心の歩み、さまざま

心の歩み、さまざま

米国マサチューセッツ州で、サイコ(心理)セラピーをしています。
そこら辺に転がっている、日常の色々。
心理学の視点、文化の視点から斬ってみると、また別の物が見えてくるかもしれません。

「私がちゃんと仕事したら

 怒鳴られたんです。」

 

 

バケーションから帰ってこられた

キウイさん。

 

「私、結婚した娘に

 会いに行ったんです。

 2週間。本当に楽しかった。

 

 その土地の人達も皆さん

 温かくて良い人たちで

 久々にゆったりとした気持ちに

 なりました。

 

 でも先生、私いつも

 バケーションで楽しい時

 『ああ、こういう幸せの後

 何か悪いことが起こるに違いない』

 って思っちゃうんですよ。

 それで、存分に楽しめなくて。」

 

とキウイさん。

 

普段から、

自他ともに認める

「仕事のデキる人」で

落ち度が無いように確認を重ねる

 

一方で

何かが上手く終わるまで

常に不安が絶えないので

楽ではないとおっしゃいます。

 

 

キウイさん。

常に不安だから

事前に「最悪の場合」に

備えて準備をする、

けれどその為に

気分も落ち込む。

 

これは、ひょっとして

不安になることが自分に何か

「良いことをもたらす」とは言いませんが

不安になることで

「自分を守っている」ということは

ありませんか?


「うーん。なんかねー

 不安が無くなっちゃうと

 ちゃんと仕事をしなくなる気が

 しますね。

 

 でもね、この幸せな時に限って

 不幸がやってくるって考えるのは

 わかっているんです。

 昔のある出来事が原因だって。」

 

おお!これは早いですね。

昔どんなことがあったんですか?

 

「アメリカの大学を卒業して

 働き始めて間もない頃。

 本当にとんでもない性格の

 ドクターのオフィスで働いていたんです。

 

 いつものように、朝早く家を出たんですが

 パン屋が開いたばかりで、

 朝一でパンを買って

 そのホカホカのをエレベーターで食べて

 誰よりも早く余裕でオフィスに着いて

 ウキウキしていたら...

 その後の一日が最悪だった。

 

 バッチリとスーツを着た患者さんが

 来たんですが、

 ドクターはいつものように

 まだ来て居なくて。

 

 その頃始まった

 州で決められた書類に

 サインしてもらうというのがあったんですが、

 受付の子がいつものように忘れていたんで、

 私が書類を渡したんです。

 

 そうしたらその患者さん

 待たされてイライラしていたのか、

 私に怒鳴りつけてきたんです。

 「ここ暗くて見えないじゃないか!なんだこのペンは!」

 と、ペンも投げて

 出て行ってしまったんです。

 

 そこへ丁度ドクターが来て

 『キウイ、何をやってんの!』

 って私を怒鳴ってから、

 その患者さんを追いかけていましたよ。」

 

なんとキウイさん。

それは、とんだとばっちりですね!

と私は言いました。

 

「とばっちりも良いところですよ。

 でもそれ以来、私は

 朝からウキウキ油断していたから

 こんな不幸なことが起こったんだ

 って思いました。

 『バチが当たったんだ』って。

 それ以来、自分を律して

 生きようと思ったんです。」

 

そうなんですか?キウイさん。

このご自分のお話を今

ご自分の耳で聴かれて、

実際にどう思われますか?

 

「いや、頭ではわかっているんです、

 私は悪くなかったって。

 でも私は幸せに思っちゃうと

 悪い事が来るって思ってしまうのは

 今も変わらないんです。」

 

かなりのショックで

しかも誰にも話すことも出来ず、

混乱したまま

ご自分一人で処理をしようとして

この様に結論付けてしまわれた様子。

 

ではキウイさん、

その一連の事が起こった時

どんな気持ちでしたか?

