない!」

「妻が憎い!!」

「別れてやる!」

 

これは今までのセッションで

何回か繰り返した点。

 

結局のところ、「自分の為に」

本当を理解してくれるワイフとは

ずっと一緒に居たいのだ、というのは、

ご自分の本当の希望だとか。


けれど、今日のところは

ポールさん、それさえも

見えなくなってしまっている。

何か原因があるのでしょう。

 

「俺の周りには、

 美しい女達が一杯居るのに!」

 

ストレス一杯のご様子。

 

話の内容だけではなく、

姿勢もいつもよりも丸く、

なんだかそわそわしておられます。

 

伺ってみます。

 

ポールさん、最近なにか

病気をされましたか?

 

「息子がノロウィルスにかかった。」

「それが俺に移って、俺も吐いた。」

 

ちなみに、

過去一週間、どのくらい運動を

されましたか?

 

「へ?」

 

「今週はあまり行かなかった。」

 

そんな感じですね。

 

いつもジムに行って

「モヤモヤがスッキリした」

と話されるポールさん。

 

ご自身でストレスが溜まっていると、

感じられますか?

 

「そりゃそうだ。妻と口論したし。」

 

確かに。

それは結構なストレスですね。

 

では、奥さんと口論する前には、

どの位、運動をされましたか?

 

「ジムに行かない日の方が

 多かったかな。うん。」

「それって関係あるの?」

 

どう思われますか?

 

「...うん。運動すると、

スッキリするし、気分が良い。」

 

「確かに、毎日汗かいて、

落ち着ついていたら、

あんな風に妻に言い募らなかった

気もする。」

 

そのポールさん。

 

今度はジムに居る

「俺の周りにいる女達」の

お話をされます。

 

この、今日ポールさんが話しておられる

「美しい女達」というのは、

ポールさんに言い寄る女性でも、

ましてやポールさんを

心から愛する女性でもないらしく、

 

伺ってみると

 

「俺が見ただけで我慢

 できなくなるような」

「スポーツジムで運動している

 綺麗なお姉ちゃん達」

 

とのこと。

 

つまり、ポールさんの情事とは

全く関係のない、

体を鍛える為だけに、

たまたま同じジムを利用している

赤の他人のことの様です。

 

「ボディーのゴージャスな

姉ちゃんが隣に来て、

 運動している。

 それを見るだけでもう、

 我慢が出来ない。」

 

顔つきが、たらりん、と

ニヤけておられます。

 

「それなのに妻は、

 他の女と寝るなと言う。」

 

ここで、

少し前回のステップまで下がって、

もう一度ゆっくり

おさらいの質問をしてみました。

 

ここで明らかになったことは、

ポールさんの答えが

前回と同じ質問に対して、

かなり違う事。

 

前回までは、

『愛情のないセックス』は、

『栄養のないポテトチップス』と同じで

手軽に手に入るけれど、

欲求は一時的にしか満たされない

『ドラッグのようなもの』。

 

という点で、先週まで一致していました。

 

なので、

 

「ポールさんは女性に、再び

 ポテトチップスを求めておられる

 のですか?」

 

という質問があれば

 

先週ならば

「それはドラッグと同じで

 自分が本当に求めているものと違う」

 

と言われていたのが、今回は

「週に一回だけって

言っているのに

 何がいけないんだ!」

と言われている。

 

ドラッグ患者さん特有の、

揺れ戻し現象のようにお見受けしました。

 

一方で、

セラピーには長年かかっておられる

すぐに自分の事を

正面から見つめる能力もある

ポールさん。

 

実際ポールさんが

先週言われたことと、

今回言われたことの

両方の違いを、ご本人に

比べていただきました。

 

「え?俺そんなこと

 言ってた?

