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秘境海岸にて

数年ぶりの筋肉痛を味わっている。年明け早々、ハワイはカウアイ島での三泊四日のキャンプ生活に参加する機会があり、昨晩オアフ島に戻ってきたところだ。オアフの西側に位置するカウアイは人口約55000人ほど、「ガーデン・アイランド」という別名を持つほど緑の豊かな島で、ホノルルから空路で半時間、那覇から久米島といったところである。赤銅色の土をはじめ、アダンやモクマオウの群生する島の情景は沖縄の離島とよく似ている。

島北部に展開するナ・パリ・コーストはいわゆる「秘境海岸」。徒歩以外では陸路による進入が不可能な断崖絶壁はこれまで「ジュラシック・パーク」をはじめ数々のハリウッド映画のロケ地にもなった。

そのような場所であるから、いくらキャンプ地として正式に管理されているとはいえ行程はハードであり、飲料水の確保を含め生活はすべて自給自足である。キャンプ経験といえば小学生のころ家族で行った比地大滝、自転車による片道五分の通学以外めったに体を動かすことのない私にとって、用具一式すべてを担ぎ全行程18キロの険しい山道を進むのは正直こたえた。日没以降は焚き火の明かりのみが頼りという生活は、普段意識さえせずに享受している文明生活の便利さ、有難さをつくづく思い知らせてくれた。

山中ではさまざまな興味深い人物にも遭遇した。本来なら最長五日までの滞在しか認められていないのだが、数ヶ月、ときには数年という単位ですっかりそこに住み着いている人々である。長い髭をたくわえた老人は彼の「菜園」に我々を招き、気前よく収穫物をふるまってくれた。文字通り一糸まとわぬ姿で、ぼろぼろのバックパックだけを背に闊歩する男性も見かけた。

不法居住者の取締りを逃れつつ、自ら好きこのんで世捨て人として暮らす彼らはいったい何に引き寄せられたのだろう。思いは否応なく東日本大震災に遭われた方々へと馳せた。いつ終わるとも知れない避難所生活はどんなに辛く、不安なことか。被災者の方々のもとへ一日でも早く、平穏な日常が再び訪れることを心から願う。