 

「すっごい腹が立ちましたよ。

 だって、あのドクター。

 あの後、患者さんを追いかけて 

 『あの書類はサインしなくていいですから、

 オフィスに戻って来てくださーい』

 なんてて。言ったりして。」

 

キウイさん、最悪ですね、それ。

どう最悪かというと、

 

普段から仕事に遅れてくるドクターは

ご自分の責任感が薄いどころか、

 

怒鳴られていたキウイさんに

「何があったの?」とも聞かずに

キウイさんを責めたんですよね?

 

更に、その書類は州で義務付けられているのに

サイン無しで患者を診るみたいな行為も

マズイですし、

 

まるで、

『キウイが悪かった 

 彼女の言う事は聞かなくていいから

 オフィスに戻ってきてくれ』と

 言わんばかりの

 責任転嫁の酷いドクターですね。

 

私がここまで言ったら

「そうかー、今先生に言ってもらって

 そうだったのかーって思いました。

 やっぱりそうですよね先生。

 

 あの頃、私、何が起こっているか

 正直よくわかんなくて。」

 

キウイさんの立場だったら誰でも

相当ショックなのではないかと

想像しますが。

 

「ショックでしたよ、すごく。

 私、何も悪い事していないのに。」

 

ではキウイさん。

今のキウイさんがその場に戻って

何を言っても良いとしたら、

ドクターか患者さんに何を言いたいですか?

 

「えー私の立場だと...

 患者さんに言えることなんて

 限られてくるけれど...」

 

いえいえ、今はキウイさんの心の処理を

しようとしているので

実際の「仕事上の立場」は忘れてください。

 

「そうですね...やっぱり

 ドクターに言いたいかな。

 

 『ドクターが遅れてきたから

 怒ってたんですよ、この人。

 書類をサインさせるのを忘れていたのは

 私じゃなくて受付の子ですよ。

 ちゃんと仕事してください。』」

 

良く言えましたね。

他に言いたいこと無いですか?

心の底から言いたかった事。

 

「あー、やっぱりムカつく

 酷いじゃないかって言いたいですね。

 人のせいにして無責任だって。

 言えなかったけれど。」

 

はい、他にもありますか?


「あー、やっぱでも、あの患者

 すごいムカつく!」

 

何にムカつきますか?

 

「怒鳴ったこと。」

 

その人には何て言いたいですか?

 

「怒鳴るなんてヒドイですね。

 ペンなんて投げないでください。」

 

他には、無いですか?

 

「......。」

 

本当は言いたかった事、

全部言ってしまわれるといいですよ。

 

「八つ当たりすんなバカ野郎!

 偉そうな恰好してるくせに、

 最低だ、お前!」

 

だいぶ出てきましたね!

 

ご自分の声と言葉を聞いて

一瞬びっくりした様子のキウイさん。

 

しばらくしてから

言われました。

 

「うん、今先生に色々整理してもらって

 なんかわかった気がするけれど

 でもなんか、やっぱり私

 油断したらバチが当たるって

 まだ思っちゃう気がする。」

 

わかりますよ。

キウイさんは、

今はそこに居る

という事ですよね。

 

この作業はキウイさんにとっては

まだ始まったばかりなので

自然ではないですか?

 

ただ。

キウイさんが

ご自分に厳しいのは、

その時に始まったわけではないですよね?

ご自分を律しなきゃという考えは

どこか別の所から来ているのではないですか?

 

「父かなあ?うん、父は厳しかったし

 おじいちゃんおばあちゃんもすごく

 厳しかったって

 先生には言いましたよね。」

 

いつも仕事をバッチリこなすのも

もしかして、

 

もう既に亡くなられた

お父さまや

おじい様おばあ様は

居られないのに、

 

ちゃんとやっていることを

見せなくてはいけないと思っている、

そんな風に見えます。

 

「ある気がする、先生。

 だってその方が仕事上手くいくし。」

 

幸せな時に、幸せに浸りたくないですか?