 っていうか、覚えているけれど。」

 

人はストレスがたまったり、

体の調子を崩したりすると、

 

感情をつかさどる脳の部位ばかりが

異常に活動をしてしまい、

 

『脳全体が働いている時』 と比べ、

 

同じ事象に対する見方も、

意見さえも変わってしまう。

 

そんなお話をすると、

 

「へぇ。

 運動しないだけで、

 見えるものまで

 変わってきちゃうんだ。」

 

「自分では全然

 違いが感じられなかった

 けれど、言っている内容は

 確かに全然ちがうわ。」

と、ポールさん。

 

そこで、伺ってみます。

 

ポールさん、また薬物を

やってみたいと思われますか?

 

「時々欲しくなるけれど、

 絶対に手を出してはいけない

 と思っている。」

 

何故ですか?

 

「自分の生活が破たんしたから。」

「牢獄にも戻りたくないし。」

 

では、ポテトチップス的な

一時的欲求を満たすだけの

セックスは?

 

「...。」

「牢獄に戻ることはないけれど、

 確かに結婚生活が破たんしている

 のかもしれない。」

 

先ほど

運動と脳の話を聞いた瞬間から、

『渦中』に自分が、そこから抜け出て、

外側から自分を冷静に

見つめることができてている、

と言われるポールさん。

 

「けれど、ジレンマもある!」

と正直におっしゃいます。

 

「ジムの綺麗なお姉ちゃんと

 寝るのは間違っているのかい?」

 

この、ふと出たコメント。

「話しかける」でも、

「デートに誘う」でもなく、

いきなり「寝る」という

言葉で出てくるポールさんの

心の状態。

 

自分でも意識しないうちに、

人と人との境目を取り払って、

相手の領地に入り込んでしまう

ポールさんのパターンが、

ここでも垣間見えます。

 

ポールさんは、そのセッションで、

実は幼い頃、自分の母親が、

家で二人っきりの時に、

ポールさんを裸にして、触ってきた

という話を

この度、始めてなさいました。

 

お母さまは幼い自分に

「神がポールに男の大事なものを

 与えた。

 それを母親の私が使うのは

 当たり前の事。」

 

とおっしゃったとの事。

 

ポールさんは話しながら、

お母さまへの怒りというよりは、

むしろ困惑したような表情で、

 

「母とセックスするのは

 あまり好きではなかった。」

 

とおっしゃいます。

 

その表情から、子供の頃の

ポールさんが、

実際は何が正しくて、

何を信じて行けばよいのか

分からないまま、

 

自分の領域を犯してくる

母親の言うままに

過ごしていたことが

垣間見られます。

 

「ジムの綺麗なお姉ちゃんと

 寝るのは間違っているのかい?」

 

自分の大切な領域を

犯され続けたポールさんが

これが間違っているか否かを理解するには

時間がかかりそうです。

 

ポールさんはこんなお話しも

しておられました。

 

「妻が今朝シャワーに入っていた。

 息子もまだ寝ていたから、

 丁度いい時かと思って

 俺も服を脱いで

 シャワールームのドアを開けて

 妻に『今やろう』と言った。」

 

「そうしたら妻は変な顔をして

 『今は嫌』なんて言ってきたんだ!」

 

「神は俺に男のシンボルをくれた。

 それを妻に使うのは、俺の役割だ!」

 

ずっとセックスを拒否している奥さんが

支度の為にシャワーを浴びている。

 

でも、「裸だし」「誰も見ていないし」

という理由で、

境目を飛び越えてしまうポールさん。

 

その行為を、神の存在で正当化して

おられるご様子。

 

そこで伺ってみました。

 

ポールさんのお母さまが

ポールさんに触れる時は、

お父様や兄弟はその場に

居られましたか?

 

「いや。いつも誰もいない時に

 『こっちにおいで』って

 言われた。」

 

ポールさん。

私の見解が間違っていたら、

教えてください。

 

ポールさんの奥様への行為は

ポールさんのお母さまが

幼いポールさんにしていた行為と

似ていませんか?

 

「え?」

 

凍り付いたように

眼を見開いて

動かないポールさん。

 

家に誰も居ない時と言うのは、

自分の対象と、

一時的欲求を満たす時、

だったのでしょうか?

