12月18日からNetflixで「マ・レイニーのブラックボトム」が公開されました。ネタバレなし。この作品に出演していて、今年8月43歳の若さで亡くなったチャドウィック・ボーズマンを偲びます。

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ブルースシンガー、マ・レイニーを題材にした戯曲を映画化したものです。予告をみて、リマインドをオンにしていたので、公開されてすぐ見始めました。


主演のヴァイオラ・デイビスの歌と演技を楽しみにしていましたが、途中チャドウィック・ボーズマンが出演しているのを観て驚きました。これが遺作だったんですね。チャドウィック・ボーズマンは2020年8月に癌で43歳の若さで亡くなっています。


ボーズマンが演じたレヴィーは心に闇を抱え、大きく傷つきながらもトランペッター、作曲家として成功することを夢見ています。でもその傷は自分ではどうにもならないくらい大きくそれがレヴィーにのしかかります。複雑かつ重要な役どころをボーズマンは見事に演じきりました。その演技力の高さに改めて目を奪われました。



ステージ4、治療中の撮影。多分撮影できるようにケモ(化学療法)のスケジュールを組んで臨んだものと思われます。私はどんな体の状態だったのか推測できるだけに、それでも撮影に臨んだ前向きさ、精神力、もう脱帽というしかない。


↑この写真の場面ではシカゴの厚い1日が舞台なので、ボーズマンも汗をかいたメイクをしています。

改めて見ると元々細身のボーズマンがかなり痩せていますね。本人も余命宣告を受けて、自分があとどれくらい生きられるのか知っていたはずです。生きられる期限と、ある程度自由に体を動かして演技ができる期限、それも医師から説明を受けて知っていたはずです。


その上で化学療法はリハーサルや撮影期間に副作用を最小限に抑えられるようにスケジュールを組んだものと思われます。大腸癌のステージ4の病期になるともう治ることは見込めないので、患者がどのように生きたいのか、最期をどのように過ごしたいのかを話し合って決めた上で延命的な化学療法をします。


この年齢での大腸癌は本人の生活習慣とは無関係です。たまたま大腸癌を発症しやすい遺伝子を持って生まれたのが原因です。そんな理不尽な病を発症して、どれだけ悔しかったことでしょうか。

戯曲が原作ですが、この映画もまるで演劇を見ているようでした。全身を使って動き回り、セリフも舞台のように力強くて大きめです。癌の末期にある人とは思えない、渾身の演技を見せました。メイキング映像では実際にトランペット(コルネット)を吹いていました。映画ではプロの演奏に吹き替えられていますが、楽器を演奏できるまでになっていたんですね。

人生の最期にこの演技を見せることがチャドウィック・ボーズマンの生き方だったのだ、それを思うと見ていて涙が止まりませんでした。

この映画を製作したデンゼル・ワシントンは身銭を切ってチャドウィック・ボーズマンをオックスフォードに演技のために留学させました。言わばデンゼル・ワシントンはボーズマンの俳優としての育ての親です。


自分からそのことを説明することはありませんが、ハリウッド界大物になったデンゼル・ワシントンは自分の後進を育てていたんですね。その1人、大きく花開いたのがボーズマンでした。デンゼル・ワシントンはNetflixの公式YouTubeチャンネルでボーズマンの人柄と演技力を讃えました。彼の死を誰よりも惜しんでいることでしょう。この作品でボーズマンはデンゼル・ワシントンに恩返し以上の演技を見せました。

チャドウィック・ボーズマンの演技とその生き方を讃えるとともに哀悼の意を表します。
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