 

「あー、幸せに浸りたいー

 幸せな時に、不幸なことを考えるの

 嫌だーもう嫌だ。」

 

油断しないで自分を律する形を

キウイさんはずっと

保ちたいですか?

 

「あー、そうかー。私 

 自分に優しく、優しく

 なりたいなー。

 なれるのかなー?」

 

時間はかかるかもしれません。

 

でも

幸せな時には幸せに浸りながら、

かつ

仕事が有能な

そんなキウイさんになれるように。

 

また一緒に

お話していきましょう。

 

「ねえ父さん、僕と友達になってよ。」

「いや、俺は父親だ。お前の友達ではない。」

 

相手にがっかりしては

人との関係を断ち切る、

ことを重ねてきたロナルドさん。

 

本当は人が恋しくて

つながりを求めたいのに

嫉妬心を簡単に抱いてしまったり

察してもらえなくて不満を感じたり

拒絶される前に相手を拒絶したり。

 

仕事している時は

アジェンダがあるから

その型の中でパフォーマンスを

していればよいけれど

 

ランダムな社交の場では

色々な事が気になってしまい

上手くいかない自分にも

呆れたり疲れたり。

 

それなら

独りでいる方が楽。

 

そんな状態で私のセラピーに

来られた、50代後半のロナルドさん。

 

酷い扱いをしたお父さまにも

お母さまにも

 

それでも

入院時の世話や

重要書類の整理や

老後の世話は

非常に熱心に行っています。

 

けれど、行いながらも

「これをやったからって

 僕はお父さんを許したわけじゃ

 ないからね」

 

と、相手を突き放していたというのは

セラピーを始める前のころのお話。

 

ロナルドさんは2年間の心理セラピーで

毎週それはそれは熱心に

自発的に前回のおさらいや

一週間あったことを書きまとめて

自分なりの考えを持ってきました。

 

作業は完璧で

時に機械的でつっけんどんの

ロナルドさんでしたが、

 

その熱心な姿は本当に

自分の生き方を何とかして

もう少し上手に生きたい

という気持ちが

現れている様でした。

 

得意なことと言えば

理論をまとめる事。

 

けれど、セラピーの中では

感情について語ることが

なかなか難しかった最初の頃。

 

今どんな気持ちですか?

と伺うと

 

「僕は母に説明してほしかった」

と。

 

「その時の感情は?」

 

「感情?感情が何かわからない。

 フラストレーションって感情?」

と聴いてきたり。

 

そして徐々に

ご自分の中に存在する

理論君 と

感情さん と

幼い頃の自分

 

と色々な側面がある事も気づき始め

 

幼い頃のロナルド君の気持ちは

どんなだったと思いますか?

 

と伺ったら

 

涙しながら

悲しかった事

悔しかったこと等を

語られるようになりました。

 

そんな風にして

感情のエネルギーを放電することを

重ねてきたら

表情もだいぶ柔らかくなった様子。

 

そして今回。

お母さまが入院されたとかで

ロナルドさんは

お母さまの医療の代理意思決定者となり

毎日頻繁に

病院の医者やスタッフやご家族と

連絡を取り

お母さまを訪ねては

お世話をしておられます。

 

今現在のお母さまへの気持ちを

ロナルドさんに聞いてみました。

 

すると

「僕は作業をしているだけ。

 母への愛とか親しみの

 感情はない。」

と言われます。

 

なので再び伺ってみました。

 

親御さんから受けた扱いに対して

以前感じていた怒りなどは

心にまだ残っていると

思いますか?

 

「...

 それはずいぶん無くなったし

 恨んだりしていない。

 リベンジしてやろうとかも

 考えなくなっているから、

 多分怒りは

 無いんじゃないかな。」

とロナルドさん。

 

そうですか?

 

こちらから見えるのは

例えば、喧嘩して外に閉め出した妹が

雨に濡れて困っているから

ドアを開けながら

「許してやったんじゃないからな」

と家に入れてあげたり

「食べないと死ぬぞ」と

つっけんどんにご飯を差し出したりする

そんなお兄さんみたいな

 

「許していないけれど

 もっと深いつながりは

 切っていない」

感じが

見え隠れするような気がしますが。

 

「.........。」

 

黙ったままのロナルドさん

 

もう一つ良いですか?