 

お母さまにとっても

ポールさんにとっても。

 

 

ポールさん。

殴られたけれど何が起こったか

わからない。そんな表情です。

 

「考えたこともなかった。」

 

「確かにそうかも。」

 

「今まで付き合った女とも

 いつも

 相手が台所で料理している

 最中だったり、

 家に着いて

 車を降りた車庫だったり。」

「家に帰って来て、ドアに

 入って来てすぐの事も

 ずいぶんあった。」

 

人目が無くなった時は

セックスの時と理解する

脳の回路。

 

そして、

相手の心の状況が

どうであれ。

 

幼いポールさんの気持ちを

お母さまが聞かれたことが

ありますか?

 

「俺の気持ちなど、

 親が聞いたことは一度もない。」

「嫌がると殴られていた。」

 

幼いポールさんは、

超えてはいけない境目を

飛び越えることを、

知らず知らずのうちに、

習得された様子ですね。

 

「あんな母親と俺が

 同じことをしていたなんて!」

 

しばらくの間、

自分の過去や現在の

色々を話し続けながら

ここで知った事を理解しようと努める

ポールさん。

 

「母親にはいつも、

『神に逆らうのか?』、と

叱られた。」

 

ポールさんご自身の、体と神の関係は?

 

「俺の場合は、本当に男のシンボルは

 神からもらったと感じているから本物だ。

 母と言い分とは違う。」

 

では、もし

お母さまも本当に神の存在を

信じていたとしたら?

 

「!」

 

ポールさんの信念と、

お母さまの信念が、重なっている

可能性はありませんか?

 

違うことがあったら、

教えてください。

 

「いや、すべてその通りと思えるから

 驚いている。」

 

「頭が爆発しそう。」

 

自分が反発していた親。

 

絶対に親の通りにはならない

と思って、全く違う人生を

生きてきたつもりだけれど、

 

自分の気づかないところで、

しかも自分が一番嫌いだった

親の部分を、

いつの間にか引き継いでいる

自分が居る。

 

それは、自分の中身を

知れば知るほど

より明確に見えてくるもの

なのかも知れません。

 

「どうすればいいんだ!」

 

はい。

そのお気持ち、充分理解できます。

 

同時に、その「気付き」が

大きな進歩ではないか、と。

 

なぜなら、

人は、気づくことが

自分をコントロールする

第一歩ですよね。

 

逆を返せば、人は

『自分の気づかないものに

支配されている。』

 

そういうことなのでは

ないのでしょうか?

 

「確かに今までは全然

 気付いていなかった。」

 

実際、ポールさんにも

『気づくこと』で、既に

ずいぶん改善が見られていますよね。

 

そう。そうなのです。

 

父親に殴られ続けたポールさんは

レジの列の後ろの男性が傍にいるだけで、

脳が相手を「敵」とみなし、

次の瞬間殴りかかっていた。

 

そんな「自動的な反応も」

自分のパターンを知ることで、

最近は、傍にいる人に

「すいませんが、もう少し

 後ろに立ってくれませんか」

と言えるようになっておられるとか。

 

それができる能力を

ご自身で証明されたポールさん。

 

ならば、

体が美しい女性が、

自分の隣で運動しているだけで、

「この女と寝る」という『自動的な反応』を、

脳がするのであれば、

 

今までの様に、妻に

「俺のまわりには、女が沢山いるのに」

「俺と寝ないなら別れてやる!」と

その『自動的な反応』を正当化するのではなく、

 

大きく深呼吸をして、

『全体像』を見る。

 

気づきによって

『自動的な反応』に

呑み込まれるのではなく、

自分をコントロールする方向へ

歩むことができるようになる。

 

いかがでしょうか?

