版画家 神山 歩さん 第4回 ~その日の記憶を瞬時に記録するときにはドローイングをします~ | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

版画家 神山 歩さん 第4回 ~その日の記憶を瞬時に記録するときにはドローイングをします~


みな様、こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
        
今日は、素敵な作家をご紹介いたします。
版画家の 神山 歩さんです。



神山 歩さん 

前回、有馬寛子さんのご紹介でご登場頂きます。

有馬寛子さん
第1回  、第2回第3回第4回第5回第6回

神山 歩さん
第1回 ~一番苦手な木版画を直感で選択しました~

第2回 ~自分に嘘をつかないことを大切にしています~

 第3回 ~スタートがネガティブでも作品が必ず明るい方向に向かいます~

第4回目の今日は、神山 歩さんの制作の実際についてお伺いします。
制作の時、どんなお気持ちで木版画にするかドローイングにするかを決めるのかや、
木版画の絵具、刷り方などについて詳しくお伺いしました。

神山 歩さんの第1回目の今日は、制作を始めたきっかけについてお伺いします。

どうぞお楽しみ頂けましたら幸いです。

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『なかなか空には届かない』木版画2011 800 ④

『なかなか空には届かない』
木版画 2011  




『ないしょばなし』木版画2012 800 ④

『ないしょばなし』
木版画 2012




『かみなりのこども』木版画2012 800 ④

『かみなりのこども』
木版画 2012




2009dr9_1 800 ④

Drawing  2009dr9_1




drawing2014.5.12 800 ④
 
drawing2014.5.12



『ヒメレモン』木版画2012 800 ④

『ヒメレモン』
木版画 2012




『雨音の道』木版画2013 700

絵本『triangle』
2012




絵本『triangle』2012_2 500

絵本『triangle』
2012_2




『Alphabet-1』木版画2011 700

『Alphabet-1』
木版画 2011




『Alphabet-2』木版画2011 700

『Alphabet-2』
木版画 2011

   




日下
制作や素材についての思いについて伺っていきますね。
神山さんは版画とドローイングと絵本をされていますでしょ。
今、表現したいものをどの手法を選んで表現するとかそういう切り分けってありますか。
これだったら版画、これだったら絵本、これだったらドローイングとか。


神山 歩さん

絵本については、製本されている絵本という枠組みにとらわれずに、たとえばトレーシングペーパーを
重ねて、それで見えてくる形の面白さを生かした絵本とか、丸とか三角とか抽象的な物だけで童話を
表現したりとか。

何枚か重ねてある、積み木のようなものが形が絵本であったり、立体的ものでも絵本であると考えて
います。一つの表現手段として、絵本は面白いなと思っています。
絵本の形状というか、絵本という媒体を使って表現するのが面白いなと思えば絵本にすると思います。

普段のその日その瞬間の記憶を瞬時に記録したいときは、ドローイングを行います。
そのドローイングのような痕跡の積み重ねが、ゆくゆく版画になっていきます。むしゃくしゃして版木に
彫りを入れるときもあれば、それをまた冷静に形としてみて版画に構成していきます。時間がかかる
ので、その日の気持ちをその日に、っていうときはドローイングですね。


日下
なるほど~。ドローイングは確かに版画とはスピード感が違いそうですもんね。


神山 歩さん
そうですね。版画とドローイングは、スピード感の違いだけだと思います。
その日その時の感覚を彫りに込めていって、その線の積み重ねをどう構成、整理するかという感じで
版画を作っているので、多分やっていることはそんなにドローイングと変わらないです。ただ、ひとつの
画面として作品として表現する速度でいうとやっぱりドローイングの方が早いので、私はそれを作品
としてフェイスブックやブログにあげたりとかしています。


日下
面白いですね。木版画の作品って制作期間、時間はどのくらいかけられるんでしょうか。


神山 歩さん
期間がものすごく短くて、私の場合。凝縮すると一週間とか、長くても一か月ですかね。
同時進行で4作品とか5作品くらいは作って、いつもだいたい作り始めて1か月後には出来ているので。


日下
はあ、すごいですね。(感心!)