 

昔、誰かが言ったのですが

Loveの反対はHateではなくて

Indifferenceだと。

つまり

「愛情」の反対は「嫌悪」ではなく

「無関心」。

 

ロナルドさんは

お母さまに対して今

全然無関心では

ありませんよね?

 

黙っていたロナルドさんは

ここで口を開きました。

 

母親に対して抱いていた不満、

そして父親に対して抱いていた

強烈な不満が

出てきました。

 

家の中に両親も弟も妹も居ても

全く会話のない

孤独だった毎日。

 

「僕が父に

 『そんなに無視ばかりしないで

 ねえ、

 Dad could you be my friend?』

 とお願いしたんです。

 

 そうしたら

 父は

『俺は父親だ、お前の友達ではない。』

 って言ったんですよ。

 

 ...こんなに冷たい事、

 どうしたら言えるんでしょうね?」

 

幼い頃、一生懸命親に

語りかけたのにも関わらず、

「無関心」だったのは親。

 

幼いロナルド君は

歩み寄り続けたけれど

母親も居るのかいないのか

 

大人になっても

妹のカレンさんの子供達とばかり過ごし

怒り気味のロナルドさんの家には寄らず。

 

その理由もはぐらかすように

「カレンの家の方が近いから」

と言いつつ

ロナルドさんの家とは5分違いだったと。

 

ロナルドさんは、涙しながら

最後に残っていた怒りを

ふり絞っておられる

感じがしました。

 

その後。

 

「僕はね、君(セラピスト)が休暇で

 居ない間、僕の中の若い僕に

 しょっちゅう語りかけていたんだよ。

 

 若いドナルドは勇敢だった。 

 あんなに過酷な状況で

 ずっと耐え凌ぎながら

 打たれても打たれても

 親にチャンスを与え続けて。 

 

 僕が今、こうして穏やかでいられるのも

 彼が頑張ったからなんだよ。」

 

それは、セラピーも若い彼が

頑張ったという事ですか?


「セラピーは僕がやった。

 僕がセラピーで色々変わったから

 彼も受け止めてくれることを知って

 彼も安心したんだね。」

 

ということは

若い彼はあなたに受け止めてもらったんですね?

 

「そうだね。僕が彼を受け止めて。

 君が僕を受け止めて。」

 

私は感動しました。


自分の中の幼い自分に

語りかけ

若い頃の寂しさや悲しさを

今の自分が受け止める。

 

その様な癒しの方法を、

ロナルドさんは誰に教わったでもなく

セラピストが居ない間に

ご自分で見つけられて

しかもご自分で癒した

と言うのです。


ロナルドさん、頑張りましたね。

 

「セラピーは彼と僕と君3人で頑張ったね。」

 

いやいやいや、

ロナルドさんが頑張ったんですよ。

 

「3人で頑張ったんじゃん!」

 

笑いながら涙をふく、

ロナルドさんの表情は

以前よりも

とても穏やかに見えました。

 

「ちゃんと泣かないなら

 ちゃんと泣かせてやる!」

 

1か月前、父親がインドから

アメリカの自分の家に来た。

 

平穏に過ごしている。

母親が亡くなってから半年。
それ以来こんなに長く一緒に過ごすのは
初めてなのに...

お互いに母親の話を、一切しない。
「なんでだろう?
 そう思って、妻に
 そのことを話してみたんです。

 そうしたら妻は
 泣けなかった頃の自分の事を
 思い出させてくれました。」

出会った当初、しばらくの間
妻は良く泣くし
妻の家族も感情を露わにするけれど

誰もお互いに咎めないのが
不思議に思っていた。

時にはあまりに泣くので
すごくうざいと思ったこともある。

けれども妻は自分に言った。
『あなたが素直に泣いてくれないから
 私も泣けない。
 もっと泣いてほしい』と。

泣いて良い?