 

「うん。

 その『呑み込まれている』って

 まさにそんな感じ。」

 

とポールさん。


やっぱり、理解の早い、

洞察力のあるポールさんの姿が

ありました。

 

セラピーでの向上は、

まっすぐ右上がりの

比例グラフではなく、

 

右上がりでありながらも、

山を上がったり下がったり。

 

そして段々山や谷が消え、

やがて緩やかな右上がりの坂が

見えてくる。

 

そんなものかもしれません。

 

逆戻りや失敗もあって、

谷に落ちることもあるけれど、

 

それでも、歩み続けている限り、

完璧に元のゼロに

戻ってしまう事はない。

 

調子が悪い時もあれば、

セラピーに行きたくない日もある。

 

ちょっと、問題から逃げたくなる

こともある。

 

人生を諦めたくなることも。

 

そんなときは、

何もしなくて良いから、

 

諦めて手放すのではなく、

『怠けずに休憩する。』

 

そんな、

『緊張のない歩み続け。』

 

そうすれば、道は開ける。

 

そんなものかも知れません。

 

「もう既に、全部わかったと

 思っていたけれど、

 まだ知らないことが

 あったなんて!」

 

そうですね。

毎回セラピーに来られる度に、

階段をひとつひとつ登って、

違う風景が見えるとして、

 

新しい風景を見るのは

どんな感じですか?

 

「これがあるから、いつも

 ここに来たい、と思う。」

 

ということは、

これからもきっと、

まだ見ていない風景というのが

沢山あるかも知れないですね。

 

「早く全部見たい。」(笑)

 

鬱憤はいつの間にか晴れて

スッキリした顔つきで

無邪気に笑う、

そんなポールさんでした。

 

***

 

関連ブログ

妻を憎んでいた自分は間違っていた。ポールさんの場合・4。

 

俺と何か月も寝たがらない妻が憎らしい。ポールさんの場合・1。

以前書かせていただいた

ミッシェルさん

 

今日はお母さまの

80歳のお誕生日

なのだそうです。

 

「母と食事をして、

 演劇のチケットをプレゼントし

美術の話をする。」

 

インテリなお母さまと

ミッシェルさん。

 

「よき友でもあった」、と

母娘の関係を振り返って

おられます。

 

そんなミッシェルさんに長年

付きまとう思いは、若い頃

大学を辞めてしまったこと。

 

人を責めないミッシェルさん。

 

「私がもう少し頑張って

大学を続けていれば良かった。」

 

と残念な気持ちを表しながら、

ご自分を責め続けておられます。

 

セラピーの中では、時折、

何故あの時、学校を

辞めなくてはいけなかったか、と

その原因を、ご自分なりに、

色々と探って来ておらます。

 

黒人の彼女は、

ティーン・エージャーの頃、

「なるべく良い教育を」と

お母さまの勧めで、

高校の頃から私立に

通っていたとの事。

 

「白人ばっかり。

 考えの浅いクラスメートが多くて

 嫌だった。」

 

怒りを直接表さない

ミッシェルさんの

沸々としたものが

時々、間接的に漏れます。

 

高校で成績を収め、

奨学金をもらって、

ジョン・ホプキンス大学という

名門校に行くことに。

 

これに喜んだのはお母さま

だったとか。

 

そうして、

とりわけ興味のない学部へ

入ってしまった彼女。

 

在学中、そのストレスに耐えられず

やがて、精神疾患を発症して

入院することになったそうです。

 

お母さまの

ミッシェルさんの将来を考えて

勧めた意図と、

 

自分自身の在り方の

ギャップは、

以前から感じてはいた。

 

けれど、父親が居ない、

密着した母娘の関係。

 

お母さまに歯向かうことは

したくなかった、とか。

 

一方で、

学校の先生に歯向かったり

クラスを抜け出たりしていた。

 

学校を中退したミッシェルさんの

セラピーでの姿は、

 

「I Should 」「I Must」と

「~しなければ」

のコメントが多い、

いわば完璧主義者です。

 

従って、「すべてを成し遂げる」

意気込みが強く、その為

自分へのプレッシャーが大きすぎて

しんどくて、

思うように事が運ばない。

 

やろうと思ったことが

成し遂げられない。

 

やっぱり自分は

無責任な人間だ。

 

と、

自責の悪循環に陥る事が多く、

それが、ご自分にとって苦しい。

 

そんな状態で、長年

鬱に陥っておられます。

 

人を責めないミッシェルさん。

 

