造形作家 石山 駿さん(再放送)第6回前編~自分にショックを与える作品が欲しかったのです。~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」


 

みなさま こんにちは。

みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。



今日は素敵な作家をご紹介いたします。

陶を素材とした作品を作っておられる造形作家 石山 駿さんです。



石山 駿さん
(茶屋町画廊個展2010)



以下、2015年2月の再放送でお届けします。


前回までの山本 哲三さんからのリレーでご登場頂きます。     
山本 哲三さん
第1回  、第2回  、第3回   、第4回 第5回第6回 、 第7回、  第8回 、  第9回  

 

石山 駿さん

第1回  ~作品のかたちを日夜考える学生時代でした ~
  
      
 略歴紹介ページ
2回  ~専攻科で決定的に変わりました ~  
第3回  ~瀬戸で陶に出会いました ~
第4回  ~陶で最初の作品がアメリカで紹介されました ~
第5回   ~アマチュアリズムで陶に向き合っています ~


第6回目の今日は、石山さんが自由に形を創作するために、どんな手法で制作されているのかを
お伺いしました。 それは、沢山の作品のパーツを出合わせることで生まれてくるのだそうです。


どうぞ、お楽しみ頂けましたら幸いです。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


9-1 800
9-1(ポストシリーズ 2003~)

概寸 高さ130cm





9-3 800
9-3(ポストシリーズ 2003~)





10-4 800
10-4(ウェーブシリーズ1994~)




10-5 800
10-5 (ウェーブシリーズ1994~)

寸法 42×36×6.5cm





11-1 800

11-1 (フェイスシリーズ 2004~) 

寸法 30×24×4.0cm




11-2 800
11ー2 (フェイスシリーズ 2004~)





11-7 800
11-7 (フェイスシリーズ 2004~)





12-1 800
12-1 (快陶面白シリーズ 2010~)





12-4 800
12-4 (快陶面白シリーズ 2010~)

寸法 27×33×5.0cm





12-9 800
12-9 (快陶面白シリーズ 2010~)





12-15 800
12-15 (快陶面白シリーズ 2010~)





日下
石山さんは、陶での制作になってからは、一切デッサンはしなくなったというお話でしたね。



石山 駿さん
そうです。
シュールレアリストのアンドレ・ブルトンという人の言葉の中で、正確かどうかちょっと自信が

ないんですけれども、「手術台の上でこうもり傘とミシンとが出会った」というような表現の文章を

書いているんです。
彼が生きていた20世紀前半のヨーロッパの,時代背景は、ダダの運動からシュールレアリズム

誕生へと大きな変革の時代で、その中心にいた人物です。
その予想外の情景を想像すればするほど僕は強く惹かれたんです。


本来なら出会うはずのないそれぞれ別個の日常生活上の用途性を持った物体どうしが偶然

出会ってしまう。
そこに、人は何を感じるかということ、
僕も作品を生み出すプロセスの中にもそういう部分がほしいと思っているんですね。


おそらく、まったく出会わない形が出会って生まれるものは、人が見たらやっぱりすごく困惑すると

思うんです。
「なんだろう、これ。どう解釈していいんだろう。」と思うのが当たり前でしょう、
でもそんなふうに自分にショックや意外性を与えることの意味を大事にしたかったのです。
自分の経験値や価値観の範囲に収まらないものから逃げるんじゃなくて、むしろそこに関心を

向けるべきだと考えました。


制作の手順が想像出来たり、これはあの範疇の作品だな、というのは僕にとっては魅力が

感じられないんです。


そうでない作品はどうしたら生まれるかというところから、僕は自分の持っている概念性を壊す

ための出会いそうもないパーツをいっぱい作っちゃうんです。



日下
はい。



石山 駿さん
たとえば、ここに、こういう作品がありますよね、これ。
これ、みんな、パーツが全部バラバラなんですよね。

 

(※顔のシリーズの作品パーツを見せて下さっていました。)

  ↓ 参考写真



素焼きのパーツ



素焼きパーツの窯詰



日下
はい。凄く沢山あるんですね!(驚き)


石山 駿さん
僕が作る場合は、こういう大小、様々な形がいっぱいあるんです。
例えば、この顔の表情なんかを、僕自身がああでもない、こうでもないと
とっ替えひっ替えいろんなパーツを置いていくうちに、偶然,出会っちゃうわけなんですね。


