午後の曳航 @ 二期会(日本初演) | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

東京二期会『午後の曳航』(日本初演)(3日目)を観てきました。偶然ですが、私が観た11月25日は、三島由紀夫が自決した日(1970年)。




《二期会創立70周年記念公演/日生劇場開場60周年記念公演》東京二期会オペラ劇場 NISSAY OPERA 2023提携

【主催】公益財団法人東京二期会 【共催】公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
2023年11月25日(土)14時開演 日生劇場
オペラ『午後の曳航』

全2幕(2005年改訂ドイツ語版 日本初演)日本語字幕付原語(ドイツ語)上演

【原作】三島由紀夫 【台本】ハンス=ウルリッヒ・トライヒェル Hans-Ulrich Treichel 【作曲】ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ Hans Werner Henze


観る予定はなかったですが、招待券をいただいたので観に行くことにしました。オペラを観る前に、三島の原作を読み始めましたが…前半は官能小説でもあり、猫の虐殺もあり…イマイチ読み進めるのがしんどかったけれど、後半からは読みやすくなったので、公演当日の午前中に読み終えた。


【指揮】アレホ・ペレス Alejo Pérez 【演出】宮本亞門 【舞台美術】クリストフ・ヘッツァー Christof Hetzer 【照明】喜多村貴 【映像】バルテック・マシス Bartek Macias 【振付】avecoo 【演出助手】澤田康子 【舞台監督】幸泉浩司 【公演監督】大島幾雄 【公演監督補】佐々木典子


【黒田房子】林正子 【登/3号】山本耕平 【塚崎竜二】与那城敬


【1号】友清崇 【2号】久保法之 【4号】菅原洋平 【5号】北川辰彦 【航海士】市川浩平 【ダンサー】池上たっくん 石山一輝 岩下貴史 後藤裕磨 澤村亮 高間淳平 巽imustat 中内天摩 中島祐太 パトリック・アキラ 丸山岳人 山本紫遠

【管弦楽】新日本フィルハーモニー交響楽団



1963年にベルリン・ドイツ・オペラ『フィデリオ』のこけら落とし公演で開場した日生劇場は60周年。中に入るのは初めて。 



 



《あらすじ》
少年黒田登は、父を亡くし、夜毎自分の部屋の秘密の穴から寝床に居る母房子の姿を覗いていた。ある日、登と房子は航海士の塚崎竜二と出会う。登は、屈強な身体の竜二に強く惹かれるが、房子と竜二がベッドで抱き合う様子を覗き穴から見てしまう。
やがて房子と竜二は結婚する。海を離れ、房子の経営するブティックを手伝うようになった竜二を、登は軽蔑する。ある夜、房子と竜二は、登の部屋からの覗き穴を見つける。寛容な態度をとる竜二に対して、登はさらに憎悪を募らせ、少年たちとともに竜二に裁きを与えることを決意する。


オペラのストーリーは、多少の前後があったりするけど、ほぼ原作どおり(原作にある猫を惨殺する場面は、オペラではあっさり)。A.ペレス指揮の新日本フィルは、登の苦悩や怒りや少年たちの屈折した気持ちなんかをうまく表現していて、演奏そのものはよかったと思う。しかし、調性のない音楽なので、気持ちいいとか耳に残るような旋律はほぼ皆無。また、オペラなら歌えばいいのにいう場面でも演技で表現するので、「えっ、そこ歌わないのびっくりオペラなんだから歌おうよ」と驚くこと多数で、脚本に問題ありかなキョロキョロしかし、歌手はみんな健闘していたと思う。房子、登、塚崎をはじめ、1号から5号までみんな不満なし。ダンサーたちもリズミカルな踊りがとても素晴らしかった。林正子さんは下着姿になったり体当たり演技…脱がなくてもいいけど…それにしても、何回着替えたのだろうってほど衣装が多かった。


宮本亞門さんの演出は原作に忠実で、そこかしこに工夫がこらしてあってとてもよかったと思う。この難しい演目を勇気を持って取り上げて上演にこぎつけた二期会、スタッフ、歌手たちは素晴らしいと思います。亞門さんを幕間にホワイエでお見かけしたので、一緒に写真を撮ってもらえばよかったなぁ…



コロナで中止となった『影のない女』が来年10月に上演されるので楽しみ✨