そんなことを言う人は
今までの人生周りに居なかった。

適度なショックを受けた。

それから、徐々に
妻の前だけでは
自分は泣くことも

出来る様になった。

というか、
泣いてみるのも

良いなと思った。

そして徐々に、

友人の前でも
涙を出すのに

躊躇しなくなってきた。

けれどある時、気づいた。

家族の前で泣いたことが無い。

と語るサマワさん。
そこで私は聞いてみました。

サマワさんの育った周りの男性で
泣いたのを見たことはありますか?

「男はあんまり泣かない。」

お父さまは?

「父が泣いているのは

 見たことが無い。


 僕が父の前で泣いたことは

 何度もあるけれど。

 泣いたら ...。」

しばらく止まって宙を見つめる
サマワさん。

長い沈黙。
眼が一瞬動いたけれど

遠くを見たまま語り始めました。


「確か小学校5、6年の頃。
 多分算数の宿題で 
 答えを間違えた時に
 叩かれて。
 その時泣いたら、

 父が叩くのを止めた。

 それで、もしかして泣いたら

 父が叩かないのかと思って
 それ以降しばらく
 涙が出なくても
 泣く声を大きくしてみた。

 そうしたら...。」

また止まりました。

眼が一瞬動いてから
口が再び開きました。

「『ウソ泣きしかできないのなら
 本当に泣けるようにしてやる』って
 父が言って
 その後、僕、頭も顔も背中も

 滅茶滅茶に叩かれたんです。」

その光景が目に浮かび

心が痛みます。


「それが中学生。

 それ以来
 高校も大学も、

 妻に会うまで

 長い間僕が泣くことは
 ありませんでした。」

それからサマワさんは
ご自分が小学生だった当時
自分の弟が度々
ベッドにおねしょをする度に
お父さんがスリッパで
弟の顔や体を沢山引っ叩いた
というお話と

隣の家の兄弟が
度々お父さんに殴られて
大声で泣いているのが
壁の向こうから
ほぼ毎晩聞こえて

育ったという話しを

しました。

「あんなに怒られている
 にもかかわらず
 その兄弟はすごい悪ガキで
 近所の店から物を盗んだり
 学校から物を盗んだり

 とにかく悪い事を端から見つけては
 『もはや怒られても痛くない』
 っていう顔をしていたんです。
 あんなに怒られたのに」

とも。


これらに反応した私。

サマワさん。
 

サマワさんとお父さまのお話に
これから深く入りたいのですが

その前に。

先ほど
「怒られている『にもかかわらず』」と
言われましたか?

「はい。
 僕の父も良く言います。
 『最近の若い親は
 子供を叱らないから
 悪さを知らない子供が育つ』
 って。」

なるほど。そうですか。

 

でもですね、サマワさん。


家の中で常に
不安と恐怖を常に感じていなければ

トイレにも平気で行けるし

おねしょなんてしないのです。

親から暴力を受け続けて

権利も尊前もはく奪され

無力感に耐えつづけたりしていなければ

盗みや放火などで

「してやった!」
とパワーを感じたがる必要もない。

つまり
おねしょも盗みも
「親の暴力の結果」。

 

親が躾の仕方を知らない

悲劇というわけです。

「!」

しばらく沈黙のサマワさん。

サマワさんに最初の話について

伺いました。


サマワさんがお父さまの前で
亡くなったお母さまが
居ないことへの寂しさ等
弱い気持ちを見せる事を
無意識に避けていたのも

昔学んでしまった

泣いてはいけない

という教えに
体が忠実に反応している
という事では

ないですか?

「...。そうかもしれない。

 っていうか
 今のおねしょと盗みの話、
 聞いておいて良かった...。

 僕は自分に子供が生まれたら
 叩きたいとは思っていないけれど


 他人の子を見ると
 時々
 『親がもっと叱ったらいいのに』
 って思う事がある。」

一応聞いてみました。

サマワさん、今どんな気持ちですか?