セラピーを初めてからの数年間ずっと、

お母さまの素晴らしい部分のみ

話してこられました。

 

その彼女が、お母さまとの

関わりの神髄について

やっと語り始めたのは、

ほんの最近の事である、

というお話しを、

先日を書かせていただきました

 

怒りを直接見せない代わりに、

時々皮肉な笑いで

怒りが漏れる。

 

むしろそうして怒りが

表れれば良い方であるけれど、

それもなかなか出なかった。

 

そんな彼女。

 

そのミッシェルさんに今日また

質問してみます。

 

今日は、80歳になられる

お母さまへのお祝いの日

ですね。

 

この母親が「80歳」というのは、

ミッシェルさんにとっては、

どんな意味がありますか?

 

「長い道のりの大事な節目。」

「もうすぐいなくなる、という意味もある。」

「私たちはいつも一緒だったし。」

「母は私にとって、良い友達。」

 

そんな風に言いながら、

ミッシェルさんはお話を

続けられます。

 

「誰かと話をしたくなったら、

 いつも母に電話をする。」

「母の話は、インテリだから

 いつも中身のある話を

 してくれる。」

「内容のない話を、誰かと延々と

するよりよっぽど良い。」

 

そう言って笑いを噴き出される

ミッシェルさん。

 

おやおや、これはまた、

ミッシェルさんが今まで

あまり見せたことのない、

大胆な皮肉と笑いです。

 

ご自分の中に秘めていた思いを

表明することに対して、

恐れを感じなくなった

そんな雰囲気です。

 

同時に、

皮肉な笑いを持って

話をする人の多くは、

マーガレットさんのご家族や

ジョーさん

同じように、

 

人へも厳しく、

自分へも厳しい人に

多いということも

分かってきました。

 

ミッシェルさんの場合、

「インテリでない人は、

ただのつまらない人」

という見方が

他人に対しても、そして

きっとご自分に対しても

内在していて、

 

それがお母さまの

影響である事が

垣間見れます。

 

「今日は随分とオープンな

皮肉がでましたね。」

との私の言葉に

 

再び笑い噴き出す

ミッシェルさん。

 

しかも、その批判の相手は

お母さまでも

自分でもなく、

どこかの過去の人。

 

前回、かなりお母さまの

批判のお話をまともにされた

ミッシェルさん。

 

今日は、お母さまの

大切な誕生日だし、

お手柔らかに行きたい。

 

そういう気持ちも

どこかにあるのでしょうか。

 

そう思いながら、

一応伺ってみました。

 

「ミッシェルさん。

 皮肉であると同時に、

 これまた、

 ハードルの設定が高いですね。」

 

その言葉が、何かに触れたのか、

ミッシェルさん。

 

「そう。

ハイ・スタンダードは、

 私の家系に流れるものかも。

 そう、ハイ・スタンダードが

 私を苦しめてきた。」

 

じっと考えておられます。

 

今までは、何かに核心に触れると、

それを弁護したりして、

別の話をしたり、

それを避けて

お話しされていたミッシェルさん。

 

今日は真ん中を突っ切って

おられます。

 

「だいたい、制服のある

 女子の白人ばかりの私立なんて。」

 

吐き出すように言われます。

 

「なんとか我慢して、

 高校は終わらせたけれど。」

 

「私がもし、あの大学を

 卒業していたら、きっと

 自分は自殺していたか、

 もしくは

 『成功した』と勘違いして

 本来の自分さえ、忘れてしまって

 いたかもしれない。」

 

と話すミッシェルさん。

力強く話されます。

 

いきなり、核心を

突かれました。

 

つまり、

どちらにしろ、

生きていなかったも同じ。

 

大学を辞めてしまったことは、

母親への反発であった。

 

けれどそれが、自分のその後の

人生に、どれだけ影響して

しまったことか。

 

そんな無念さと、悔しさを

 

自分を責め続けることで

なんとか収めようとして来た。

 

けれど、

収めようとして、収まりきらなかった

気持ちが飛び出した。

 

それは、

大学を辞めたのは、実は

「自分の本来の姿」を

守ろうとした

 

