みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家の小淵俊夫さんです。
小淵俊夫さん
前回登場の安藤英次さんからのリレーでご登場頂きます。
彫刻家 安藤英次さん 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回
第1回目の今日は、彫刻の制作をはじめたきっかけを
お聴かせ頂きます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
かざだま 1992年
長野県臼田町南佐久地域振興センター内
高さ 4m 大理石
南風の標石 1987年
沖縄県 日航オクマリゾート 設置
幼星のゆりかご 1998年
カンブリアンボール
カンブリア紀の生物を想像した作品群 2009年
日下
小淵俊夫さんが彫刻の制作を始められたきっかけについて
お聴かせ頂けますか。
小淵俊夫さん
子どもの頃から結構仏像が好きで、将来は仏師になりたいと思っていました。
高校生の時に、京都の仏像製作所に
弟子入りさせて下さいという手紙を書きました。
そうしたら、「まだ若いんだから、もう少ししっかり考えなさい」
という返事が来まして白紙になりました。
ですが、モノを作ることが好きだったので、
やるんだったらいずれは彫刻を作りたいと・・・。
それで、高校を卒業した後に何年か浪人して、美術大学に入学したんです。
日下
高校生の頃から、何か彫っていらしたのでしょうか。
小淵俊夫さん
そうですね。ちょっとした丸彫りで円空仏みたいなものを彫ったり
あとは仏像彫刻入門みたいな本を見ながら、
彫刻刃を買いまくって、ちょっと彫ったりはしていました。
日下
やはりやってみて、いいなと実感されたのでしょうか。
小淵俊夫さん
そうですね。
とりあえず好きなのが美術しかなかったので。
自分にできるのはこれしか無いだろうと。
日下
例えば家族やご友人とも共有できるものがあるなど
何か周囲の環境の影響はおありでしたか。
小淵俊夫さん
父が小学校の先生でして、隣で図工の準備をしていたり、
伯父さんが薪とか木の枝とかで、
僕の目の前でぱぱっとおもちゃを作ってくれたりしていましたね。
日下
わぁっ、それはすごいですね。
小淵俊夫さん
そういうものをずっと見てきたものだから
ずっともの作りが好きでしたし
その楽しさを子どもの頃から実感していたと思いますね。
日下
そうですか。
その後、美術大学に入られてから、石を選ぶようになるには
何かプロセスはおありでしたか。
小淵俊夫さん
最初はもちろん木彫でしたが
浪人している間に、いろいろ見たり本を読んだりして
石の持つ恒久性や永遠に残るということに強く惹かれました。
私が死んだあとも何千年も残るんだと。
それがとても痛快に思えたので
石しかないだろうということで石彫をやりたいと想いました。
日下
小淵さんご自身も何千年も経て残っている石彫の作品で
心惹かれるものなどはありますか。
小淵俊夫さん
エジプトの彫刻やシュメールの彫刻など石像ですね。
そういうものには強く惹かれましたね。
しかもそれが7千年も8千年も前の、作った人間は全く知られていないのに
かたちは完璧なかたちで残っているという痛快さですよね。
そういうものに憧れたんですよね。
日下
ああ、すごいですよね。
本当によく残っていますよね。
小淵俊夫さん
最近の研究でも、一番恒久性のあるメディアは何かという研究をした人がいて
最後にたどりついたのはやっぱり石だと。
日下
わぁ!(感動!)
小淵俊夫さん
メディアとしても不変性があるというか。
結局は石しか残らないという。
日下
その研究はとても興味深いものですが
何か大学でされているような研究なのでしょうか。
小淵俊夫さん
いや、誰かコンピューターをやっている友達から聴いた話です。
一番耐久性のあるメディアは何かという研究をした人がいて
結局たどり着いたのが石だったという話をチラッと聴きました。
日下
彫刻をしている者にとっては励みになる研究ですね。
石の彫刻は不変的な要素がありますが
すごく原始的な事をしているようにも見られることが多いので
そのお話にはとても励まされます。
小淵俊夫さん
私は日本の現代彫刻の初期の石彫家の話も聴いていますが
その頃から比べると道具も物凄く発達しているので
今はかなり楽だとは思います。
新しいダイヤモンドの工具が発達しましたが
それもちょっと前まではなかったものです。
それまではのみと石頭(せっとう:ハンマーのこと)だけで制作していたのが
我々が大学に入った頃には、とても高かったダイヤモンド工具が
みるみる値段が安くなって普及しました。
それで非常に安直に、簡単に石彫が出来るようになったというのは
あるかもしれませんけどね。
日下
そうかも知れないですね。
私は小淵さんの作られているかたちを拝見すると
技術的にとてもすごいと思います。
小淵俊夫さん
そうですね。
結局、一つの作品に非常に手間暇を惜しまずかけるので
そういう風に見えるかもしれませんが
決して技術的に優れているとは私は想っていません。
日下
そうですか~。
素朴な質問ですが、一抱え位の大きさの作品一点、
最低、どのぐらいの時間で出来ますか。
一概には言えないかもしれませんが。
小淵俊夫さん
一抱え位ですとかたちによりますが
みっちりやるんでしたら、最低、一カ月位でしたらできます。
大概他に食うための仕事もやっていますから。
制作はぽっつら、ぽっつらですが。
小さなものだと、かたちだけでしたら1週間ぐらいで出ますけど
そのあとの仕上げが手磨きなもので、
そこでかたちを出すことの倍位かかっちゃうんです。