「...何にも感じない。」

今のサマワさんが
以前の自分を叩いていた
お父さまに
何か言いたいメッセージは
ありますか?

「僕は小さい僕に
 泣いても良いんだよって
 言う。」

お父さまには?


この瞬間、
突然理知的な顔に戻る
サマワさん。

「父は世代が前の人だし
 叩くのも通常の躾だったから

 父は悪くない。
 父には何も感じない。」

そうですか。
サマワさん。
今はその時点に居られるという事ですね。

今お父さまが一緒に
住んでおられて
その時間がとても大事

という時期ですから、

お父さまの気持ちを守りたいのも
自然だと思います。

でもいつか

お父さまが国に帰られて
そしてご自分の心の準備が出来た時に
かつて「言いたいことがあったけれど
言えなかった幼い頃の自分の気持ち」に
もう一度向き合ってみるのは
良いかもしれませんね。

その作業は決して
「お父さまの悪口を言う」のが

目的なのではなく

長い間放置されていたかもしれない
幼い頃の
「話せなかった自分の感情」に
しっかり向き合って
受け止めてあげる
という作業です。

どうでしょう?

ちょっと笑いながら
うなずくサマワさん。

「そうですね。
 今父親に怒りを向けちゃったら
 元も子もないし!ハハハ!」

そう言いながら
「いつかは絶対やりたいです
 その作業。
 子供を作る前に
 やりたいかな。」
と言われました。


それは素晴らしい姿勢ですね。

それから1週間後。
サマワさんは開口一番

こう言われました。

 

「あの後、父親の部屋に行ったんです。」

休んでいる所へ
『ちょっと話があるけれどいいかな?』
と言ったら

父親も「どうかしたか?」と

聴く姿勢だった。


電気をつけないまま
「お母さんに会いたい」と
涙を流した。

そうしたら

父親も静かに
涙を浮かべながら
暗い部屋で
二人で並んで横になって

母親の事を考える

そんな時間を過ごすことが

出来たそうです。

 

「はあー!

 頭の中、時々混乱状態。

 でも良かった!」

 

伸びをしながら

笑顔でそういう

サマワさんでした。

以前書かせていただいた

インド人のサマワさん

 

「上司にサラリーを上げてもらう

 話がうまくいかなくて。」

 

そう言って始まったセッション。

 

どうやら

以前の上司に上げてもらう

と聞いていながら

上司が変わってしまい

新しい上司に話したら

「今はその資金がない」と

断られてしまった。

 

落ち込み方が激しそうです。

 

以前から

「自分の年ではもうとっくに

 もっと稼いでいるはずだ」

と言われているサマワさん。

 

お金が自分のアイデンティティに

関わるのか?

 

色々質問してみましたが、

どうやらしっくりきません。

 

けれど話している内に

少しずつ見えてきました。

 

まずは奥さんが大学をやっと

卒業したので大きなものを

プレゼントしたと。

 

そして奥さんのお母さまが

病気だから、また旅費がかかると。

 

そして、父親をインドから迎えるのに

ファーストクラスの飛行機代がかかり

そしてアメリカを見せたかったから

イエローストーン公園に旅行をした。

 

つまり出費が多かった。

というのがまず伝わってきました。

 

けれど、皆さんもここで

「おや?」

と思いませんか?

 

お金が無いのに使ってしまった

だから

上司に上げてもらう?

 

いや、前の上司が上げてくれる

と約束していたから

皮算用をしてしまった。

 

それだけではありませんね。

誰かを喜ばすために

お金を使っていますね。

 

これは彼のメンツの問題でしょうか?

