彫刻家 川﨑 文雄さん   第4回~ 粘土という素材に向き合っています ~  | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の川崎 文雄さんです。




川崎 文雄さん


前回登場の渡辺 知平さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 渡辺 知平さん  第1回 、  第2回 、   第3回 、   第4回 、  第5回  


第1回  ~ 中学校での石膏取りが原点でした  

第2回  ~ 目を広げてものを見るという教えを受けました  ~

第3回 ~ 「ひと」の営みの命の輝きを表現したい  ~ 


第4回の今日は、川崎 文雄さんが陶器で彫刻の制作を始めたきっかけについて
お聴かせいただきました。


故郷では身近に粘土が取れる環境があったことや、
テラコッタの柔らいかい表現よりも、カチッとした表現を求めて
陶器に移行していったこと、ほか制作の技術的なお話をお聴かせ頂きました。


どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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廃墟にて
廃墟にて
下の部分200×200×40
2002年 白川郷芸術祭




孤独2008 

孤独なるもの
H190
2008年





遠き星の記憶

遠き星の記憶
H210
1997 


宇宙からの使者

宇宙からの使者 
H205
1998




示現1999

示現 
H160 
1999年




ひと(犠牲そして風化)

ひと(犠牲そして風化)
180×90×45
2002年






日下
作品の素材のことをお伺いしてまいります。
白川郷芸術祭の作品のまわりにまいてあるのもガラスでしょうか?



川﨑 文雄さん
あれは陶片です。

素材の話をすると基本的に最初900℃ぐらいで焼いていたんですけど、
テラコッタの土の柔らかい表現みたいなものをもうちょっと抜け出したくて。


1200℃以上でそのまま焼いても茶色くはなるんですが、
鉄分の多い粘土を使っているとさらに焦げ茶色になっていくんです。


いろいろやっているうちに、 テラコッタよりもカチッとしたものをやりたくて、
上に鉄とかマンガンみたいなものをかけて、陶器として焼いているんです。



日下
そうですか。
釉薬で着色しているのか、色だけ後から塗っているのかお聴きしてみたいと思っていました。



川﨑 文雄さん
最初は黒い着色をしていたんです。
ただせっかく焼くので 最初っから黒いものを、と考えました。


陶器の釉薬というのは買えばだいたいピカピカになるものばかりで
いろいろ失敗したんですけど。

自分でいろいろ考えて、試してやっているのが今使っているものなんです。
今は自分で酸化鉄とマンガンを混ぜたものを使っています。


ただ焼き物ですから一割以上縮むので、
1メーター作ると、10センチ縮むので、それがネックにはなっています。


そういうのもあって、白い作品「孤独なるもの」は、
木を素材に白セメントや鉛の板などを組み合わせたかたちで作ってます。



日下
あ、白いセメントですか。
形を作った後に石膏をつけていらっしゃるのかと思いました。

「孤独なるもの」(190センチ2008年)も陶は使っていらっしゃるのでしょうか。



川﨑 文雄さん
素材的には陶器も入っていますよ。



日下
鉛を貼ったのはラインのところでしょうか。



川﨑 文雄さん
鉛のところは正面、胸の黒いところ、ひび割れの隙間を埋めているところです。
ラインのところは木です。



日下
ほかにも木で作ってある部分はありますか?



川﨑 文雄さん
頭のところをはめ込んで作ってあります。あと手の先。
あと、手のくっついてるみたいなところとか。


ちょっと作品が喋り過ぎかとも想いますが。
黒いところも頭のところも
わざわざ焼いたものをくっつけたり。

風化するものというイメージの中でやっていますが。



日下
風化するものというのは、
「土に帰る」というような意味でしょうか。



川﨑 文雄さん
風化していく雰囲気とか
欠けてたり、不完全なものとか素材で何かやってみようかなとか。



日下

彫刻の中でも陶を中心的な素材に選ばれたというのは
何かきっかけがおありだったのでしょうか。



川﨑 文雄さん
土は、昔から好きだったというか、身近にあったというか。

粘土っていうのは粘土屋で買って来るものじゃなくて、
崖っぷちの層になっているような所に行って取って来るものだ、
という所で生活していたので。


焚き火で焼く程度で、あんまり焼くということはしていませんでしたけど、
山で掘ってきた粘土に新聞紙を張り込んでいき中を割り出して大きい張り子を作ったりとか
そういうことをやっていましたから、
なんとなく土というものには小さいときから馴染みがありました。


私の父は美大にいくのは反対しましたけど、
もともと高校で日本史の教員をやっていて古代史が専門だったんです。


よく雨が降ると嬉々として土器のかけらが出てくるような所に行って、
そういうのを集めて高校に資料館を作ったりするようなところもありましたから、
そういう古代的イメージというのも
どっかで刷り込まれているのかもしれません。


