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「いやだ、ここから動かない」ハワイ大学の図書館館内に常ならぬ怒声が響き渡った。ソファに身を沈めた初老の男性と図書館職員が揉めている。両者の押し問答はやがて警備員まで駆り出すちょっとした騒動にまで発展したが、そんな中一人の職員は男性にむしろ穏やかに問いかけた―「行く場所がないのではありませんか?」そう、男性はキャンパス内に寝泊りする路上生活者の一人なのだ。

常夏の楽園というイメージの裏に、ハワイ州は多くの問題を抱えている。中でもホームレス対策は焦眉の課題のひとつだ。きらびやかなワイキキの中心部からほんの五分ほどもはずれれば、路上生活者たちの姿は至るところに目にされる。その数はあまりに多いためホノルルのごくありふれた日常の風景、見慣れた背景の一部となっている。

問題の一因は皮肉にもハワイの魅力的な土地柄に根ざしている。昨年インディペンデント紙は近年の大不況がアメリカ本土の失業者をハワイへと導き、現在その多くが路上での生活を余儀なくされていると報じた。ハワイにおいて生活費、住居費、そして失業率は常に高い。そんな現実にもかかわらず、今日も多くの失業者たちが「楽園」を夢見て海を渡る。最新の発表によればハワイ州のホームレスの数は6188人、2000年以来の増加率は実に61%にも達する。

シェルターの設立やアメリカ本土へ戻るための片道航空券の配布案など、州はこれまでさまざまな対策を試みてきた。が、問題の根本的な解決策はいまだ見えていないのが現状だ。

ユートピアという言葉は、そもそも「どこにもない場所」を意味する。紺碧の空と海、咲き乱れる花々―その傍らで行き場のない人々は誰にも顧みられることなく路傍の埃にまみれて眠る―あたかもそこに存在していないかのように。カナダ出身の詩人、アダム・アトキンは問う。「彼らを目にし、あなたは言葉を失う―しかし彼らの姿は雄弁にあなたに語りかける」何かがなされなければならない。見てみぬふりをし、足早に通り過ぎてしまうのではない。何かを思い、感じなければならない。