セビリアの理髪師 @ 新国立劇場 (3日目) | のんびり まったり やんごとなき みやびなまいにち

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つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。

午前中に東大本郷キャンパスのイチョウを楽しんだ後…紅葉

1週間前に新国立劇場『セビリアの理髪師』の初日を観たのに続いて、3日目の公演も観てきました。オペラ・ブッファの傑作で、観ても聴いても楽しめますね音譜
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2016年12月4日(日)14時開演
2016/2017シーズン
オペラ「セビリアの理髪師」Il Barbiere di Siviglia
ジョアキーノ・ロッシーニ Gioachino Antonio Rossini
全2幕〈イタリア語上演/字幕付〉
新国立劇場 オペラパレス

ランチのために某インド料理店に入りましたが、大失敗。インド料理ってだいたいどのお店もそんなにハズレはないと思っていましたが、ハズレガーン 店名は名誉のために伏せておきます。
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開演30分前に到着。先月『ラ・ボエーム』を観た時と同じ最前列の座席。前の人の頭など遮るものがないので、快適のはずでした。しかし、15m程離れた席にずっと咳をする若い女性と第2幕に何十回も鼻をすする真後ろのオッサンには閉口。帰り際にそのオッサンが隣の奥さんに「いゃぁ、楽しかったね」と言っているのを聞いて、「シバイたろか、ボケ!」と思いましたが、大人の対応。無視しました。それにしても、この日は咳をする人が多すぎでした。
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初日もよかったけれど、3日目は全員がさらによくなっていました合格

アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったミロノフさん。素晴らしすぎる。初日は冒頭にやや線の細さが見られたけれど、3日目は最初から最後まで実に素晴らしい。最初の「私の名前を知りたければ」の透き通るように澄み切った声。それぞれのアリアやフィガロやロジーナとの二重唱など、個別にはコメントしませんが、とにかく明るく突き抜ける声質と声量がホント一流。また、酔っ払いの兵士やドン・アロンソの演技も非常に面白い。それに何と言っても、超絶技巧のためにカットされることが多い最後の「もう逆らうのをやめろ」は圧巻。この5年程で約30回新国立劇場でオペラを観てきましたが、(途中で拍手しないワーグナー等は別にして)これほどまでにbravo!が多く、拍手が鳴りやまなかったアリアは初めてだと思います。少なくとも30秒は続いたでしょうか、ミロノフさんが後ずさりして次に移るまで全く衰えることのない拍手。もちろん、その価値のある素晴らしい歌でした。bravissimo!

フィガロのイェニスさんは貫禄。序曲では、ロジーナから登場し、全員が固まったまま舞台を眺めている。それをフィガロが曲に合わせてパチンと手を叩いて全員を動かしているという設定。やはりフィガロの思惑や知恵によって、アルマヴィーヴァ伯爵とロジーナとの間を取り持ってために全体を通してコントロールしていることを示しているのかな。「町の何でも屋」はやはり素晴らしい。早口言葉も自然で難しいのだろうけれど難しく聞こえない。最近、youtubeでいくつかフィガロを見たが、イェニスさんが一番貫禄があるように思える。『ローエングリン』のフォークトさんもそうだったが、彼を4年前に続いて招聘した新国立劇場スタッフさんは偉い! 今回見逃した方は、彼が出演しているBlu-ray/DVD(2002)があるので、ぜひどうぞ。
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ロジーナのベルキナさんも、今日の方が冴えていました。囚われの女の子(生きたまま埋葬されている息苦しい生活)から逃れて、リンドーロ(伯爵の仮の姿)に恋する女性、裏切ったら痛い目にあわすわよという強い女性を見事に歌い演じていました。とても可愛くて、舞台に映える方ですラブ 初日は上記の2人と比べると…と思いましたが、3日目は存在感が際立っていました。最初に歌う有名な「今の歌声」が特にすごかった。会場のあちこちから brava! また、そんなに体格が大きいわけではないが、お腹にズシッと響いてくる声量。
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バルトロのパスクアーレさんも、初日はまだ安全運転っぽかったのですが、今回はかなり毒も出してよかった。バジリオの妻屋さんも初日はやや不調かなと思いましたが、この日は最初の「中傷はそよ風です」がビシッと決まりました。当然、初日より大きな拍手と bravo!が飛んでいました。

アンジェリコ指揮の東フィルは手堅い演奏。オーソドックスで、第1幕100分、第2幕60分と標準的なスピード。超快速にしたりすると面白さが増すところもあるでしょうが、いい仕事をしていました。

初日も3日目も驚いたのは、投げたものをみんなしっかりとキャッチするところ。最初にアルマヴィーヴァ伯爵が鳶に財布を結構速いスピードで投げたり、バルトロが背面に向かってベルタに花束を投げたりしてもしっかりキャッチしている。アルマヴィーヴァ伯爵はアンダーではなく上手でスナップを効かせて投げたので、捕る方はかなり難しいはず。また、後ろ向きに相手を見ずに投げたバルトロのコントロールがすごすぎます。あとフィガロも投げたかな。こういう難度の高いことを完璧にやっているのはとても重要なことだと思います。コミカルな演出が活きてくるからですね。これを変な方向に投げたり、落としたら面白さが半減するからね。こういうところが本公演の質をさらに高めているのだと思います。しかも、初日も3日目もノーミスでした。

【指揮】フランチェスコ・アンジェリコ Francesco Angelico
【演出】ヨーゼフ・E. ケップリンガー
【美術・衣裳】ハイドルン・シュメルツァー
【照明】八木麻紀
【再演演出】アンゲラ・シュヴァイガー
【舞台監督】斉藤美穂

【アルマヴィーヴァ伯爵】マキシム・ミロノフ Maxim Mironov
【ロジーナ】レナ・ベルキナ Lena Belkina
【バルトロ】ルチアーノ・ディ・パスクアーレ Luciano Di Pasquale
【フィガロ】ダリボール・イェニス Dalibor Jenis
【ドン・バジリオ】妻屋秀和
【ベルタ】加納悦子
【フィオレッロ】桝 貴志
【隊長】木幡雅志
【アンブロージオ】古川和彦

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最近ワグネリアン化してきたのかなと思っていましたが、こういう底抜けに明るいイタリアものもいいですね。今日はアンケートを集めていたので、絶賛するコメントと再演希望!と書きました。

『セビリアの理髪師』に続いて来年4月には、モーツァルトの『フィガロの結婚』が新国立劇場で上演されます。オペラ好きの方なら常識ですが、『フィガロの結婚』は、劇作家ボーマルシェの書いたフィガロ三部作の第2弾。これまた楽しみですね。