土の持っている可塑性という利点、
そこからものを作る材料としてはピタッときたのかもしれません。
ただ自由過ぎて・・・、という素材かも知れませんけども。



日下
自由過ぎて不自由な素材ということでしょうか。



川﨑 文雄さん
はい、形はいくらでも自由に変えられるというか、
木とか石とかと違ってグジュグジュのものですから。


なんかそれを形にまとめるというか、ちょっと大きいものを作ろうとすると
柔らかいですから、上の重さで下がブワッと自重で膨らんで来てしまったり。


水を与えてやらないと可塑性が落ちてくる、
塊でおいておくと乾燥してカチカチになってひび割れて来たりとかしますよね。


自由過ぎて大変な素材だと思います。
誰でも入っていける柔らかくて自由な素材なんですけど、
ものを作ろうとするとそれがかえってとんでもないことになる不自由な素材というか。




日下
手びねりと、石膏型抜きでつくっていらっしゃるのか
お聴きして割れてみようと思っていましたが、 今のお話しだと手びねりですよね。



川﨑 文雄さん
そうですね。最初は型で取っていたんですけど。
何回も作る訳ではないのに型がどんどん出来るわけですね。
で、テラコッタの型って割りませんから、そのまま残るんですよ。
大体作品より型の方が大きいですから。邪魔でしょうがない。


だから上手く作れないかなというので、心棒にウレタンを蒔いて
後はそれを途中で抜いたり、もう最近ははなから手びねりしたり。


だから兵馬俑なんかは、物凄い技術だと想うんですよね。
型を作ればある程度細長い高い立ったものも作りやすいと想いますが。


手ひねりだとつぶれてくる前に切って、後でくっつけるとか。
だから大体1メートル以上あるものは、最初に何本かに切ってあるとか。
あとは最初から積み上げるように階段状に?作るとか。



日下
そうですか。窯はご自身でお焼きになるのでしょうか。



川﨑 文雄さん
家にはでっかい窯は無いので、焼くのは業者の窯とか、学校の窯とか。


業者に頼めば結構でかい窯持っていますけど
ただ、余り大きいものをいっぺんに作ると
窯に入れるのも、運ぶのも大変なんです。
大体60キロぐらいを限度にして作っています。


本当は耐久性を考えてブロンズにするのが良いんでしょうけど
30センチぐらいのブロンズが関の山です。


どっかで展示してくれるというならいくらでもブロンズにしますが。



日下
ブロンズは高価そうですものね。



川﨑 文雄さん
ちょっと大きくなれば、三本の指の額になりますから。
最初からブロンズにしてくれるって言われたら、
最初から石膏で作っていると想います。



日下
そうですか。
興味深いお話をたくさんありがとうございました。







MASK-BIRD  H35  2003年  700


MASK-BIRD
H35
2003年


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今回、渡辺 知平さんからのご紹介で、初めて川崎 文雄さんのお話をお聴かせ頂きました。


川﨑 文雄さんは「ひと」をテーマに作品制作をされてきました。


最初の頃は、人間が大空を眺めて宇宙と一体になったかのように感じている世界、
それは原初的な何か、古代的なイメージの表現をめざすものだったということです。


今は「ひと」を通して
黙って立って見ていてくれるような、無言でもじわっと人を慰めてくれるイメージ、
なんか助けたいなという気持ちを感じてもらえるような存在のものが作れたら、
という想いで取り組んでいらっしゃるそうです。


それが作品に表われていて、私は川﨑 文雄さんの作品に
おちついた静けさとずっと寄り添っていてくれるような優しさとを感じました。


今回の記事では、陶の彫刻を紹介していきますが
マスク(顔)のシリーズでは様々な素材を調和させた作品展開もされているそうです。


アートを子供の頃から身近なものとして捉えてこられた川崎 文雄さん。
素材や制作手法をにいつも研究熱心に取り組んでいらっしゃる姿勢が
強く感じられました。


みなさまもぜひ、川崎 文雄さんの彫刻作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆川崎 文雄さんが登場するWEBページ
  
◇  
ターレンスクラブ プロの机 リンク
 


◇  自由美術協会公式ウェブサイト  、  

    川崎 文雄さんの紹介ページ
    
        

 ◇  ハマ展:横浜美術協会ホームページ











◆川﨑 文雄さんが出品される展覧会



2014 彫刻8人展   (展覧会DMはこちら からご覧いただけます。)

 2014.3.17(月)~3.23(日)  ※(←終了しました。)

 11:00~18:30 (初日13:00より、最終日16:00まで)

 銀座アートホール




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