ガラス工芸作家 大槻洋介さん(再放送) 第4回 ~震災の時に作品の明かりがお役に立てました~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

ガラス工芸作家の大槻洋介さんです。

 



大槻 洋介さん

 

以下、2014年5月の投稿より再放送いたします。

 

前回登場の川﨑 文雄さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 川崎 文雄さん 第1回 第2回  、第3回  、第4回  、第5回  


 

大槻洋介さん  第1回  ~全く未知の世界に興味を持ちました~

           第2回 ~「Gate・門」というテーマがライフワークです~

           第3回  ~瑠璃色は沖縄の海の青さに重なります~

 

 

第4回の今日は、大槻さんのガラスの作品はオブジェであると同時に
LEDの内蔵された照明器具でもあるのですが
その作品が震災のときに作品がお役に立てて嬉しかった
というエピソードをお聴かせ頂きました。

 

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。

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横浜市中区、元町クラフトマンシップ・ストリート
インフォメーションタワーのガラスオブジェを制作(2006年)

 

 


日下
大槻さんは普段、制作の時に何か社会との接点を
意識されることはおありでしょうか。

 


大槻洋介さん
作品のPlanetry ring(プラネタリーリング)からKou (孔)に至るまでは
全部LEDを使っていて、オブジェであり、照明器具でもあるというお話をしました。

 

この作品をお買い上げ頂いた、ご夫婦のお客様のエピソードがあります。

 

3.11の東日本大震災がありましたよね。

横浜の方は、東北のような大きな被害は無かったのですが、
例の計画停電で、数時間停電になってしまうという状態がありました。

 


日下
ええ、それも本当に大変でしたでしょうね。


大槻洋介さん
やはり、どこでも懐中電灯や電池などを買い漁る状態で
どこに行っても品薄状態で売って無い状態でした。

 

そのご夫婦も、懐中電灯を買いそびれた状態で、
二人でお住まいなのですが、夜、計画停電になると
家には懐中電灯が一個しかない。
そうなると奥さんが台所で料理をしていて、旦那さんがリビングで待っていると。

 

そんな時に、どちらかが移動すると、
一個しかない懐中電灯を持って行かれてしまう、
待っている方は真っ暗闇で、奥さんだったら料理ができない、
旦那さんだったら本を読むどころか身動き取れないという
ご不自由をしているというお話を伺いまして。


 

日下
ええ、ええ。(興味津々)

 


大槻洋介さん
それで、「私の作品あるじゃないですか!」
あれは電池でつきますよ、とお伝えしたのです。

 

充電式電池の使えるタイプですので
これを充電して停電になったら最低でも6時間点灯可能な事、
非常に明るい光ではないですけどほんわりと室内を照らす
ぐらいの明るさにはなりますので使って下さい
とお伝えし、外付けの電池ボックスをお送りしました。

 

食卓に置いて、停電になったらポンとつけて
奥様が懐中電灯片手にお料理をして、
旦那さんが移動してもリビングの中央に
には私の作品がほわっと灯がついて、つまずく事も無く、
食事が出来たら私の作品を挟んで、食事をして頂いて。


 

日下
うわ~、何か災害を感じさせない雰囲気がありそうですね。

 


大槻洋介さん
そうなのです。
計画停電で非常に不自由されている方が、
「その明りで、まあなんて贅沢な食事をさせて頂いて
 とても良かったです。本当にありがとうございました。」
というお言葉を頂きました。

 

LEDを使って光の作品を作っていた事が
私が表現したい想いだけでなく、
思わぬところで一つの違う役に立ったというのは嬉しいお話でした。

 


日下
素晴らしいエピソードですね。
明かりって、暗がりの中で本当に人の心を癒すものなんでしょうね。

 

震災を経験して、美術が社会の役に立てるかどうかや
アートの力や役割を改めて考えさせられる時期でしたが、
とても素敵なお話ですね。

 


大槻洋介さん
被災地に向けての活動というのは
多くのアーティストさんが、いろんなことをされていると思うのですが
私のこのエピソードは全くそんなことは考えずに
私の創作活動で作ったものがお役に立ったということなんです。

 

私の作品とたった一個ある懐中電灯以外は全く明かりが無いという不自由な状況で
作品の明かりが贅沢でいいというお言葉を頂けたことが
作家冥利に尽きる経験でした。


 




