【1114≪いい石≫通信】第12号『 石の割り方あれこれ ーVol.1 』 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

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『彫刻工房 くさか』


【1114≪いい石≫通信】

――――――――――――――――――――――――――――――――-第12号
 こんにちは。発行人の『彫刻工房 くさか』日下育子です。

 彫刻関連の面白情報・エッセイの、メルマガを発行しております。
このメルマガを読んで、彫刻や石、それらのある空間に興味を持って頂けました
らとても嬉しいです。 これから毎月1回14日≪いし≫の日に配信予定です。


 
  第12号のメニューはコチラです。
■『 石の割り方あれこれ 』
■編集後記
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■『 石の割り方あれこれ 』
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今回から、昔からの石工(いしく)技術の紹介をシリーズでお届けしてみようと思います。

題して『石の割り方あれこれ』です。


皆さんは、石を割る方法って、何かご存知ですか?石を割る方法はいくつかあるのですが、彫刻家や石工(いしく)が手元で石を割る方法には大きく分けて二つあります。


①矢(楔・くさび)で割る 

 矢の写真はコチラ↓


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

 
②石にドリルで穴をあけて、せり矢をかけて割る 

 せり矢の写真はコチラ↓


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矢穴の上の方にかけるもの


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館


矢穴の深いところできかせるもの 右側はドリルビット


①の方法は、石に断面で見ると巾着型の穴を彫って、そこに楔をかけて割るのですが、城跡や石橋などをよく見るとこの痕跡があるものがあります。この割り方は矢をかけて割った面の割れ肌がてとても美しく出るので、割ることそれ自体が仕上げにもなります。


②の方法はドリルで穴をあけるので、割れ肌にドリル穴の跡が縞模様のように残るので、矢の割れ肌のように仕上げにはなりません。通常はかたちを作るための荒割として行います。


この他に、以下のような割り方があります。これは今も実際に行われている割り方というよりは話の種として書いてみます。


③木矢(きや) 石に開けた穴に木で作った矢をかけて水をかけます。水をかけたことによって膨張する度合いの大きいを木の種類で作った大きい矢を用います。木の膨張力で石が割れるというものです。あまりに古典的な技術で今は本当にこれで仕事をしている人はいませんが、昔は本当にこれを使ったという文献を見たことがあります。


④氷で割る 石に開けた穴に水が入り、凍ってしまうとその膨張の力で割れるというものです。これは意図的に氷の力を借りてわるというよりは、冬場に作業途中の穴に水が入ってしまい、それが凍ったために膨張して割れてしまったというアクシデントとして語られることが多いです。


⑤火の熱で割る 石の周りで火を焚いて熱し、水をかけて急激に冷やす。私は子供の時、アニメの一休さんが、山道をふさいだ巨石を撤去する方法としてこんな方法をとんちで思いついて、実際にやったという場面を見たことがあります。熱で石を膨張させて一気に冷やして収縮させるので、原理的にはあり得るだろうと思います。割れ方を思い通りにコントロールして割るというより、単に破壊するという割り方ですね。

⑥静的破砕剤(エキスパンドコンクリート) 普通のコンクリートは固まるときに収縮していく
のに対し、これは固まるときに発泡して膨張する特殊なコンクリート(のようなもの)を使って
強固なものを破壊するものです。一般には石を割る目的ではなく、発破などを使えない現場での
破砕に用いられるものです。

私が以前、チェコ共和国に彫刻シンポジウムに行った時、削岩機で穴を開けた後、せり矢がたくさん用意出来ないという理由で、現地でこの方法で石を割っていました。そんな割り方は初めてで驚いたのですが、現地の人にこのコンクリートの原理は日本で開発されたものだとききました。、後で調べたら橋梁や大きな石などを破壊するためのものとして実際にあることがわかりました。


実はこの方法、彫刻のように形を作る側には利点があって、せり矢で石に瞬間的に割る時には直線にしか割れないのですが、この方法はじっくり時間をかけて力をかけるので、緩やかであれば曲線状に石を割ることができます。


この他に採石場では、ガスバーナーの火力で石に孔をあけて、そのあとに穴に発破を仕掛けて割るという方法がとられています。


石を割ると一口に言っても、いろんな方法があることに驚きます。かなりマニアックな内容になってしまいましたが、その技術の分だけ先人は石に対して知恵を働かせてきたのだなと私は感じ入ってしまうのです。またそういった技術が文明を作ってきたともいえるだろうと思います。


私は城壁の石積みや昔の石橋などに矢などの痕跡を見つけると、これを扱った石工(いしく)がいたんだなぁと思えて嬉しくなってしまいます。


皆さんも昔に扱われた石を見たときは、割った痕跡をよく見てみてはいかがでしょうか?

今日も最後までお読み頂いてありがとうございました。


■編集後記
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【1114≪いい石≫通信】では、これからも、読んで下さる皆さまに有益で楽しんで頂ける情報を提供していきたいと思っております。


ぜひ皆さまからも、彫刻や石についての『素朴な疑問』や『ちょっと聞いてみたいこと』など、ご質問をドシドシお寄せいただければとても嬉しく思います。私に分かるかぎり、精一杯お答えしたいと思います。


 5月末に出産した娘は生後4ケ月半となりました。首も完全にすわり、寝返りができるようになりました。なかなか目が離せなくなりましたが、家族皆で成長の早さを感じながら喜んでおります(笑)。


ご感想・ご意見は、お気軽にご連絡くださいませ。では、また来月14日にお会いしましょう!!     日下育子

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