 

色々聞いてみます。

 

しばらく話して

あーでもない、こーでもない

とやってから、

こんなことを言っておられました。

 

「父は若い頃から 

 すごく働いて

 僕らには不自由をさせなかった。

 

 僕は恩返しをしたいんだ。

 実際に金で返すんじゃなくて

 何かをプレゼントしたい

 とは思っていた。」

 

そうですか。

では、伺います。

サマワさんがずっと世話してきておられる

妹さんや弟さん、若い従妹たちが

いつかサマワさんに

恩返しをしたいと思ったときに

 

サマワさんに高い旅行やレストランを

プレゼントしながら

実は金銭的に苦しんでいた

と知ったら

サマワさんは

どんな気持ちになりますか?

 

「そんな...の

 全く必要ない。」

 

ですよね。

 

...サマワさんは

お父さまに恩があるのですか?

 

しばらく考えるサマワさん。

 

「いや、どちらかというと

 6か月前に母が亡くなる前、

 母を安心させてあげたい

 いつかファーストクラスに乗せて

 アメリカに迎える

 って思っていた。

 でも

 その夢がかなわなかった。

 

 それをせめて

 今生きている父に

 出来ないかと思って。」

 

お母さまが亡くなる前後のサマワさんが

「母に何かをしてあげたいけれどできない」

という罪悪感だったというお話は

以前書かせていただきました。


サマワさん。

では伺います。

 

もし今回、お父さまに

ファーストクラスのチケットを

買わない、としたら

どんな気もちになっていましたか?

 

「自分が小さい人間だって。

 無力な人間と思って

 惨めな気持ちになったと思う。」

 

そうすると...

サマワさんは

ご自分の無力感や惨めな気持ちを

感じたくなくて

大きな事をして見せたかった。

 

ご自分の嫌な感情を消す為に

無意識にその行動に出た

つまり

 

「お父さんの為」と思いつつ

実は「自分の為」にしたこと

ということになりませんか?

 

「!」


等身大ではなく

自分が立派な人間に

見せるために

結果借金をしてしまった理由が

それだった

 

と頭の中で懸命に

理解しようとしている

サマワさん。

 

ではさらに伺います。

 

この例はあまり良くないですが、

サマワさんがお亡くなりになる前に、

ご自分の子供や甥や姪が

「サマワンにファーストクラスのチケットが

 買えなかったー」と泣いていたら

 

クス!と笑うサマワさん。

 

あ、笑っておられますね。

もうすでにお分かりですね。

 

もし子供や甥名が金銭的に

困っていたら

サマワさんはなんと言って

あげたいですか?

 

「『ファーストクラスなんて

 どーでもいいよー!』って

 言うよね。」

 

と大笑いのサマワさん。

 

「...。 そんなことをしてまで

 自分に無理をしないで欲しい。」

 

ですよね。

 

サマワさんは、これからも

このように
こんがらがった糸を

少しずつほどくように、
ご自分の答えを

見つけていくのでした。

自分の事業はうまくいかなくて

やる事は沢山あるのにも関わらず

人の世話にばかり力を入れるマリリンさん。

 

長い間セラピーをやっている中でも

離婚して以来

常にお金が足りないことが不安。

自分の事業はかなり頑張って

手は広げているし

家の一部をアパートにして

副収入を得たりもしている。

 

けれどそれはそれで出費も多く

いつも自転車創業。

 

誰かお金のある男性を見つけて

頼って楽になりたいと思う事もあったり

親が残してくれた家は

母と住んでいる妹が受け取る事になるはずだけれど

あの一部を資金として

貰えないかしら。

 

「だったら、事業を広げることは

 考えないのですか?」

 

でもそれって、

銀行にお金を借りて

人を多く雇って

自分の事業を広げるということで...

 

なんか、お金を儲かることをすると

ものすごいバチが当たる気がする。

 

それで、誰かを助ける代わりに、

誰かに助けてもらうという

そんな形なら、気が楽。

 

どういう事か、なかなか解けないパズル。

 

お金を儲ける事に罪悪感?

人に頼って頼られることに解決を求める?

 

それらのパターンは

どこから来るのでしょうか?