神奈川県横浜市 フェリス女学院大学     
山手の丘音楽コンクール2012 
グランプリトロフィー
W9×D6.5×H18cm
元町クラフトマンシップ・ストリート賞トロフィー
W5.5×D5.5×H18.5cm
制作(2012年)

 

 


日下
とっても素晴らしいと思います。
他には何か意識されることはありますでしょうか。

 


大槻洋介さん
常にグラスや器を制作していますので、
日常の中に私の作品があって欲しい、
あるのであればどういう位置づけで存在しているのかを考えるというのが
いわゆる純粋な絵画や彫刻のファインアーティストさんとは
ちょっと違うかとは思っています。

 

私の作っている光のオブジェも常に
室内とか橋とかそういう所にあることによって
雰囲気があるものであればいいなということを想います。

 

やはり大きさがどこまでも大きくということには限界がありますので
日常生活に入りやすいアートの大きさという認識は常にあります。

 

コミッションワークは、必ずどこかに置かれるという前提の作品ですから
これはお話を頂いたら必ず現場に赴いて、
お話を頂いたクライアント様のお話を聞いて
それに合わせて一つずつ制作している作品です。

ですから社会との接点という意味ではそれに適している作品だと想います。

 


日下
素晴らしいですね。

 


大槻洋介さん
素材という点では、アートの素材としては、
ガラスというものが一番出遅れている感を感じているんですね。


 

日下
どうしてでしょうか?

 


大槻洋介さん
なぜなら、木や金属、焼きものに比べて、やはり破損した場合の、
一般の方が思い描いている、ガラスは割れるから危ないという
マイナスイメージの方が強過ぎて
公共彫刻なり、日常の空間でも他のジャンルに比べて
若干浸透しきれていない部分を感じるのです。

 

もっと日常の中に、アートの中にガラスが入っていければ良いなとは思っています。

 


日下
そうですか~。
私はそうは感じていませんでしたが。

 

私の個人的な意見ですが、ガラスの割れるという性質も含めて
公共のスペースでもガラスがモニュメントなど屋外設置の素材として
認められるように、鑑賞者も成熟していくと良いですよね。

大槻さんの作品はとても安定感があって、しかも美しいので
より多くの場所で見られるようになるといいですね。

 

今日もとっても素敵ないいお話をありがとうございました。

 


 

BELISTA横濱上永谷 マンションエン

トランスホール
ガラス照明「孔」 制作
W28×D17.5×H60cm(2007年)

 

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今回、川崎文雄さんからのご紹介で、初めて大槻洋介さんのお話をお聴かせ頂きました。


大槻さんはいくつかのテーマをシリーズで制作をされていますが、
ガラスの透明な塊に子供の頃からの宇宙への憧れを重ねて
制作していらっしゃるのだそうです。


学び場美術館では、特にライフワークにされている「Gate」のシリーズについて、
大槻さんはGate・門というものを、制作を続けていくご自身の生き方に重ね合わせて
定期的に制作なさっているというお話を伺い、とても共感を覚えました。


今日は、大槻さんのオブジェでありながら照明器具でもある作品が
非常時という状況すらも忘れさせてくれる、心潤すものとして、
クライアント様の空間に存在していたというお話にとっても感動を覚えました。


工芸はよく「用と美」という言葉で表現されます。
大槻洋介さんは、その美というところで、
日常の空間にありながら、人の心を打つ非日常的なものを届けたいと
いう強い想いで制作なさっていてとても素晴らしいと感じました。


みなさまもぜひ、大槻洋介さんの作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。



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◆大槻洋介さんが登場するWEBページ

 ◇  大槻洋介さんのホームページ
   
 大槻ガラス工作工房 OTSUKI GLASS STUDUIO 

 

 ◇  大槻洋介さん ガラス工房フェイスブック


◆大槻洋介さんの作品が直接見られる所 

 ◇  大槻工房ホームぺ-ジ
 

◆大槻洋介さんの作品がご覧頂ける展覧会
大槻洋介作品展 彩りのガラス展 (※終了しました。)

切り子のグラス、ペンダントなど資格と味覚で楽しむガラスをお届します。

2016年8月24日(水)~29日(月) 10:30~19:30 

会期中、作家によるカットグラスの実演を行います。

日本橋三越本店 本館5階和食器

東京都中央区日本橋室町1-4-1 電話03-3241-3311

 

◆大槻 洋介 さんのプロフィール
  第1回  ~全く未知の世界に興味を持ちました~ 
 (最後に記載してあります。)

 

 

本日もご訪問下さいまして、ありがとうございました。

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