トレードの判断について「ハッキリとした指針をもとう」と考えた場合、ひとつの答えが「システムトレード」です。

統計的な分析を使うだけでなく、具体的な売り買いをカチッとルール化しておこうというものです。中源線の利用も、ある意味、システムトレードです。

でも、システムには「パラメータ」という要素があります。
これについて、中源線で説明しましょう。

中源線では、「1分(ぶ)」という単位で値動きの幅を計ります。
その1分を1円とするか2円とするか、あるいは5円とするか……この設定で判断が変わるのです。

でも、「分」というのは、中源線だけのもので、一般的な観点ではありません。
「痛みの度合いを表す単位として、鼻毛を1本抜くときの痛みを『1ハナゲ』と定義する」なんて話がありました。フェイクニュース、ネット上のジョークだったわけですが、ある意味、全く同じアプローチで値動きを計る基準を定めたのが、中源線の「分」という単位です。


いわゆる「調節つまみ」ですね。

例えばルールの「4分の逆行」。
1分の値が1円なら4円の逆行で条件を満たしますが、1分を2円に設定したら2倍の8円幅ないと条件を満たしません。
だから、ベースとなる数式は同じでも、パラメータの値によって反応の度合いが変わり、売り買いの判断も異なるものになるということです。

トレードは、未知の将来に向けてポジションをつくります。
しかし、どう頑張っても、数分後の価格さえ予測することはできません。
だから、常に「過去のデータを分析して推測するしかない」のです。

過去のデータを分析する──とても科学的なアプローチですが、「単に過去の値動きに合う設定を見つけるだけ」という、実にバカげたことをしてしまう危険性があります。

「パラメータをオプティマイズする(最適化する)」なんて表現するとカッコいいのですが、例えば「過去1年間で最高のパフォーマンスになる」設定を導き出したところで、将来の実際の値動きでうまく機能する保証はありません。


特定の期間の値動きに“合わせすぎてしまう”結果、多くの場合、あとになって「こんなはずでは……」となるような設定を正解だと思い込んでしまうのです。

こういった“合わせすぎ”、つまり「過剰な最適化」をカーブフィッティングと呼ぶのですが、「ほら、このシステムは儲かるでしょ!」というウソっぱちの宣伝に使われるだけでなく、自分が使うシステムをベストな状態にしようとして陥るワナでもあるのです。

裁量トレードでも、常に新しい値動きを相手にする以上、同じ苦しみがあるのですが、数式を用いて数字をいじくっていると、おかしな方向に傾いていることに気づかない悲劇もあり、その代表的なものがカーブフィッティングです。

ちなみに、根本の発想である「売買ロジック」そのものを、過去の値動きから作ってしまうケースもあります。直近の“たまたま”の動きを数式化しただけなのに、「これから先も機能する」と思わせる不思議なモノが出来上がります。

儲からないシステムを、見た目の華やかさだけで売りつける、そんな卑劣なビジネスで利用されています。


許しがたい手口ですが、多くの投資家が引っかかってしまう……私たち人間は、そんな錯覚に陥る、ということを覚えておいてください。

 

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