 

実はマリリンさんには

まだ解消されていない過去がありました。

 

父がバブルの時代に

同僚と株を買って

図らずも儲けてしまい

その後もっと手を出したら

その後バブルがはじけて

借金が溜まり返済が不可能になり

挙句お父さまは保険金をかけて

自殺したとか。

 

そのお金で抵当に出ていた家は

戻ってきた。

 

それは大学生の時だったとか。

多感な時期。

 

でもその頃の感情は思い出せない。

 

何才だろうが、親が亡くなったら

喪失感は寂しさは感じないわけはないのに。

 

今回セラピーが始まって5年経って

その頃の感情を初めて話し始めました。

 

当時、借金をしている父が

今度は小さな家に住むことになると

子供達に謝りながら

マリリンさんと妹さんに

家の片づけを頼んだとか父の姿。

 

その頃は、

先の未来が不安であったけれど、

まさか父が

そんな形で居なくなるとは

考えてもみなかった。

 

ずっと元気が無くうつ状態の父を

なだめたり励ましたりしていた母が

ちょっと出かけた空きに

死を遂げてしまっていた。

 

発狂して借用書をびりびりに破って

泣き叫ぶ母。

それを見ていたマリリンさん。

 

葬式の準備をしながら、

世間体を考え

「皆にお父さんの死因を聞かれたら

 心臓発作と言いなさい。」と

母ではなく叔母に言われた。

 

自分の父親の突然の悲報を聞いたとき

唯一涙を流したのは

実家に向かう長距離列車の中だけだった。

 

いつも親も妹も周りには居たけれど。

心は常に独りだった。

誰も一緒に泣いてくれることはなかった。

 

その時も。

 

悲しさというよりは

いくつもの答えのない疑問が

頭を占める。

 

何故お父さんは

自分たちを置いて「逃げた」のか?

お父さんは

残された自分たちの気持ちは

考えてくれたのか?

何故、世間には「心臓発作」と

嘘を言わなくてはいけないのか?

大人は嘘をつくものなのか?


「お父さんは私達を守ってくれたのよ」

「これからお母さんを支えてね」

と娘たちに言う母。

 

なだめているようでいながら、

私達の気持ちを考えてくれているのか?

お父さんは私達を

本当に守ってくれたことになるのか?

 

多くの「何故」を抱えたまま

事実を語ることも

自分のの気持ちを語ることも出来ず

ただただ長女として、母親と妹の世話をする

「役割」の中で生きてきた。

 

そこで私は言ってみました。

 

 子供のマリリンさんはきっと

 お母さんの膝の上で大泣きしたかった

 一緒に泣きたかったかもしれないですね。

 

黙るマリリンさん。

 

「父は私とは近い存在でした。

 野球とか連れて行ってくれて。」

 

そこで初めて目の端に

涙が浮かびました。

 

自分の感情の蓋を開けると

とめどなく流れる涙。

 

きっと一旦蓋を開けてしまうと

圧倒されてしまうから

いつも閉め出しておく

自分の感情。

 

マリリンさんは

問題のある他人のお世話をすることで

自分の問題や感情に

向き合わないように

してきたのですね。

 

お父さまが亡くなった時も

きっとそのずっと前からも

その後も。

 

「私、ここ何十年も

 お父さんが亡くなってから

 寂しいなんて感情が体のどこかに

 隠れていたなんて

 知らなかった。」

 

そうですか。でも若い頃のマリリンちゃんの気持ちは

放置されていても

消えては居ない筈ですね。

 

それをこれからも一つ一つ丁寧に

掘り起こして

ちゃんと受け止めてあげると

楽になるかもしれませんね。

 

そんな心の作業が

実は自分とお金の関係や

自分と人との信頼関係を

立て直したり。

 

心の世界では

繋がっていないように思える

放置されていた過去のことを吟味することで、

開かずのドアが突然開くという事が

多々ある様です。

 

続きを又、お話させていただきます。