○道路(夕)
人々が向かう方向と一人逆に進む唯。
木枯らし。
舞う葉っぱ。
唯は強くマフラーを抑える。
唯「(力強く)パッパッパラッパー、パッパッパラッパー」
唯は寒さを吹き飛ばすように
『甘イワナ☆』を歌い出す。
唯「甘くて、幸せなこと。隠し味、何にしようか?」
※俳優の持ち味を活かして唄う。
すれ違う人たちは、甘イワナ☆を歌っている
唯をふ~んと一瞥してすれ違う、興味なし。
唯「ねぇ、あげようか? 甘イワナ☆」
と、『甘イワナ☆』と言ったタイミングで
乱暴な運転のワゴン車に轢かれそうになる。
唯は間一髪で避ける。
唯「危ないなぁ!」
ドン!という大きな音。
唯が振り返ると、先ほどのワゴン車が遠くで
黒塗りのセンチュリーにぶつかっている。
○町中華「紅屋」・店内(夜)
割烹着の唯がラーメンを運んでいる。
客席は埋まり賑わっている。カウンターに
置かれた烏賊の駄菓子と、『ご自由に、どうぞ』と
手書きで書かれている。
四姉妹が仲良く談笑しながら入ってくる。
長女「(元気)おっちゃん、ラーメン4つ!」
三女「ね、姉さん。恥ずかしいから大声ださないで」
次女が烏賊の駄菓子に気づく。
次女「(ぼそっ)これもらっていいの?」
店主はラーメンを作りながら、
店主「おう! 知り合いから押し付けられたんだ。
好きなだけ持っていって。(唯を見て)唯ちゃん、
ラーメン4つだって!」
末妹「唐揚げも」
長女「私も頼むんだぜ!」
次女は烏賊の駄菓子をもて遊びながら、
次女「(ぼそっ)姉さんは食べ過ぎ」
三女「そうなんだぜ。 姉さんは少しは遠慮しろよ」
長女「何で、私だけ!」
末妹「ねぇ、みんなで仲良く食べようよぉ」
三女は末妹を撫でる。
次女「(ぼそっ)じゃあ、一皿だけ」
唯は羨ましそうに姉妹を見ている。
店主「おい、唯ちゃん、どうした?」
唯「(慌てて)あっ! はい! 唐揚げも一皿です」
と、伝票を書いて店主に渡す。