つまり、

「生きる意志」を貫こうとした

行為だった、

という思い。

 

ずっと体のどこかに潜んでいたものが

噴き出した。

 

近頃いろんな恐怖が

薄れてきたと同時に、

自ら顔を出してきた。

 

そんな瞬間に見えました。

 

そんなミッシェルさん。

 

皮肉の笑いも飛び出します。

 

「大学の学部には、

医学部を志望していた

生徒が沢山居た。」

 

「けれど、話をしても、

 人の命のことよりも、

 お金を稼ぐことを

 考えている生徒ばかり。」

 

「授業の内容もつまらないし、

 大学に居る意味を感じなかった。」

 

そんな日々を過ごす中、

 

「ある日、

 大学の授業もさぼり、

 昼間ラジオを聞いて

 たまたま応募した

 有名な歌手のディナーショー。」

 

「抽選に当たったので、

 スポーツカーを持った男の子を

 誘ってみたら、

 喜んで一緒に行ってくれた。」

 

「あの歌手の目の前に座った。」

 

「それが私の大学で

一番楽しかった思い出。」

 

大笑いしながら、話されます。

 

「私の20代初めは、

 混沌としていた。」

 

この瞬間、また顔を曇らせる

ミッシェルさん。

 

「私の20代がもっと、

 安定したものだったら、

 きっとあんなことに

 ならなかったのかも知れない。」

 

そこで、伺ってみます。

 

ミッシェルさん。

20代初めは、誰にとっても

混沌とした年齢ではないですか?

 

ミッシェルさんの場合は、

「退学」というはっきりした形が

20代の歴史にあるとしても、

 

20代初めは、

体だけ大きくなって、

まだ親から、

精神的には自立しきっていない頃。

 

それなのに、

世間に踏み出し、

自由と責任を手に入れる。

 

夢と不安が入り混じった、

しかも、恋愛ホルモンも満載の

たやすく転がり落ちやすい年齢。

 

それに対してミッシェルさん。

 

「でも、母は、24歳で

父親から逃れ、私を一人で

育て始めた。」

 

「母の20代は

混沌としていなかった。」

と言います。

 

そうですか?ミッシェルさん。

How would you know?

 

お母さまの心の中が

本当はどんな状態だったか、

ご存知ですか?

 

「確かに、知らない。」

 

本当は揺れ動いたり、

不安があっても、

自分で気づかないことも

多いはずです。

 

『私の20代は、全然大丈夫だった。』

と言葉でいうことは

誰にでも出来ますが。

 

噴き出して笑うミッシェルさん。

 

それなら、いっそ

お母さまに、直接

聞いてみる、というのも

良いのでなはいですか?

 

その一瞬、ミッシェルさんの顔が

緊張されます。

 

「怖くて聞いたことがない。」

 

怖いですか?

 

お誕生日ですし、

お母さまの歴史を

もっと知りたい、と。

 

節目に、人生を振り返って

いただくのも

いかがでしょう?

 

一気にほっとした顔をして、

笑う、ミッシェルさん。

 

まぁ、私だったら、

自分の母の節目の誕生日に、

『おかあさん、20代の頃

 一体どんな問題抱えていたの?』

 という聞き方はしませんが。

 

大笑いするミッシェルさん。

 

「本当のことを言うと、

今日、何を話していいか、

わからなかった。」

 

「でも、母に自由に

歩んできた道を語ってもらうのは

とっても良いことのような気がする。」

 

長い間破らなかった殻を

破ったセラピーセッションの後は

数時間、余波があることもあります。

 

でも、ミッシェルさんは、

「これもこれも聞きたい」と

お話しされながら、

すがすがしい笑顔で

去っていかれました。

 

お母さまの大事な

お誕生日のランチ。

 

楽しんで行っていらしてください。

 

***

 

関連ブログ

母のおせっかい、でも断れない。何故?ミッシェルさんの場合。

 

自分にも他人にも厳しい人のお話し

綺麗好きで嫌われる自分。何故?ジョーさんの場合。