神山 歩さん
ただ、版画を作ろうと思うまでは結構時間がかかるんですけれども。


日下
思ってからは結構速いですか。


神山 歩さん
作り始めたら速いですね。


日下
すごい。そういうのもきっとリズム感やスピード感として表れてくるんでしょうね。
すごい生き生きしてますもん、彫った痕跡とか。


神山 歩さん
そうですね。作っている時が最高ですね。


日下
ところで神山さんの一つの作品って版木は何枚位で出来ているのでしょうか。


神山 歩さん
多くて3版ですね。


日下
同じ形の版木に違う色を乗せて摺ったりもあるんですか。


神山 歩さん
はい。同じ形の版木に色を付けて摺るっていうのを繰り返して、必要な色を表現しているので、何回も
一つの版で摺ります。版を使って絵を描いているっていう言い方のほうが正しいかもしれません。


日下
では、版木が3つだとしても、摺り重ねている回数はもっと多いのでしょうか。


神山 歩さん
すごく多いです。一つの版について10回以上は摺り重ねています。


日下
版画って何枚摺ったうちの何枚目というエディションがありますが、すべて微妙に違くなってくる可能性が
ありますよね。


神山 歩さん
そうですね。ただ、自分で摺っているので、どれとどれを足したらこの色になるのかを覚えています。
だから、ほぼ同じように摺ることはできますね。


日下

そうなんですか。すごいですね。


神山 歩さん
場合によっては、エディション2つだけ摺って、本当は10だから残りの8は後で摺るっていうこともあり
得ます。


日下
そうなんですか。
そして絵の具が透明水彩とか、水彩絵の具だそうですね。


神山 歩さん
透明水彩を使うのが一番本当はベストなんですけれども、透明水彩は高いので、普通のペンテルとか
サクラ絵の具とか、子供が使うような絵の具あるじゃないですか、あれ、結構摺りやすいので、最近は
あれで摺っちゃったりとかします。あとアクリル絵の具使ったりとか、京都の顔料屋さんから買った顔料
を使う時もあります。

広い、大きな作品の時は顔料の方が断然安いので、顔料を使います。


日下
作品の大きさはどのくらいの大きさなんですか。


神山 歩さん
最近作っているのは小さめですね。芸大の卒業制作で作ったアルファベットっていう作品については、
多分シハチ(4尺×8尺)版の木を切って摺っているので、相当大きいんですけれども。


日下
シハチ板。


神山 歩さん
最近作っているのは、十何センチかける何センチの小さい作品です。


日下
ごめんなさい、シハチ板って、私はあまり聞かないのでよくわからないんですけれども。


神山 歩さん
サブロク板が畳一畳分で90×180センチ、多分それがサブロク板なんですけれども。
シハチ板は110×200だった気がするんですけれども、それが、一枚のベニア板になっているのです。
すごく大きいので、彫るときは本当に棟方志巧みたいな感じになります。


日下
じゃあ、この「アルファベット」の作品はすごい結構大きい画面なんですね、。


神山 歩さん
サブロク板かも。ちょっとどっちか忘れちゃったんですけれども、多分かなり大きな画面ですね。


日下
10回くらい摺り重ねてもこういう透明感があるっていうのはすごいなあと思いました。


神山 歩さん
ありがとうございます。


日下
今日は素敵なお話をお聞かせ下さいましてありがとうございました。



『あまやどる』木版画2014 800 ④

『あまやどる』
木版画 2014


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編集後記

今年2016年3月17日~4月21日に全6回で掲載した彫刻家 有馬寛子さんのご紹介により、
今回初めて神山 歩さんお話をお伺いしました。

私が神山 歩さんの作品写真を初めて拝見した時、すぐに感じたのが「明るく、爽やか、透明感!
楽しい!」ということでした。 私は木版画の経験は少ないのですが、版木を「彫る」ことについてお話
頂いたとき、その体感がよくイメージできることもありとても楽しくお話を伺いました。 

また神山 歩さんの制作に対する思いをお伺いすると、姿勢が明快で迷いのない感じがとても心地良く
感じられて、とても共感いたしました。

神山 歩さんは東京芸術大学大学院の美術教育研究室のご卒業でいらっしゃいます。
制作者であると同時に学童保育の指導員として、これまでに学ばれたこと、ご自身の体験を踏まえて
お仕事に誇りを持って携わっていらっしゃるところがとても素晴らしいと感じました。


次回は神山 歩さんの制作テーマ、制作の思いについてお届けします。
どうぞお楽しみに。

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神山 歩さんのホームページ


◆神山 歩さんが掲載されているWEBページ

ART tokyo インターネットギャラリー

かわかみ画廊

数寄和


◆神山 歩さんの略歴
 第1回 ~一番苦手な木版画を直感で選択しました~ (記事終盤に掲載)



本日もご訪問下さいまして、ありがとうございました。


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