がんになって価値観が変化 | これって闘病!?

これって闘病!?

子宮頸癌Ⅰb2でした


過去のブログにも何度も書いているけど、がんという病気になって、なくしたものもたくさんあると同時に、それまで気づくことができなかった日々の大切さや、当たり前が当たり前じゃなく貴重なことだということや、人の温かさを知った等、多くのものを得ることができました。

それはきっと、私の人生では「病気」を経験しなければ理解できなかったのかもしれないと思います。

でも、だからといって病気になってよかったとは思わないし、がんなんて、できれば経験したくなかったことです。


自分が病気を経験したからこそ実感するのですが、人、特に病人にかける言葉って難しいな、と思います。
同じ言葉かけでも、その人の状況や心理状態、諸々のタイミングによって受け止められ方が変わります。

私自身、これまでもいくつかの言葉に傷ついたり、腹立だしく感じたり、悲しくなったりしたことがあります。
敢えて、私を傷つけようとする悪意が透けて見えるものは論外で(かえって面白おかしく見えますし、ネタになるから平気)、そうではなく、あくまでも善意と励ましから発せられる言葉なのだろうと思われるときほど、「相手の善意に対して傷つく自分が悪いのか?」「自分がひねくれているからか?」と考えてしまって、よけいに心が痛んでいました。

でも、これはもう仕方ないことなんですね。
だって自分自身の価値観が、病気になる前と今では大きく変化しているのだから。

最近の出来事で言えば(といっても、もう1年以上前になりますが)、休職期間を経て仕事復帰する際に、私の体調面から以前と全く同じ条件での復帰が難しく、やむなく退職しパート雇用という形になったということがありました。
そのときに、いつも親身になってくれていた親しい人から
「退職金出るからいいね」と、第一声に言われました。
正直、びっくりしたんですよね、私。

長年、正社員として勤めてきて、それなりの役割もあって、私にとって仕事は自分の一部であり、おおげさじゃなくアイデンティティー確率の一助となっていました。
ずっと第一線にいた自分が、休職していたとはいえ、正式にそこを離れることや、築いてきたものが無になるのか(実際はそうじゃないけど)という、なんともいえない複雑な思いが強く、お金のことは正直言って二の次、三の次だったから。
それを長年の付き合いの、病気治療中の私を見ていた人に、そう言われたことに驚きと、違和感をぬぐえませんでした。

だからといって、それに対し反論する気はないし「そうだよね。そういう利点もあるよね」「励ましてくれてありがとう」です。
だって、きっと相手は私が気持ちを切り替えられるようにと、前向きな言葉を選んだつもりなのだろうと思ったから。

そして、もう一人の友人に同じように「退職届を出してきた」と伝えたんです。
すると「そっかぁー。辛いね」「感慨深いね」と、返してくれました。それから「そのうち、パート雇用の利点も感じるようになれるかもよ?」と。
この友人は、私とは違う病気で闘病していたのですが、同じように仕事を休職していました。
同じような経験をしているからこそ、このような言葉をかけてくれたのでしょう。
このときの私にとって、こちらの言葉のほうが心に染み入り、励みになりました。


この出来事でもわかるように、これは、どっちが良いとか悪いとかでも、何が正解か不正解かも、答えはないのかなと思いました。

だって、病気をする前なら「仕事は収入を得るためのもの」というのが私の仕事に対する価値観の上位だったと思うし、同じ言葉を言われても「そーだそーだ」と思えたかもしれません。
見方を変えれば「退職金出て~」と言った人から見たら、過去からの私は「仕事=お金」だったのかもしれません。
だから、私が喜ぶと思っての発言だったなら、私自身に要因があるわけです。

けれど、がん治療のため、やむなく休職をして、仕事から離れて、客観的に自分を見つめるようになって、お金以外の価値のほうが自分の中で上位だと実感していただけ。
だから違和感があったんですね。

そう。私の価値観が変化したというだけのこと。
そして、タイミング。
ただ、それだけなんですね。


病気という経験で、自分の周りの色々なものがそぎ落とされたり、反対に、埋もれていたものに価値を見出したりしました。
それはまるで、病気が篩(ふるい)になったかのよう。

人間関係も然りです。
人の本心が透けて見えてくる場合もありますし、親しかったはずの人から急に態度をよそよそしくされたり。必殺、手のひら返しかってくらい。
もちろん、こちらから距離を置きたくなる場合もありますが、それはあくまでも自分自身の心の中だけで、です。
いい年をした大人なので、今の自分と価値観が合わないと感じたからといって急に無視をしたり態度を変えるようなマネはしません。


自分が変化するように、自分以外も変化しています。
色々な立場の人がいます。
様々な価値観の人がいます。

だからこそ、人にかける言葉って本当に難しい。
ですが病気を経験したことで、ちょっとは想像力を働かせることができるようになったこと、いろんな価値観を心から認められるようになれたことは、やっぱり良かったことかなと思います(自分比ですが)。
できるだけ、想像力を働かせて言葉かけができるようになりたいですね。



うん。でもやっぱ、病気なんてなりたくなかったってのは変わらぬ本音。



バナナマフィン
バナナとナッツのマフィン作りました。全粒粉入りの生地に、ほろにがキャラメルソースを混ぜました。
夏にオーブンを使うと灼熱。