垣谷美雨『希望病棟』 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

垣谷美雨さんの『後悔病棟』がとてもよかったキラキラキラキラキラキラので、続編『希望病棟』(2020)を読みました。


ロングセラー『後悔病棟』に続く感動の長編
神田川病院に赴任したばかりの女医・黒田摩周湖は、二人の末期癌の女性患者をみている。先輩のルミ子に促され、摩周湖が病院の中庭で拾った聴診器を使ってみると、患者たちの“心の声”が聞こえてきて・・・・・・。
母親に捨てられ、児童養護施設で育った桜子は、大人を信じていない。代議士の妻の貴子は、過去に子供を捨てたことがあるらしい。
摩周湖の勧めで治験を受けた桜子と貴子は快方に向かい、自分の人生を生き直すことに。大学に進学するお金がなく進路に悩む桜子、選挙にしか関心のない夫と姑を嫌悪する貴子。孤独と生きづらさを抱えてきた二人は、どのような道を歩み始めるのか――
共感の嵐を呼んだヒューマン・ドラマ『後悔病棟』に続く感動の長編!!
【編集担当からのおすすめ情報】
『きらら』連載作品を、いきなり文庫化!
「もしも人生をやり直せたなら、もっと間違いを犯せばよかった。従順な良妻なんかじゃなくて、後ろ指を指されるような人生でも全然かまわなかった」
「この世の中はロクなもんじゃない。ロクな大人はいない。頼れるのは自分だけだ」
聴診器を通して聞こえてくる貴子と桜子の本音が心に刺さる、全世代共感必至の小説です。


前作『後悔病棟』で先輩早坂ルミ子が使っていた患者の心の声が聞こえて一緒に過去の人生を振り返ることができる聴診器を引き継いだ黒田摩周湖(29)が担当する2人の末期癌患者…親に捨てられて児童養護施設で生活する桜子(高2)と子どもを捨てた過去のある代議士の妻貴子(36)が、遺伝子治療によって死の淵から奇跡的に生還する。しかし、再び人生をやり直せることになったが、そもそも生活に問題のあった2人は、快復したからといって状況が改善されているわけではないので、退院すると改めて絶望に暮れる。


捨て子、奨学金の返済、学歴、無戸籍、政治家の資質、低賃金、生活格差、風俗…いろいろと社会問題が盛りだくさんに詰め込まれているけど、一貫して女性の生きにくさを描いている。その解決策が、代議士の妻が◯◯業の経営者になり(違法な部分もある)最終的に成功するあたりのストーリーは若干無理があるかも…しかし、参考文献にそのような状況について書かれた書籍が挙げられており、日本には本当にそれしか解決策がないのであれば酷い状況だ。実際、生活費のためにそうしている方が多くいるとニュースになっていたりするので、生きにくい世の中。奨学金の問題は女性も悲惨だけど、それが唯一の解決策なら男性には何もないことになる。


死の直前から生還した桜子と貴子の言葉…

桜子「早く◯◯◯◯を見つけないとヤバい。人間いつ死ぬかわからないじゃん。実際に癌で死にそうになったんだから」(148ページ)

貴子「時間を有意義に使いたい。一度は死ぬことを覚悟した人間にとって、瞬間瞬間が愛おしく、つまらない話につき合ってる暇はない」(142ページ)

貴子「このままの人生ではダメだ。納得できる生き方をしなければ。(中略)だがぐずぐずしてはいられない。人間はいつ死ぬかわからないと身をもって知ったばかりだ。もしも人生をやり直せるなら、◯◯◯◯◯したい」(151ページ)


人生は有限なのだから、その時その時を大切にして、やりたいことはやってみたりするなど、悔いのない生き方をしたいと改めて思う。


で、その聴診器って…最後にびっくりびっくり話ができすぎ爆笑


まずは前作『後悔病棟』を読んでから…私は前作の方が好きです下矢印