垣谷美雨『後悔病棟』 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

垣谷美雨さん『後悔病棟』(2017)を読みました。2014年に発表された『if サヨナラが言えない理由』を改題、加筆、改稿して文庫化された本。

「過去に戻れる聴診器」を使ってみたら…。
33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルを貼られ、悩んでいる。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の心の“後悔”が聞こえてくるのだ。
「過去に戻って、もう一度、人生をやり直したい」
聴診器の力を借りて、“もうひとつの人生”の扉を開けた患者たちが見たものは――!?
●dream――千木良小都子(33歳)母は大女優。「芸能界デビュー」の夢を諦めきれなくて…
●family――日向慶一(37歳)俺はもうすぐ死ぬというのに、なぜ妻は金の話ばかりするのか。
●marriage――雪村千登勢(76歳)娘の幸せを奪ったのは私だ。結婚に反対したから、46歳の今も独り身で…
●friend――八重樫光司(45歳)中三の時の、爽子をめぐるあの“事件”。俺が罪をかぶるべきだった。

この世の中の誰もが、「長生き」することを前提に生きている。もしも、この歳で死ぬことを知っていたら…家族、結婚、夢、友情。女性から圧倒的な支持を受ける著者が描くヒューマン・ドラマ!!



大女優の母に女優になることを反対された千木良小都子33歳、ひたすら仕事してきたIT会社社員日向慶一37歳、娘の結婚を反対したことを後悔する雪村千登世76歳、中3時の窃盗事件について後悔する八重樫光司45歳の4話とエピローグから構成される作品。


患者全員が末期癌に冒され、余命幾ばくもない状況。空気の読めない医師と評判のよくなかった33歳の医師ルミ子が、ある日病院の中庭で聴診器を拾う。聴診器を患者にあてると不思議と患者の心の中が読め、後悔していた患者は過去に戻って人生をやり直すことができる。ルミ子は患者に寄り添って一緒に人生のやり直しを体験する。


人生は選択の連続で、あの時ああしていれば今頃どうなっていただろうかと思うことはよくある。あの日、あんなことしなければ…あの日、あんなことを言わなければ…まったく違う仕事をしていたら…あの日あそこに行かなければ…今とは全然違う人生になっていた。


どの選択が最善かは分からない。結局は、後悔しても別の人生を生きられないわけで、選択した結果としての現状は不満なようでも、実は間違った選択ではなかったのかもしれない。納得のいかない現状でも、もしかしたら今が最高なのかもしれない。


この前の沖縄旅行の時にも書いたけど、私にはもう特に思い残すことはないので、これから先はすべて生きててもうけもの。今を精一杯前向きに生きていこうと思える素敵な作品。続編もあるようなので読んでみよう。