「もやしもん」で知られる石川雅之の「惑わない星」1・2巻の感想を。
もやしもんは菌が見える主人公の、ミクロな世界から始まる話だったけど、こちらはとてもマクロな話。
「星々は惑わない
惑うのは常にお前たち人間だ」(1巻・第9話)
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登場人物の多くは惑星(と衛星)。人物と言っていいかわからないけど、人間の形で現れる。
舞台は遠い未来の地球で、ナウシカも真っ青になりそうなディストピアだ。
恐らく核戦争か巨神兵のせいで、環境も文化も何もかもがとんでもなく荒廃してしまった模様。
(そのディストピアの描き方には、現代社会への風刺が効いてて、「説教くさい」といった感想もちらほら見られる)
主人公たちは(人間:S沢3国・及川8月←スターシステム?)、遥か遠い未来に地球の環境が元のように戻ることを期待してシェルターに籠もる「つなぎの世代」。
この辺りの絶望感は、風の谷のナウシカの原作漫画を読んでいる方にはすっと入ってくるはず。描き方は大分違うけど。
S沢の元に瀕死の“地球”である女性が現れたのをきっかけに、地球を助けようと次々に降り立つ太陽系の惑星たち。
…とここまでの時点で「?」が頭の中に乱立するが、SFの面白い点は大胆な思考実験ができることだ。
万物のしくみをあらわす物理を数学抜きで理解する試みや、宇宙の成り立ちを主人公らが体感するところは楽しい。(理系の知識への興味のなさへの切迫した警鐘ともいえるけど)
衛星たちはオリゼーみたいでかわいい。
でも2巻になってもまださっぱりわからないのが、なぜ地球が瀕死の状態なのか。どうしたら救えるのか。
火星はこう話す。
「星ってね表面がどうなろうが大したこっちゃないんだよ」
「表面でチョロチョロしたくらいで地球が調子崩すなんてありえない」(1巻・第2話)
実際地表が汚染されれば人間や多くの生物にとっては死活問題。
だが地球そのものは、46億年の歴史の中で小惑星の衝突や全面凍結を何度も経験しているわけで、「人間にとっての環境の悪化」など誤差でしかないのかもしれない。ましてや人間が地球を救うなどおこがましいこと。
(だからといって環境に配慮しなくて良いという話ではもちろんなく)
ではなぜ地球は人間に助けを求めようとしたのか?
2巻の巻末でも謎は謎のまま、主要な登場人物(星)もまだ出揃ってはいない。
太陽系で最も主要な人物(星)の登場を予感させて3巻に続く。
わからないまま2巻も引っ張ると「やーめた」って離脱する人もいるかもなあ…と想像。
でも逆にわかるまでは離脱できない私のような人もいるはず。どんなジャンルであれ、ミステリーはストーリーを引っ張る牽引力になる。
毎回が予告編みたいな、“次にすごいこと起こりそう”って予感だけで引っ張って風呂敷畳まないタイプの作家もいるけど、多分この作者はそのタイプではない。
ちゃんと伝えたいことがあって、お話も完結すると思う…と信じたい!
作者は時々体調を崩したりもされているようで心配だが、来年3月には3巻が出るようなので楽しみだ。
あー、でも謎が謎のまま長く待つのは辛い…