そんなプロセスの中で瞬間的に感じるものがあるんですね、そこを決定しちゃうんですよ。
そういうふうにして、形が偶然組み合わさって出来ていく面白さみたいなものを掬い取っているんです。



日下
とっても面白いですね。



石山 駿さん
そのために必要なのは、いかに勝手なパーツをたくさん作っておくかということ。
それが表現の特異性というのか、僕にとって自分を驚かせる形をいかに発見していくかに

繋がっていくんじゃないかと思ってるんです。
それを期待しながら、今も同じような制作方法で作っているんですけれどね。



日下
パーツはすべて焼いた状態であるのでしょうか。



石山 駿さん
まず素焼きまでしておきます。800度前後で一度焼き締めて、割れない程度にしてあります



日下
素焼きのもので形を考えるんですね。



石山 駿さん
そうそう。いっぱい重ねて。
それで形が決まったら次にどんな色にするかを考えるんです。
釉薬を塗るときはまた形をバラバラにしなくてはなりません。

そして再度窯の中に置く時に元の形に組み立てるんです。

大体どの作品も1230~40度の温度で焼成しています。


釉薬が溶けることで個々のパーツが接着されるんですが、あまりに不安定で、

焼成中に動きやすい形やとても小さい形は別にしてあとで接着剤で付けることもあります。
作品の形状によっては、パーツを全てバラバラのままで焼成を済ましておいて、再度組み合わせて

接着のためだけに2度焼きすることもあります。



日下
色よりも先に形で判断しているというのが、とっても意外で新鮮です。



石山 駿さん
そうです。だから焼きあがってから、どうも色の具合が嫌だというのは当然あるし、
すべてがピタッと収まるというのはなかなか無いんですけれどね。
というか、コレはというものが生まれた瞬間というのはものすごく嬉しくなりますね。
形が何よりも自分を驚かしてくれるというか、そんな形に出会った瞬間の満足感が。



日下
きっと、そこがご自分を驚かせる形をいかに体験していくかという
本質的な部分なのですね。


石山 駿さん
そうですね、それこそが僕自身が見つけ出す形であって、そして同時に僕にしか作れない形で

あれば、僕が作り続ける意味もあるんだと思ってます。
そのためにも一つのスタイルに固執して作ってはダメだと思っているんです。
多様な形の作品がいっぱいあっても、これは彼のだ、と言われるのが僕にとっては大事なんです。


日下
ああ、それは素晴らしいですね!





7-1a 800
7-1a (カメレオンシリーズ1989~) 

「カメレオンたちの痴繪圖戯夢(チェスゲーム)」

寸法 160×120×12cm


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編集後記


今回、山本 哲三さんのご紹介で、初めて石山 駿さんにお話をお伺いしました。
石山 駿さんは陶を素材とした彫刻作品で国内外での発表活動歴が豊富で多彩な
彫刻家でいらっしゃいます。


山本 哲三さんからは、クレーワーク(学生当時は陶彫と言われていた)をやっていらして、
既成概念に捕われない楽しい作品が大変評価されている彫刻家としてご紹介いただきました。
愛知県瀬戸市で1月迄開催されていた「アートでびっくり!干支セトラ展」を主催する
アートのNPOの理事もしていらっしゃいます。


今日は、石山 駿さんがご自身にとって予定調和でない作品に出会うために
とられている制作手法を具体的にお伺いしました。
それは沢山の素焼きのパーツの形を出会わせていくことで、しかも色よりも形が先に決まる
ということに、石山さんが陶の彫刻家でいらっしゃるということを強く感じました。


また、自分のその時の年齢、環境、社会での位置によって切り口が変わっていくという
柔軟性な姿勢に、私もとても刺激を受けました。


次回は、今回の最後に出てきたカメレオンのシリーズについてお届けしてまいります。


どうぞお楽しみに。

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◆ 石山 駿さんが所属する特定非営利活動法人 Art-Set0のホームページ 
   特定非営利活動法人 Art-Set 0で運営しているギャラリーのフェイスブック
   
アートセットスタジオ

石山 駿さんの略歴

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