日下
本当に磨きは時間がかかりますね。
小淵俊夫さん
日下さんはやっていらっしゃるから分かるかもしれませんが
細かいかたちだと機械が入っていかないので。
大概、手磨きになりますね。
日下
本当に、そうですね~。(同感)
それにしても、一点一点がクオリティが高いので
拝見して感動しました。
小淵俊夫さん
本当に手間暇を架けるので。
カンブリア紀の生物を想像した作品群 2009年
夢夜の旅 1995年
太陽風 2000年
日下
小淵さんは多摩美術大学で彫刻を学んでいらっしゃいますが
その大学の彫刻で特長的なことを教えて頂けますでしょうか。
小淵俊夫さん
我々が学生のころはちょうどバブルの頃だったので
非常に多摩美出身とか、多摩美にいる人が大活躍していたんですね。
特に石彫は、少しカリスマ性のある先生がいらして、
制作指導はしてくれませんでしたが、
一緒に酒を飲んで盛りあがって、結構みんな一生懸命制作していました。
時代がそうだったんですね。
その頃は評判良かったんです。
日下
そうですか~。
私が学生で多摩美大の卒業制作展を見に行った時、たまたま、
ギャラリー会場で先生と学生の方々が打合せしている場面に出くわしたことがあります。
既に何か社会との接点をもった制作発表の打合せをされていて
「大学によってこんなにレベルが違うんだ・・・。」とドキッとしたことがありました。
本当に多摩美大の方々はご活躍されていたのですね。
それから中井延也先生という方は
彫刻シンポジウムの記録や、スト―ンテリアなど活躍されている方が
掲載されるものの中に必ず出ていらっしゃいますね。
多摩美大で教鞭をとられていたとのことですが。
小淵俊夫さん
私が多摩美に入る頃の石彫の先生です。
アートとしての石彫を始めた最初の頃の人ですよね。
最初の頃の方ですから、彼は石屋さんに頼って石を彫る技術を身につけた。
まだ、石彫のジャンルが無かった時代から石を彫り始めていた人ですよね。
私が二十歳の時で25~30歳は年長の方ですが
酒の飲み過ぎで退職前に亡くなってしまいました。
日下
あまり制作指導はされなかったというお話ですが
何か影響を受けたことなどはおありでしょうか。
小淵俊夫さん
作品自体はあまり熱心に作っていなかったんですが、
面白かったので学生達もみんな影響は受けたんですよ。
丁寧に手取り足取り指導なんかされたら作家は育たなかったんでしょうね。
放っておかれたのが良かったんですね。
日下
やはり、学生が自分で考えて制作するということでしょうか。
小淵俊夫さん
そうですね。
日下
今日は、素敵なお話をありがとうございました。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
今回、安藤英次さんのご紹介で
初めて、小淵俊夫さんとお話をさせて頂きました。
私が二十代の頃に購入した石の季刊雑誌「ストーンテリア」に
私の記憶に残るとても素晴らしいモニュメント作品がありました。
その作者である小淵俊夫さんにお話をお聴かせ頂く機会に恵まれました。
小淵俊夫さんをリレー紹介して下さった前回の安藤英次さんは
多摩美術大学で同じ石彫専攻でご一緒に制作されていたのだそうです。
また前々回登場の織本 亘さんは塑造専攻で
2~3年後輩の同窓生でいらっしゃるのだそうです。
小淵俊夫さんは中学・高校で、美術の非常勤講師をしておられます。
その現場では「作る、表現するということはとっても面白いことなんだよ。」と
少しでも子どもたちに感じてもらいたい、伝えたいと想っていらっしゃるそうです。
そんな小淵さんは、ご自身でも本当に楽しんで制作していらして
作り手の「ワクワク感」がとても伝わってくる
素晴らしい作品制作をされていると感じました。
みなさまもぜひ小淵俊夫さんの作品を
ご覧になって見てはいかがでしょうか。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * **
◆ 小淵俊夫さんのホームぺ―ジ
アート・アクセサリー「O(オー)の動物園」
◆ 小淵俊夫さんの作品が掲載されたWEBページ
◇那須野が原国際彫刻シンポジウムin大田原1998
上から四つ目の作品
カオスの始まり/小淵 俊夫 /ふれあいの丘シャトーエスポワール
◆ 小淵俊夫さんの他インタビュー記事
◆ 小淵俊夫さん経歴
1957 群馬県に生まれる
1984 多摩美術大学彫刻科卒業
第69回二科展出品(~2002年出品)
1986 多摩美術大学大学院修了
1990 『サーフ’90石の彫刻オープンアトリエ』参加(神奈川県真鶴町)
1991 『風の造形展』(すみだリバーサイドホール)
1992 長野県佐久大理石彫刻家シンポジュウム参加
1998 那須野が原彫刻シンポジウム IN大田原'98
1999 現代立体造形展(かながわサイエンスパーク)
2000 第19回安田火災美術財団奨励賞展(安田火災東
郷青児美術館)
2001 日・韓 現代美術交流展(埼玉県立近代美術館)
2003 『三様のかたち』展(福原画廊・銀座)
『かたち・ふれあい』展(実践女子短期大学)
2004 日韓現代美術交流2004展(O美術館)
『接近展パート∥』(府中市美術館)
2008 個展「Silicon Life」(日本橋高島屋)
2009 個展(ゆう桜ヶ丘ギャラリー/多摩市)
『空間の窯変』展(柳橋ルーサイトギャラリー)
2011 個展『Silicon Life(ケイ素生命の世界)』(調布市 プラザギャラリー)
84年から二科展に出品、以後毎年出品を続け、
特選、会友賞等を受賞し、現在は退会。
ポチっとおしてね!
↓こちらも
にほんブログ村
ポチッとおしてね!