ドン・ジョヴァンニ @ 新国立劇場 | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

ウィーン国立歌劇場の開場は1869年5月25日で、その時にこけら落としとして上演されたのは『ドン・ジョヴァンニ』でした(こちら)。それからちょうど150年目、新国立劇場が狙ったのかどうかは分かりませんが『ドン・ジョヴァンニ』を観てきました。

土曜日の午後は眠いぐぅぐぅたまらなく眠いぐぅぐぅ肩こりもひどくて、とにかくつらかった。しかもこの作品は2幕とも長い! 聴衆のマナーがまぁまぁよかったのになぁ…

初めて聴く歌手ばかりなのでとても楽しみにしていた。イタリアで絶賛売出し中の脇園彩さんの凱旋公演。彼女のエルヴィーラは聴きごたえ十分で、第2幕後半の「なんてひどいこと」がとにかく素晴らしかった。ホワイエでは「イタリア人かと思った」という声が聞こえてきた。藝大卒業後にイタリアで修行してこられた脇園さんによると、イタリア語のあるいはイタリア人の発声方法を叩き込まれた成果なのだろう。来シーズンの『セビリアの理髪師』でロジーナで出演されるのでそちらも楽しみ。それから、ドン・オッターヴィオを歌ったGatellもこのメンバーの中で別格の素晴らしい歌。第2幕中頃に歌った「私の大切な人を」が輝かしくて客席まで突き抜けてくる印象。とにかく声が美しかった。パンフレットによると「モーツァルト、ベルカントをレパートリーの中心とし」とあるのも納得。ドンナ・アンナのQerkeziも貫禄というか余裕を持った表現力に感心した。終盤の「私が残酷ですって」もよかったし、満足。

タイトルロールのUlivieriとレポレッロのFurlanettoは事前情報だと今ひとつという感じ。実際に聴いてみると…第1冒頭の2人のかけあいはオケにかき消されて何を歌っているのか分からない。レポレッロの「カタログの歌」ももうちょい遊びゴコロみたいなものが足りなくて楽しめない…やっぱりダメなのかなと…肩こりもひどくて絶望的な気持ちになったけれど、第1幕中頃の「手に手を取り合って」あたりからUlivieriが別人。「シャンパンの歌」も見事だった。レポレッロもコミカルな雰囲気をもうちょいあればさらによかったと思うが、それでも尻上がりに後半はとてもよかった。2017年に演奏会形式で聴いたN響公演でのケテルセン Kyle Ketelsenがすごすぎたのかもね…

ヤヌシュケの指揮もとてもよかったと思う。オケは9-8-6-4-3という2017年N響よりも小さな編成。(パーヴォ&N響はNHKホールが大きすぎてすかすかな感じがしたが)ここ新国立劇場ではしっかり緊密な音楽を作り出していた。「窓辺においで」のマンドリンは青山涼さん。

今シーズン最後の『蝶々夫人』は観ないので、私の2018/2019シーズンはこれにて終了。突出して感動した公演というものは特にないが、『紫苑物語』のような取組は評価されるべきだと思う。個別には、『ウェルテル』でシャルロットを歌った藤村実穂子さん、タイトルロールSimir Pirgu、『カルメン』でミカエラを歌った砂川涼子さん、タイトルロールGinger Costa-Jackson、『タンホイザー』のTorsten Kerlあたりが印象に残った。来シーズンにも期待したい。

2019年5月25日(土)14時開演 オペラパレス
オペラ「ドン・ジョヴァンニ」Don Giovanni
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト Wolfgang Amadeus Morzart
全2幕〈イタリア語上演/字幕付〉

【指揮】カーステン・ヤヌシュケ Karsten Januschke 【演出】グリシャ・アサガロフ Grischa Asagaroff
【美術・衣裳】ルイジ・ペーレゴ 【照明】マーティン・ゲプハルト 【再演演出】三浦安浩 【舞台監督】斉藤美穂

【ドン・ジョヴァンニ】ニコラ・ウリヴィエーリ Nicola Ulivieri 【騎士長】妻屋秀和 【レポレッロ】ジョヴァンニ・フルラネットGiovanni Furlanetto

【ドンナ・アンナ】マリゴーナ・ケルケジ Marigona Qerkezi 【ドン・オッターヴィオ】フアン・フランシスコ・ガテルJuan Francisco Gatell 【ドンナ・エルヴィーラ】脇園 彩
【マゼット】久保和範【ツェルリーナ】九嶋香奈枝
【合唱指揮】三澤洋史 【合唱】新国立劇場合唱団 【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団